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91. 白いカラス

ご閲覧ありがとうございます!

AIイラストはあくまでイメージとしてお楽しみください







『ば、バカ! 貴様! 何故それを!』


 ……宵一さんてブラジャーをつけているのだろうか、なんて思いながら無線を切り僕は威吹鬼とトイレから出る。


「やぁ」


「あぁ、待っててくれてありがと」


 まころんもお花を摘みに行っていたのかは分からないが、僕らを待っててくれていた。

 僕は宵一さんに指示を受け、これから身を潜めなければならない事をまころんに伝えた。


「そっかぁ、私は他の人に合流しようかなー」


「え……」


 彼女の言葉を聞きながら僕もどうしたものかと考える。


 すると……男子トイレから人が出てきた?

 個室にいたのか? いや……誰もいなかったはずだ。

 僕の勘違いだったのか?


「どうしたの?」


 まころんが僕へと疑問を投げかける。


「トイレには僕ら以外誰もいなかったはずなんだ……」


 僕は再びトイレへと入り、個室を順番に確認していく。

 何もない、ここにも。

 ……隣に、おそらく用具入れの個室がある。

 僕がその扉を開くと、そこには。


 一見すると特別なものは何もないが、壁が術式により偽装されていた。

 呪符を張りつけ偽装を解除する。


「解!」


 すると、扉が現れそれを開くと、その奥には地下へと続く階段があった。


「面白そうだねぇ!」


「おわぁ」


 風吹鬼が僕の隣から用具入れを覗く。

 いつの間に男子トイレに入っていたんだ。


「今何か言ったかい?」


「おわぁ」


「そうじゃないよ! それ以外に何か言ったかい?」


「何も言ってないけど……」


 風吹鬼から、ツッコミを受けありのままを返す。

 何か聞こえたか? 威吹鬼もだけど彼女も耳が良い。

 彼女達は五感やフィジカルが発達しているからな、肉体はまころんだから風吹鬼は威吹鬼ほどじゃないと思うけど。


「俺も聞こえたぜ、助けを求めてるような」


 ……この先に何が。

 もし誰かが、何かがホントに助けを求めていたら……。

 手遅れになる前に行くか……。


「隠し扉を発見、他に動ける人もいないみたいなので先行します。場所は男子トイレの用具入れです」


「よし、そうこなくっちゃねぇ!」


『おぉい待て!』


 僕は宵一さんを無視し、無線を切る。

 きっとこのカジノだって裏で何かやっているという事は表にいる人たちへ被害が出る可能性は低いはずだ。


 率先して先頭を行く威吹鬼の後ろを歩き、階段を下りる。

 そして広い部屋へと出る。

 そこには、捕らえられた動物や妖怪が数体ほど檻に収容されていた。


「何故こんな事を……」


 僕はドーマ連盟の研究施設で見たキメラの鵺を思い出し、不快な気持ちになる。

 くそ……。


 見たところ檻には特殊な物は仕掛けられていないと思う、ただの檻だ。


「誰か言葉は話せないか? 僕たちは施設の人間じゃない、助けに来たんだ」


 数秒の沈黙の後、一人の妖怪が声を上げる。


「アンタ、まさか……あの変な人間?」 


 僕が声の方へ視線を向けると、そこには白いカラスが檻の中に捕らえられていた。





挿絵(By みてみん)





「君は……まさか小夜の……」


 僕はそのカラスへ言葉を返す、それはおそらく小夜が僕と共に島へ来る前に仲良くしていた白いカラスだ。

 なんで、この島に……。


「小夜はどこにいんのよ!」


「やっぱり、君は喋れたのか」


「知らないわよ、気付いたら喋れるようになってたんだから」


 そ、そうですか。

 性別を確認した事は無いがおそらく女の子だろう、それにしてもこんな気の強い性格だったのか。

 小夜と共におやつをあげてる時は大人しく僕の側で食べてたから大人しい子だと思っていた。


 僕は護法童子の二人に彼女を紹介する。

 そして彼女にも二人を紹介する。


「この子は小夜の友達なんだ、そしてこっちは僕の友達」


「ず、ずいぶんやんちゃそうなお友達ね……とても品位を感じないわ……」


「あぁん!?」


「ひぇ……」


 生意気な口を叩く白いカラスへ風吹鬼がメンチを切って威嚇する。

 するとそのカラスは委縮してしまった。

 なんか風吹鬼のその視線にゾクゾクしてしまう。

 た、たまにでいいんで僕にもその視線を頂けませんかね。


「はははは! 小生意気な事はもっと度胸付けてから言うんだね!」


「べ、別にビビってなんかないわよ!」


 風吹鬼は楽しそうに彼女をおちょくる。

 それより今は、この状況だ。

 捕らえられた子達をどうするか……。


「今すぐに助けるのは難しい、僕らを信じてもう少し待っててくれ」


「皆にもそう伝えるわ、早く助けなさいよね!」


「あぁ」


 ……宵一さんへ連絡だな。


「隠し通路の地下から収容されている動物や妖怪を発見しました、救出のタイミングはどうしますか」


『少し待っていろ、先程政府の権限で営業終了にした。民間人を退去させてる』


「了解」


『応援がそちらへ行く、あまり深追いするな。待機していろ』


「善処します」


 僕はそっけなく返事をし、無線を切る。

 待機命令を受けたがそんなつもりは毛頭ない。

 何かこの部屋の奥に負の念を吸収している様なものを感じる。

 これがおそらくこのカジノの空気が綺麗だった理由だろう。

 

 僕は白いカラスにこの先に何があるのか尋ねる。


「部屋の奥には何があるのか分かるかい?」


「知らないわよ、ただ……私達は順番に隣の部屋に連れていかれるの、その後どうなるかは……」


「分かった、すまない」


 酷な事を聞いたかもしれない。

 きっと、あの日の鵺みたく実験体や研究に利用されているのだろうか……。

 なんてやつらだ……。


「行こう」


 すぐに行けば助かる命もあるかもしれない。

 僕は二人の護法童子へと声をかけ、先へと進む。――――――







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