表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/243

第97話 真剣な人、なんとなくな人… 思ってる事は、人それぞれみたいです…

 今日も今日とて王妃様御一行は(ロザミア)を楽しく散策(さんさく)に出掛けた。

 ミラーナさん、ミリアさん、モーリィさんの3人は、御一行を三角形に(かこ)んで歩く。

 更に(まわ)りを平民に(まぎ)れた20人の護衛が(かこ)む。

 行き先は不明。

 と言うか、御一行の考え次第らしい。

 ロザミアに来て最初の散策(さんさく)で、行く先々に(さき)()れを出した事に御一行の()(ひょう)を買ったからな。

 なので、それからは行き先を()(ぜん)に決めず、御一行の気分次第で決めるんだとか。

 ただし、バラバラでの行動は護衛の関係もあって否決された。

 ま、当然だよな。

 勿論、私とアリアさんは治療院で傷病人の治療だ。

 御一行が来られた当初は王族を(じか)に見れるって事で、ハンター連中が仕事をキャンセルしてまで見物に(さっ)(とう)した()()でヒマだったが…

 さすがに滞在期間も残り10日(とおか)を切った今では、通常(?)に戻っている。


「喜ぶべきか、悲しむべきか…」


「ん? エリカさん、どうかしたんですか?」


 朝の部の診療が終わり、私はアリアさんと一緒に昼食を食べている。

 これを言うのは失礼だろうが、王妃様御一行の相手に疲れていたのが影響したのかも知れない。

 つい魔法医(医者)としての本音が出てしまった。

 喜ぶべきは、患者が来て(もう)かる事。

 悲しむべきは、怪我人や病人が()えない事。


「それは… 確かに… どう言えば()いのか分かりませんよね…」


「ま、深刻に考えても仕方無い事なんですけどね… 誰だって病気になりますし、ハンターで無くても怪我する時は怪我しますし… むしろ、そんな時に私達みたいな魔法医が居なかったらと思うと…」


 そう言う私を見て、アリアさんは少し困った様な笑顔で言う。


「なんとなくですけど… エリカさんの気持ち、(わか)る気がします。誰だって怪我したくないし、病気になりたくありません… けど、怪我する時は怪我しますし、病気にもなります。それは仕方無い事ですもんね。そして、それを治す為に私達が居る… 私達にも生活があるから()()で治すワケにはいかない… ですよね?」


 アリアさん…

 なんとなくでも、理解してくれてるじゃん。

 ま、私達に出来るのは怪我や病気を治す事だから、それに全力で取り組むだけだな♪





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 乗り合い馬車の中、無言で揺られる(ふた)(くみ)の家族。

 平民の格好(かっこう)をしたバーグマン公爵とシュルンマック侯爵、そして彼等の家族である。

 共に必要最低限の物資と金を持ち出し、(いち)()イルモア王国を目指している。

 一同の表情は暗い。

 ハングリル王国の貴族という立場を捨て、平民としてイルモア王国でやり直す。

 暗くならないなど無理な話だった。


「……で? 何処に向かっているんだ? 何か()()でもあるのか?」


 沈黙を破ってバーグマン公爵がシュルンマック侯爵に聞く。

 イルモア王国はブルトニア王国(敵国)の友好国であり、ハングリル王国との国交は無かった。

 ()()などある(はず)が無い。

 あるとすれば王都ヴィランに捕えられているハングリル王国の貴族達だが、彼等に連絡を取るなど不可能。

 そう思って聞くと、思いもよらない答えが返ってきた。


「ミラーナ王女だ。彼女に会おうと思っている。彼女なら何とかしてくれるのではと思ってな」


 息を()むバーグマン公爵。


「彼女の(うわさ)は聞いているだろう? (ちまた)では『(ぼう)(じゃく)()(じん)』だの『()(てん)(こう)』だのと言われているらしい。だが、その(うわさ)とは(うら)(はら)に『(ひと)(なつ)っこく、話し好き』とか『自身の願望は必ず実現させる(さく)(ぼう)()』とも言われているらしいぞ? (たよ)ってみる価値はあると思うんだがな」


