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95. 最愛の子へ

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください


久々に評価のページを見ました。

ご愛読に続き、ブックマークや評価などもありがとうございます! 励みになります!








「彼女の死を偽装しよう」


 酒呑童子討伐の任務も組まれ、絶望を感じていた時。

 師はとんでもない言葉を口にした。

 それは、国へ敵対するのと同義だ。


「大丈夫さ、この国だって裏では色々やってる。私達だってこのくらいやっても罰は当たらないよ」


 少し気遅れ気味な反応をした僕へと、師は気楽な口調で告げた。

 そうだ……彼女達は平穏な暮らしを求めていただけに過ぎない。

 それなのに、おかしなものの影響でこんな結末になるのはあんまりだ……。


 師は作戦の概要を僕らへ話す。


「偽装するための人形は私が作ろう。それに彼女の意識を移し、侍が相手をしている隙に本体を魂ごと封印するんだ」


「おそらく彼女を蝕んでいるのは邪気の影響だろう」


「邪気を浄化できる場所に心当たりがあってね、封印した後にそこへ送る」


 邪気……それが原因で……。


「星が言ってるからね、将来彼女達の力が必要だ」


「はは、師匠の星詠みなら、はずれませんね」


「私は用事があるからね、君一人でできるかな?」


 師は少し過保護気味で僕の事をときどき子ども扱いする、しかし僕ももう一端の大人だ。


「当たり前じゃないですか、僕を誰だと思ってるんですか」




――――――




 酒呑童子を討伐する任が正式に組まれ、人員は源頼光を始めとして頼光四天王が抜擢された。

 彼らは平安京を守護している凄腕の侍たちだ。

 それほど酒呑童子という存在が脅威とされているのを感じさせる人選である。


 僕は先回りし大江山へと着き、酒呑童子の居場所を探る。

 好機だ、彼女は邪気に囚われたばかりで疲労したのか深い眠りに付いている……。

 岩穴で眠っていた彼女へ呪符を飛ばし張り付け、意識を乖離させ師の用意した人形へと移す。

 遠くに置かれた人形には今頃彼女の意識が宿ったはずだ。

 それを知らせるように、目の前の鬼のいびきと息遣いは止み、辺りが静寂に包まれる。

 よし、ここまでは順調だ……。


 今頃、頼光四天王は大江山へと辿り着き、酒呑童子の元へと向かっているはずだ……。

 師が予めここの寝床と違う人形が置かれた場所を、四天王たちに伝えている。

 後は彼女を封印し……彼の地へと送る。

 そうすれば、いつか正気を取り戻して平和を掴み取れるはずだ。


「ははは、アンタぁ あの人によう似とるねぇ!」


 誰だ……!?


「そう、警戒せんでええよぉ。 アンタには危害を加えへんで」


 なんだ……?

 彼女を見てると、脳の奥が軋む。

 魂の奥から何かが沸き上がって……。

 なんだ、この記憶……。

 彼女は……僕の……くっ……。


「だいじょーぶ? 頭抱えて……いたそーに」


 彼女を最後に見た時は、健やかに過ごしていたはずだ……。

 彼女は……なぜ、こんな……。


「……姫、なのか?」


「……はははは! 顔見ただけで思い出すなんてねぇ、ホントにあの人やった!」


「邪気だったか……何故そんなものが!」


「知らんよそんなん、あぁ憎たらしいなぁ! 人間共! 自分らが鬼を迫害してんのに鬼退治? 何様やろうなぁ」


 憎しみに支配されている……何があったんだ……。


「ウチは、その子と一緒に頼光四天王とかいうのキャン泣かせよう思てるんや。 どいてくれる?」


 彼女は僕を威圧してくる……なんて禍々しくも強大な力なんだ……。

 四天王と戦わせるのはまずい、彼らに場所がバレる。

 そして何より、彼女を戦わせたくはない……時間を引き延ばせないか?


「何故、そんなことを? 他に何か目的があるのか?」


「……その子なぁ、ヤマタノオロチの子だって噂なんやわぁ。 水神の子ならこのしょうもない邪気もなんとかできる思うてな」


 酒呑童子はヤマタノオロチの子だという噂がある。

 きっと彼女の力なら姫は自分に取り込まれている邪気を取り除けるかもしれないと思ったのかもしれない。

 しかし……。


「それは無理だろう……」


 何故なら……。


「分かってるわそんなん!!」


 僕の言葉が癇に障ったのか、彼女は強大な禍々しい邪気を僕にぶつけてくる。


「怨嗟の気を防ぎ、邪気を断て!」


 咄嗟に結界を張ったが急ごしらえだ……。

 三重、五重!!! ダメか……。

 結界だけじゃ防げない!


「聖なる朱雀の火炎よ、五獣の思想を経て怨嗟を焼き尽くせ!」


 何とか……威力を殺したけど、邪気に包まれ魂が衰弱していくのを感じる……彼女の軽く放った一振りでこんな力が……。

 こんなにも彼女は苦しみを抱えて……。


「あぁ、かんにんして……こんなつもりじゃ……」


 情緒が不安定だ……神である彼女が持つ強大な力が邪気にまだ抗っているのかもしれない。

 僕は絶対に彼女を救いたい……。

 今は無理でも……いつか、必ず。


 今は只、彼女の苦しみを和らげる事しかできない。

 それが……今の僕の限界だ。


「いつか、最愛の君を……救って見せる……」


「はははは! そんなん無駄に決まってるやろ!」


 彼女はきっと……永い時を経て邪気に蝕まれ半ば諦めているかもしれない。

 でも、僕は絶対に諦めない。

 彼女の命がある限り……僕の魂が続く限り……。


「やってみなきゃ分からないだろ?……この術で、それを僕の身体に取り込もう……だからもう少し待っててくれ」


「なに……これ……?」


 これは、生命の源を己に取り込み分け与える術。

 元々は瘴気を内在させた者を救うための術だ。

 もちろん邪気にも有効なはずだ……完全に消し去ることはできないが……。

 いつか、妖怪も、人間も、神も……平和に……。


「身体が……軽なって行く……!」


 良かった……魂が、彼女本来の輝きを取り戻していく……。

 意識が朦朧とする。


「すまない、力を貸してくれ……酒呑童子を封印する……」


「もちろん……!」


 体力の限界が近い今の僕じゃ、一人で封印できないけど。

 魂の輝きを取り戻した今の彼女なら、協力してくれる。

 久々の時間だ……こうやって一緒に……。

 いつ以来だろう……昔、僕が病で倒れ伏す前……その時には姫も、笑顔の裏では元気がなかった気がする。

 衰えていく僕に気を使っていたのかもしれない。

 ありがとう……君が生まれて来てくれて、僕は……。


「父上……!」


 酒呑童子の封印を終えて、僕は倒れ呟く。


「カッコつかないな……娘の前で……」


 このまま、僕は死ぬのだろうか。

 彼女は、こんな邪気に今まで耐えていたのか……。


「やれやれ、相変わらず無茶をするね」


 遠くから師の声が聞こえる……?

 姫の、師の声が……遠くなる……。

 だんだん意識がなくなっていく……。―――――――




――――――




 




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