10. 子狐の初恋
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「さて、そろそろ良いじゃろう」
お供えのためもってきたおいなりさんを軽く平らげた御狐様は突拍子もない事を言い出した。
「お主、妾と式神契約の契りを結べ!」
いきなり何を言い出すんだこの人は。
いや、神様は。
「どうしたんですか藪からスティックに」
「藪もスティックもない、前から決めてた事じゃ」
僕をペットにして一体何をする気なんだ。
でもまあそこら辺の犬猫よりは割とイケる自身はある。
だって一発芸で一瞬で場の空気凍らせるし、エターナルフォースブリザード、相手は死ぬ。
「僕は下僕にしてひどい事する気ですね、エロ同人みたいに」
「なるほど、それもありじゃな♥」
「言わなきゃよかった」
ケモナーの下半身大噴火するような展開はごめんだぞ。
同人展開を妄想してむふふーとか言ってる御狐様は、気を取り直し僕に語り掛ける。
「まぁ冗談はさておき、主導権は其方が握れ、妾ではなくな」
神様と式神契約で人が主導権を握るなんて、いいのかそれ。
罰とかあたったりしないだろうな……。
「僕がですか? 神様と式神契約なんて恐れ多いですよ」
「何も心配いらん、妾が良いと言っておるのじゃからそれが答えじゃ」
「でもなんで僕なんですか」
「其方が気に入ったからじゃ、後はそうじゃのう、其方の呪力が美味いからじゃ、契約すれば好きな時に吸引できる」
ちなみに呪力とは、例えば無から火や水を生み出し、元からあるそれらをコントロールしたり、術を行使する時の力だ。
いわゆる大体の漫画で扱ってるような気やチャクラみたいなもんだ。
「もし何かあっても責任とかホントに取れませんよ」
「大丈夫じゃと言っておるじゃろう、それとも、そんなに嫌かの? 妾との契約は……」
今までの自信に満ちた態度と一変し、僕が契約を嫌がっているのかと思った御狐様の目はどこか儚げで悲しそうだった。
「そんな顔しないでください、何の取柄もない僕で良ければ契約しますよ」
あんな悲しそうにされたら断る事なんてできないだろう。
まんま狐の顔ではあるけど、声色は人間そのものだし、なんとなく表情も分かる。
「よし、では早速契約するぞ!」
あとでここの宮司をしているおじさんに怒られないだろうか、という心配をよそに僕が契約の準備をしている間、御狐様は何故このタイミングで契約するのか語り出した。
御狐様はどうやら僕を気に入った時から契約したかったみたいだが、神格のある存在との契約には特殊な呪力が必要で、その呪力を稽古を通して扱えるように訓練してくれた。
その特殊な呪力を用いて神格のある式神召喚や、その他諸々の特殊な術が扱えるらしい。
その呪力の名前は【偽神力】神々の持つ神力の代替として扱える呪力だそうだ。
偽神力の生成方法は様々だが、僕の場合はなんと己の劣情、いわゆる性欲を変換する事で生成できる。
偽神力は精製コストが高く元となるエネルギーが膨大に必要になる、スタリオンの僕の無限の性欲を利用して生成コストを踏み倒そうという算段らしい。
これぞ無限の剣製ならぬ夢幻の勃起、アンリミデッドイレクション(勃起)ワークス!
変な事を考えていたら夢幻天様という名の御狐様にチョップされた。
僕がクワガタならタイムスリップしているところですよ。
ほんで最近僕がコントロールや変換に慣れてきたのでそろそろ契約すっか~との事らしい。
「そうじゃ、名付けのさい妾の名じゃが其方が考えよ」
「夢幻天の名でも構いませんよ?」
「いいや、其方が思う名の方が妾にとって重要じゃ」
「わ、分かりました……」
ちなみに神格のある存在に名付けする場合も、神力または偽神力が必要になるのだそうだ。
「準備できました、では、いきます……!」
「心得た」
僕が式神契約の詠唱を行うと同時に、床に呪力で描いた五芒星が微かに青白い光を放つ。
「汝これより我を助く、汝これより我と共に生ける、我は汝を裏返らぬ、我は汝と共に生ける、答へよ汝の思ひ」
貴方はこれから私を助けます、貴方はこれから私と共に生きます、私はあなたを裏切りません、私はあなたと共に生きます、貴方の思いを聞かせなさい。
「妾は誓ふ、貴殿の歩む道と共に歩まん」
私は誓う、貴方の歩む道を共に歩むことを。
「汝の思ひ、承る、僕は願う、君の新しい歩みが幸福であることを、僕は誓う、君を守り歩むことを
汝の名は 琥珀、今ここに、僕の呪力を以て契約を成す」
契約の真言を唱え、御狐様に札を翳し名付けを行う。
「!?」
呪力を思い切り持っていかれた!ダメだ、意識が朦朧として……。――――
――――――
――――
契約の仕上げの名付けのさい、僕は自分の呪力をほぼ持っていかれ、まばゆい光が視界を包む中で意識を失ってしまった。
僕が意識を失う直前に御狐様も、倒れかけていたような気がするけど……。
ていうかどこだここは、目が覚め見上げている天井は随分現代とはかけ離れている……。
周りも古ぼけたような年季のある家具やら何やらで溢れている。
―――― 知らない天井だ……。
これ1回言ってみたかったんだよね。
「良い朝じゃあ、さてー、今日も山菜採りいくべ~」
これは、夢か、どうやら僕はこの家の主で、山菜を採取して暮らしてるのかな?
