13. ツンデレは皆ツンデレじゃないと言う
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快晴の空が程よく冷たい爽やかな風を運び、数々の人間が勤労にいそしむ中。
煌河達の通う学園もまた授業を行っていた。
この学園はよくあるコマ割りのような授業形態ではなく、2時間近くの授業が3回行われる。
そのうち1回が自分で選んだ選択授業となる、選択授業は複数取ることになっている。
そして煌河は現在、その中の一つの音楽の授業を受けていた。
選択授業はクラスや学年の垣根なく行われる。
この学園の音楽の授業は、自分の好きな楽器のパート等を選び練習する事が出来る。
そして煌河は歌の練習を選択し、グループでボイストレーニングの基礎レッスンを受けた後、授業の最後の自由練習で同じ授業を受けているクラスメイトの久遠 涼音とカラオケBOXに入っていた。
この学園にはカラオケBOXやスタジオも併設され、授業以外では放課後に予約して使用が出来る。
「アンタが歌うの好きだったなんて、以外……」
「い、意外そうに見えるかな」
「だってアンタ自分からあんま喋んないし」
煌河はお前が言うんか~い!と心の中でツッコミを入れる。
普段は涼音も自分から喋る事はあまりない。
煌河は学園に転向してから3日間程しか経っていないが、涼音が自分から喋る姿を見た事がなかった。
「それよりありがとう、気遣ってくれたんでしょ?」
――――
煌河は自由練習で様々なグループを作っている周囲の生徒たちから誘われ、どうしようか迷っていたのだ。
特定のグループへ行ってしまったら、誘いに応えて貰えなかったところは哀しい思いをするだろう。
いっそ1人になりたいと言い断るか、自分が孤独になればすむ話だ。
煌河はそう思いながら、ほとほと自分の気にしすぎる気質、もとい状況に困りつつ口を開きかけた瞬間。
「今日は、煌河はアタシと約束してるから、ゴメンね」
涼音が間に割って入ったのだ。もちろんそんな約束はしていない。
周りの女生徒達も残念そうに肩を落としたが納得し、誘い方が強引だったことを謝り事なきを得た。
「そうなんだー」「しょーがないか」「残念~」
「皆で急に押しかけちゃってごめんね! 今度一緒にカラオケしよ!」
「お、おう! こちらこそごめんください!」
「なにそれw」
「ごめんなさいと間違えちゃった……」
「「「はははははwww」」」 ――――
こんな事があり涼音とカラオケボックスに入っていた煌河は、お礼の言葉を口にした。
こうやって困っているところを目敏く助けるなんて、周りの事をよく見てる子だなと煌河は感心する。
「助かったよ、ほんとありがとう」
「べ、別にアンタのためじゃないし……」
ツンデレかよ!とまたもや煌河は心の中で突っ込むが、涼音は煌河と一度2人きりになりたかったのだ。
助けたいと思ったのも本当だが涼音の胸中にはそんな思いがあった。
とんでもないツンデレだねぇこの子はぁ。
煌河の言葉にほんの少しばかり頬を染め、上機嫌になる涼音は彼から目を横に背けつつも、我ながら
今のセリフはツンデレっぽすぎたと思い一瞬恥ずかしくなる。
そんな涼音を煌河は、いつものお返しとばかりに真剣にジーっと見つめていた。
「な、なに? もしかして気付いたの……?」
「え、なにが??」
涼音は煌河へ問いかけるが、煌河は何のこっちゃととぼけた表情で聞き返す。
そして煌河が涼音のツンデレ語を嬉しそうに指摘する。
「いや、ツンデレっぽいなーと思って」
「つ、ツンデレじゃないし!」
「うんうん、ツンデレは皆そう言うんだ」
「何なの……もう……バカ……」
煌河に振り回された涼音は毒を吐くが、その声色はまんざらでもなく少し嬉しそうであった。
「それよりさ、アンタ何か歌ってよ」
「いいの? じゃあ1曲目いただきます!」
煌河がカラオケのデンモクを操作し曲を入れる。
それは涼音も知っている曲であった。
聞いていると腹の底から元気が溢れるような曲が流れ出し、煌河が歌い始める。
「あ、これ……」
涼音は自分が知ってる曲が流れ、その曲に興味を惹かれた。
彼女は振舞はクールではあるが、心が熱くなるような歌声や曲調を好む。
もちろん静かな歌も好きだが彼女がよく聞くのは、前者のような元気が出たりハートの熱くなるような歌だ。
涼音は煌河の歌声に耳を傾け、少し心が熱くなる感覚を覚えた。
素人ながらも懸命に歌う煌河が曲を終え、座り込む。
「ご清聴ありがとうございました」
「ふーん」
「うん」
「けっこー良いじゃん……」
「ほんと!?」
「下手だけど」
ズコーーーーーー!煌河は座りながら盛大にコケる。
「なんでやねん!」
「でもハートが籠ってて良かったよ、私、そういうヘタウマな歌好きだから」
「なんか照れるな……」
涼音は彼の歌に心を動かされどこか上機嫌な声色で答え、彼の歌をもっと聞きたいと思った。
そしてその選曲について触れる。
「その曲ってさ……」
「あぁ、これね、千冬が涼音も好きだって言ってたからさ」
その曲は女性向けバンドアニメの曲だ、男の子たちがバンドを組み武道館を目指すというアニメである。
この現代社会は男性の減少と草食化の影響で、女性向けコンテンツは過去と比べかなり充実している。
その中で映画や小説、アニメや漫画等のエンタメが好きな涼音もまた、オタクである千冬と話が合うのだ。
「じゃあ次は涼音の番だね」
「ん……分かった」
煌河の歌をもっと聞いてみたかった涼音は渋々了承する。
だが涼音自身歌う事が好きで煌河に歌を聴いてもらうのが楽しみでもあった。
「おぉ! 良い選曲!」
涼音が言わずと知れた七夕のアニソンを入れ、部屋に涼やかでテンポの良い音源が流れ始める。
彼女の精霊のように綺麗な歌声が部屋に響き渡り、美しいハーモニーに煌河は思わず目を閉じ感傷に浸ってしまう。
煌河が自分の歌に心を預けている様を見て、涼音は嬉しくなり思わずドヤ顔になる。
「~~♪」
曲も終盤になる辺り、歌詞から目を反らし涼音が煌河を見ると、なんと目を閉じながら涙を流していた。
涼音は一瞬ギョっとしどうすればいいか戸惑うが、どうする事も出来ず涼音は歌い続ける。
嗚咽を殺しながら煌河は泣き続ける。
女子高生が歌いながら、男子高校生が号泣する。
何も知らない人から見れば、奇妙と言える空間で涼音は曲は歌い終えた。
「うぅ……くぅ……」
煌河はまだ泣いている、涼音はたまらず煌河の隣に座り彼の背をさすりながら声を掛けた。
「ちょっと、アンタ大丈夫……?」
「めっちゃ感動した!」
川の土手に生えた苦いキノコを噛み潰したようなしゃがれた涙声で煌河は感想を答える。
涼音は自分の歌でここまで感動されたのは初めてで、何とも言えない嬉しさが心に込み上げる。
そして今程ではないが過去に自分の歌声で涙を流した幼い男の子を思い出し、涼音はどこか嬉しさの混ざった声色で毒を呟いた。
「ほんと、バカなんだから……」
そんな中、カラオケBOXの部屋の扉が開き麗香と陽菜、千冬が入ってくる。
「おっすー」
「あ! 涼音がこーが泣かしてるー!」
「わ、私が泣かしたんじゃない!」
「えーホントー?」
「あ……やっぱ私のせいかも……」――――――
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