92. 二度目の暴走
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僕は護法童子の風吹鬼と威吹鬼と共に、妖怪たちが収容されている部屋から繋がる先の通路を進む。
負の念を吸収している様な反応があるこの先に何か、やつらの悪事に繋がるものがあるのだろう。
「それにしも嫌な気だねぇ……思わずあの頃を思い出しちまいそうだよ……」
「あぁ、全くだぜ……」
風吹鬼が少し元気を失くし、うな垂れながらも心境を吐露する。
そして威吹鬼がそれに同意し気を引き締める。
やはり過去に邪気や瘴気にあてられたのだろうか。
それらの負の念を引き寄せ吸収しているだけあり、どうにも空気がきな臭い。
そんな事を思い警戒しながら歩くと新たな部屋に辿り着く。
「そんな……」
「ひどいねぇ……」
そこには液体入りのカプセルに収容された、妖怪や動物が数体存在していた。
それらのカプセルは、部屋の中心にある闇を凝縮したような黒い気が満ちるカプセルにチューブで繋がっている。
この動物たちは恐らくもう命はないだろう、妖力が見えない……。
「あんまりだ……」
そして部屋を眺めると一人の研究者らしき人物がおり、集中しているのか僕らに気付いていない。
「おい、なんだこりゃぁ!」
威吹鬼がその研究者に詰め寄り、煮詰まった怒りを吐き出すよう語気を荒げ言葉を放つ。
しかし、まともな返答は帰ってこない。
「ひぇっ!?……なんだ鬼か、次の実験体かぁ?」
「くそっ……イカれてやがる……」
ヤツは目の焦点が合っていない、おそらく瘴気にやられたんだろう。
……一先ずここの気を払うか。
僕が呪符を配し五芒星を光らせ浄化の術を放とうとすると、ヤツは声を荒げ僕へとフラスコを投げつける。
「貴様ぁ! 安部清明の生まれ変わりぃ!」
「大将!」
風吹鬼が間に入りその何かを拳で撃ち落とすと同時にその物体が割れ、中身の黒い気が風吹鬼に降りかかる。
フラスコの中身には邪気が詰まっていたんだ……!
「風吹鬼!」
「アタシはいい、続けな……こいつらを一早く安心させて眠らせちまおう……」
弱っているのに彼女の気迫に押され、つい言う事を聞いてしまう。
く……術を続けるべきじゃなかったか? 先に彼女の治療を優先するべきだったか……?
僕は後悔しながらも術を発動し終えて数十秒経ち、瘴気を払い終える。
その間、威吹鬼は研究員を縄で縛った後に風吹鬼の側へ駆け寄っていた。
なんだ……眠る彼女を見たら、とある既視感に襲われた。
前にもこんなことが……でも、そんなのは今はどうでもいい。
治療を……!