 勿論、バーグマン公爵もミラーナの(うわさ)は聞いた事がある。

 それとは別の(うわさ)も聞いているが…


「別の(うわさ)とは何だ? 俺は言った通りの事しか聞いていないが…」


「それは『何も考えず、本能だけで動く暴れん坊』と『戦場を神速で駆け抜ける悪魔』だ…… ()速の()()と言うのも妙な言い回しだが… まぁ、(ごく)(いち)()の者しか知らない(うわさ)だがな。そんな人物が、王族とは言え領地を貰って経営など出来まい。(こう)(とう)()(けい)()()(ばなし)だよ」


 シュルンマック侯爵の(ほほ)(ひと)(すじ)の汗が流れた。

 特に後者は戦場で聞いたミラーナの話に()(ごう)する。

 ならば、前者も全てでは無いものの、()(ごう)する部分があるのではないか?

 そんな人物を頼るのは間違っているのかも知れない。

 だが、間も無くイルモア王国に入る。

 後戻りは出来ない。

 シュルンマック侯爵は、(いち)()の望みをミラーナに(たく)す事を決意した。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「ただいま帰りましたわ♪ エリカちゃん、明日… 最終日の予定を決めたいので、少し(よろ)しいかしら?」


「は… はいっ!」


 ミラーナさん、ミリアさん、モーリィさんの3人に夕食の用意を頼み、私は王妃様と共に2階のリビングで話し合う事になった。

 変なモン作んなよ?






(わたくし)の考えた予定では、最後にもう一度テーマパークを楽しみ、少し早めに切り上げて夕刻… 16時頃にロザミアを(しゅっ)(たつ)する事にしようと思っておりますが、エリカちゃんの考えを聞かせて貰えますかしら?」


 王妃様…

 それ、予定とは言いませんよ?

 言えんけど…


「そうですね… 朝は普段通り、7時に起床。食事をして8時に治療院を出発。テーマパークには8時半頃に着くとして、開園するまでの時間で軽くお茶ですかね。9時の開園から遊んで12時に昼食。今までは食べ終わってすぐに遊んでましたが、夕方にロザミアを出発して王都に帰る事を考えると、食後は少なくとも30分は食休みをして胃の負担を減らす事を提案します。これは私個人としての提案ではなく、魔法医としての提案です。馬車の中で体調を(くず)したくなければ守って下さい。そして夕方まで自由に過ごし、16時にロザミアを(しゅっ)(たつ)… こんなトコですかね♪」


 ここまで細かく──と言う(ほど)でもないが──決められるとは思ってなかったんだろうな。

 王妃様は目をパチクリさせながら(うなず)き…


「そ… そうですわね♪ その様に明日の最終日は行動する事にいたしましょう。ではエリカちゃん、(わたくし)達もダイニングへ行きましょう♡」


 ()くまでも平静を(よそお)う王妃様。

 しかし、私は見逃さなかった。

 王妃様の(ほほ)(つた)(ひと)(すじ)の汗を。






「おっ? タイミングが()いな♪ (ちょう)()用意が終わったトコだよ♪」


 さすがに王妃様御一行がロザミアで食べる最後の夕食って事で、3人が作った料理は気合いが(はい)ってる様だ。

 前世で言えば、中華料理のフルコースって感じかな?

 勿論、料理自体は中華料理とは全く違うけど。

 それでも気合いを感じさせる()った料理の数々を、全員が満足するまで(たん)(のう)したのだった。

 当然、ミラーナさんの作った料理は幻覚のオマケ付きだったけど…

 どんな幻覚だったかは聞かないで下さい…

 特にフェルナンド様とローランド様に関しては…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