1人称視点になったり3人称視点になったりするのも、夢特有のもので気付くのにはそう時間はかからなかった。
ていうかなんだこの間の抜けた喋り方は。
え?マヌケらしくて似合ってるって?
うるさい
山菜を採りに山に入ると、現代とは違って植物に洗練されたような澄んだ空気が身体中を駆け巡る。
心地の良いお山だなあ、そこら中マイナスイオンで溢れていて心が洗われる。
それにしてもどこか既視感を感じるけど、この山って……。
「ハぁ~↑↑どっせぇどっせぇどっせぇわぁ! でっかいタケノコ健康です!」
お前は一体何を歌ってるんだ、良かったなこの時代にジャスラックがなくて。
確かに力入れる時にどっせーいって言うけども。
僕は僕じゃない僕にツッコミを入れつつタケノコを掘る。
アホな独り言を言いつつ、額に汗をかき山菜を取り、竹で作った水筒で時折喉を潤す。
山に吹く風が汗を冷やし、竹の笹がざわめく自然の声が耳に心地良い。
なんか爽やかな気分だ、こんな夢もたまには良いもんだな。
そんなこんなで緑の澄み渡る自然に恵まれた山中でノンビリ山菜採りをしていると、微かに動物の鳴き声が聞こえてきた。
「コーン! コーン!」
これは……狐の鳴き声だろうか……。
僕の意識とは関係なく体が鳴き声の方へと向かう。
かすかな声を頼りに茂みをかき分け、道なき山道を進んでいくと……。
トラバサミにはまった狐がいた……まさか……。
成体に近いがまだまだ子狐の姿だろう。知らんけど。
まぁそんな事はどうでもいいか、早く外してあげないと。
そしてトラバサミを外すため近づくが警戒されてしまう……。
「ぐるるる……」
「大丈夫、怖くないよ、あ、そうだ果物もってるんだ、これ食べる? 村で育ててる桃だよ」
近くに村があるのだろうか?家から出た時には、周りに民家は見当たらなかったけど。
それよりも腹を空かせていたのか、食べ物の効果はすごい。
狐は警戒を解き目の前に置かれた桃にガブりつき始めた。
「あ、あれ?これどうやって外すんだ?いて!」
四苦八苦しながらも僕はトラバサミを外そうと試みる。
『時間かかってごめんよー』と時折声を掛ける。
そんな中で子狐は桃を食べ終わっても大人しく、こちらの方を琥珀色の瞳でジーっと見つめていた。
「よ、よし、外せたぞ! もう大丈夫だよ!」
罠を解除し、僕は額の汗をぬぐう。
怪我をしていた子狐は僕の事を数秒見つめてから茂みの中へ消えていった。
そして夕日で空も赤みがかってきたころ、僕は山菜採りを終え帰路につき
家が見え始める辺りで後ろからなにやら声が聞こえてきた。
「くぅーん」
先ほどの子狐だ。
ついてきちゃったのか。
この夢の僕は、周りに誰もいない家に身を置くことが寂しかったのだろうか、子狐を迎え入れたようだ。
「うちにくるかい? その怪我も治療しないとね」
「コーン!」
2人は家に向かい、僕は意識が一瞬で遠のいていく。
嬉しそうに鳴く子狐と山菜採りの青年の背を眺めつつ、僕はその夢を終えた。――――
――――
「ん、うーん……」
「起きたみたいじゃのう」
煌河が淡い夢から目を覚ますと、銀髪の眩しい涼やかな雰囲気の傾国の美女が彼を膝枕していた。
「どこかでお会いしましたでしょうか?」
「何をすっとぼけておる、妾じゃ」
今だに眠たくて重い頭を起こした煌河は凛とした傾国の美女にドギマギしながらも答える。
「まぁ大体察しはついてますけど、狐のお耳と尻尾がとても可愛らしいですね」
「そうじゃろう♥ 其方と契約した事でこっちの姿でも顕現できるようになったのじゃ」