「兄貴! 姉御が……!」
「風吹鬼……! 今それを払う!」
僕は風吹鬼に駆け寄り、彼女の苦しみを取り除くために術を行使しようとするが。
我を失った風吹鬼が僕に飛び掛かってきた。
「ぅうう……があああああああ!」
「うぁ!」
「あぶねぇ!」
威吹鬼が止めてくれた。
彼女の拳をガードした腕で直に受けた威吹鬼は、苦虫を噛みつぶしたような表情で僕へ告げる。
「こりゃぁ、まずいかもな」
「無力化させよう、その間に瘴気を払う」
「兄貴……」
「分かってる、もちろん傷付けない方法で」
僕は応答と同時に呪符を飛ばす、なんなく躱されるが、それは追尾する。
「ガッァアアアアア!」
僕の眼前へ向かってきた風吹鬼を威吹鬼が受け止め。
追尾した呪符が彼女の背へ届く、これはドーマ連盟の研究施設でも使用した特殊な縄で敵を縛る呪符だ。
彼女は縄に絡めとられ、地を転がる。
「ウアァアアアアア!!!」
しかし咆哮と同時に破られた。
嘘だろ……あれを破るのか、信じられない馬力だ。
でも、強大な鬼の力を持つ威吹鬼と過去に戦闘していたおかげでそれも想定済みだ。
彼女が数秒間動きを止めた間、周りに配した呪符が発動し金縛りの結界を構築する。
「今だ、威吹鬼!」
罠結界だ、呪符単体で金縛りを発動するより強力だぞ。
動きを止めた風吹鬼を威吹鬼が羽交い絞めにする。
「死んでも兄貴に手は出させねぇぞ! だから頼む!」
「もちろん」
僕は手早く、霊体になり今までしたように彼女の魂に内包されていた邪気を斬り払った。
……きっと彼女の魂に根付いた人間への不信感が、先程邪気を浴びて引き起こされたのかもしれない。
彼女の心の中では、まころんもそれを感じ取り悲しんでいた……。
「威吹鬼、助かったよ」
「姉御は!?」
「もう大丈夫だ、彼女を治療しよう」
「ど、どこか悪いのか!?」
随分動揺しているな、風吹鬼の心の中で聞いたけど彼らに似たような事が過去にあったみたいだ。
それで、二人は1000年以上もの間、片方は行方を捜し、片方は封印されていたという事だろう……。
「魂は大丈夫だ、まころんの肉体が邪気や風吹鬼の力に疲弊している。休めばよくなるよ」
僕が治療を施していると、運が良い事に美香さんが到着し彼女に任せる事にした。
僕より回復のエキスパートに見て貰った方が良い。
――――――
その後、ドーマ連盟に囚われた妖怪や動物を救出し寺子屋や治療施設に送った。
やつらは邪気や瘴気を扱いその研究で得たものを裏組織や闇の世界に流して、資金源としていたようだ。
カジノを開いたのは欲望を煽り、負の念の源にするためだったんだ。
僕はやつらの暴挙を止めると誓い、既に命のなかった動物や妖怪を供養し、祈りを捧げる。
「君たちの無念、晴らして見せる。どうか安らかに眠ってくれ……」
「許せねぇ……あいつら、あの人の名前を使って……クソ……」
……威吹鬼もヤツらへ向けた悔しさを呟く、彼も一緒に亡き命へ祈りを捧げてくれた。
蘆屋道満……きっと威吹鬼は彼の事を言っているんだろう。
安倍晴明に並ぶとされた、道摩法師の異名を持つ陰陽術師。
物語ではよく悪役にされてしまうが、本来は人格者だった人間とされている。
現在ドーマ連盟と呼ばれる【道摩連盟会】は、彼が作り上げた善行を行う野良の術師集団【播磨法師】が時と共に姿を変えたものであるとされている。
威吹鬼はきっと、その蘆屋道満とも知り合いだったんだろう。
流石に今は聞ける雰囲気じゃないが……。
とにかく、ドーマ連盟は危険だ、早いところ本拠地を掴めればいいが……。
「帰ろう……」
僕は威吹鬼に声をかけ、屋敷へと帰った。
そして一日の嫌な気分を風呂で洗い流し、床に就く。
あの施設で会った白いカラスは小夜の部屋へ泊まっている……。
聞けば彼女は小夜を探しにここまできたらしい。
その途中、物珍しさからヤツらに捕まったそうだ。
それと……まころん、風吹鬼は大丈夫だろうか。
美香さんの治療で意識を取り戻した風吹鬼は、僕らへ謝罪をしすぐに引っ込んでしまった。
後は静養して体力が回復するのを待つだけだが、何かあった時に対処できる人間が近くにいたほうがいいということになり大事をとって今夜は凛華姉さんの屋敷へ泊まっている。
僕の屋敷へ泊まる方向で話が進んでいたのを凛華姉さんが断固阻止したわけだ。
たぶん精神的に辛いだろう、何かケアしてあげられるといいんだけど……。
僕は目を閉じながらそんな事を考え、眠りに付いた。
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