琥珀と名付けられたその式神は話を続け、神になった際進化を経て人型の姿が自分の本来の姿になった。
しかし人に見えるようするには神力を消耗したり、見鬼が合っても見えにくい等の欠点がある事を説明した。
煌河と契約し彼の呪力と自分を繋ぐ事で人型の姿の欠点が無くなり、さらには他人にも
自分の姿が見えるようになったのだ。
「まぁ見鬼のない人間には、耳と尻尾は見えんがの、霊体にもなれるぞ、ほれ」
「なんかサーヴァントみたいですね……」
夢から覚め琥珀の説明をなんとなく聞いていた煌河は琥珀が霊体になった虚空へ向き
気になっていたことを切り出した。
「あの、気を失っていた間に夢を見たんですけど」
霊体になっていた琥珀は疑問符を表情に浮かべる煌河の言葉に対し、実体に戻る。
そして憂いの中にどこか慈愛が混ざったような眼差しで煌河を見つめ語り出した。
「あの夢はな、実際にあった事じゃ、さっきまで妾もお主と同じ夢を見ていてな」
「やっぱり……」
「あぁ、お主を初めて見た時に思ったのじゃ、あまりにもあの人に似ていてな、魂の色や気配も同じで小夜の事も友達じゃと。 あの人も以前に妾の事を友達と言っておった。 お主自信を気に入ったのは本当じゃがどうしても近くで確かめて見たくての」
「それで式神契約を……」
琥珀は懐かしみ過去を慈しむような眼をしながら優しい声色で語り続ける。
「あの人とは共に色々な時間を過ごした、熱いときには共に川に入り寒いときは同じ布団で眠った。
「ただただ楽しかった それにあの時くれた桃の味は今でも思い出せる」
「ある時、恩返しをしたいと思っての、神へと至る修行の為あの人の元から離れてしまったんじゃ」
「ある程度妖狐として力を付けた時に一度帰ったが、気付いた時には遅くてのう、人間の寿命の事なんて
全く知らなかったのじゃ」
「……」
「それが、妾の初恋じゃ……」
消え入りそうに呟いたその声は、憂いてはいるが大事な思い出を語るようなそんな声であった。
そして琥珀は言葉を続ける。
「そんな夢も長らく見ていなかったというのに、お主と契約して名付けられたのじゃ、あの人から貰ったのと同じ名前をな」
「煌河、お主はあの人の生まれ変わりじゃ、あの人と同じ魂を持つお主の呪力と妾の思いが反応したのじゃろう」
「そしてこれは妾なりのケジメじゃ」
琥珀はそう告げると地面に手を突き、深々と頭を下げ始めた。
「あの時数々のご恩を受けた貴方様の元から離れ、仇で返してしまいました事をどうかご容赦ください……」
琥珀の幾星霜の時が積もるであろう想いを受け止め、煌河は今の自分が何も覚えていない事に心の底から哀しい気持ちで溢れ、申し訳ない感情でいっぱいになり胸が詰まる。
そして涙目になりながらもなんとか声を絞り出す。
「すみません、僕、何も……」
「謝るでない、覚えていないのは当然じゃ、まったくなんでお主が泣くんじゃ、愛いやつよの♥」
「だ、だってあんまりじゃないですかぁ!」
涙声を発する煌河の頭をわしゃわしゃと撫で、辛気臭い空気を取り払うかの様に琥珀は笑顔で話す。
「それよりも妾の主となったのじゃ、もっとしゃんとして貰わんとの、そうじゃ、敬語も禁止じゃ」
「わ、分かりました」
「コレ」
「分かったよ、琥珀」
言葉遣いを取っ払った煌河の首周りに琥珀は両腕を絡め抱き着く。
「うむ! これからたっぷり恩返ししてやるからの♥」
積年の悔恨を取り払った琥珀色の瞳は、まるで止まっていた時間が動き出したかの様に澄み渡り爽やかだった。
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