第93話 テーマパークは程々に楽しみましょう
日付が変わり、朝が来て…
王妃様御一行お楽しみのテーマパーク満喫の日。
まぁ、テーマパークと言うよりアスレチックって感じだけどね。
楽しんでくれたら嬉しい。
お風呂で私を洗うより楽しんで欲しい。
…頼むから楽しんでくれ。
また好き放題洗われたよ、がっでむ!
それはともかく、まずは腹ごしらえだ。
しっかり食べておかないと楽しめないからな。
そう言うと、全員が食べる食べる。
食べ過ぎで動けなくなるからと、私が注意するまで食べやがる。
さすがに王妃様は普通だったけど。
保護者に徹するつもりかな?
いやいや、ローランド様が居るんだから、付き合う必要はあるよな。
「何事も程々が一番ですよ? ですから食べるのも程々にしておかないと、ミラーナみたいになりますよ?」
王妃様に言われ、少々苦しそうに一点を見詰める王女様達。
その視線の先に在るのはトイレ…
ミラーナさん、食べ過ぎて腹下してやんの…
私が注意してるのに食べ続けるからだよ…
「ミラーナ姉様って、あんな感じでしたっけ…?」
首を傾げるキャサリン様。
「私の知ってるミラーナ姉様は、もっと精悍なイメージなんですけど…」
やはり首を傾げるロザンヌ様。
「僕は半年毎に1ヶ月間しか会わないから… ミラーナ姉上って、元々あんな感じじゃないんですか?」
そうか、フェルナンド様は物心が付いた頃にはミラーナさんはロザミア領主になってたから、今と変わらないミラーナさんしか知らないんだな?
でも、ローランド様が生まれてから1年ぐらいは王都で国王陛下の補佐をしていたから、一緒に生活していた筈だけど…
「そうなんだけど… その頃って僕は4歳ぐらいだから、遊んで貰った事以外ハッキリ覚えていないんだ。一緒に遊んでくれてるミラーナ姉上って、凄く楽しそうに遊んでくれるんだよ♪ ローランドをあやしてる時も楽しそうだったなぁ♪」
私の疑問に答えてくれるフェルナンド様。
ミラーナさんって、幼少期からハンターになる為の策謀をめぐらせてたみたいだからなぁ…
その反動が今になって出たんだろうか?
そんな事を考えていると…
「エリカちゃ~ん、準備出来たよ~♪」
「サイズ、本当に適当で良かったの?」
ミリアさん達が大量の服を持って来た。
そう、王妃様達の着ている服ではテーマパークで動き難いって事で、動き易い服を用意して貰っていたのだ。
「さて… 王妃陛下達には、こちらに用意した服に着替えて頂きます。皆さんが着ている服では動き難いですからね。サイズは私が魔法で合わせますから、お好きな服を選んで下さい♪」
用意したのは平民用──ただし、それなりに上等──の服。
女性用も、スカートではなくパンツルック。
汚れたりした時の為に、着替えも選んで貰う。
髪型も弄る。
長い髪をキッチリ纏めるのではなく、平民っぽく緩く纏める。
最終的に王妃様御一行は、如何にも王族・貴族風の見た目から激変。
誰が見ても平民にしか見えなくなった。
しかし、さすがは王族。
醸し出す雰囲気までは隠しようが無く、平民は平民でも貴族に上がる手前の平民って感じだけど…
まぁ、それは仕方無いだろうな。
とにかく、これで周りに変な緊張感を強いる事無くテーマパークを楽しんで貰えるだろう。
全ての準備が調い、私達はテーマパークに向けて出発した。
治療院は休診日ではなかったが、初日ぐらいはエスコートしなけりゃって事で休みました。
ミラーナさん?
まだトイレから出て来なかったから、メモをテーブルに置いて先に行く事にしたよ。
自業自得だろ。
テーマパークに着いた王妃様御一行は、目を丸くしていた。
そりゃそうだろう。
生まれて初めて見るアトラクションの数々。
私が知らない間に増えてるし…
巨大滑り台は、小さな子供向けに高さ5mと3mの物が増設されてるし。
ボール(モドキ)を使った物はスト○イク・アウトだけだったのが、バスケットボール・タイプ──バスケット・インって名前らしい──の物が増設されてるし。
無料で楽しめる物として、日本の公園に在る鉄パイプを使ったジャングルジムにブランコ。
私が前世の記憶から絞り出した公園の遊具が見事に再現されていた。
幼いフェルナンド様とローランド様は勿論、大人の王妃様、成人したキャサリン様、成人間近のロザンヌ様も目を輝かせている。
ミリアさん、モーリィさん、アリアさんも同様だ。
いつの間にか合流したミラーナさんも…
「凄え~っ♪ なんだよこれ! 知らない間に増えてるじゃんか!」
と、騒ぎまくっていた。
そんな中、冷静だったのは私だけ。
王妃様は…
「これは素晴らしいですわ! 是非とも王都で再現しなくては!」
と、アトラクションを楽しみながらも何やらメモっていた。
対称的なのは、純粋にアトラクションを楽しむキャサリン様達。
賞品が貰えるアトラクション──ス○ライク・アウト、バスケット・イン、巨大迷路──は有料だが、その他は無料で楽しめる。
平民風の服装に着替えたお陰で、完全に一般の客に溶け込んで楽しんでいた。
良い思い出になってくれたら嬉しいな♡
王都に戻ってから、話を聞いた国王陛下が拗ねなきゃ良いけど…
何故だか護衛の兵士達もアトラクションを楽しんでたし…
護衛の意味が無えだろ…
結局、テーマパーク開演時間の9時から閉園時間の20時まで、10時間──昼食休憩の1時間を除く──も遊び続けた王妃様御一行+α。
治療院に戻った時には全員──私を除く──がヘロヘロだった。
「皆さん、はしゃぎ過ぎですよ… ロザミア滞在は今日だけじゃないんですから、少しはセーブしないと…」
王妃様までヘロヘロって…
途中からメモを取るのも忘れて楽しんでたし…
「明日はロザミアの散策にしますわ… もっとてえまぱあくを楽しみたいですけど… さすがに限界ですわね…」
限界まで遊ぶなよ…
「まぁ、私は治療院での仕事がありますから、街の案内はミラーナさん、ミリアさん、モーリィさんに頼みます。王都… ヴィランとは違った視点で楽しめると思いますよ♪ けど、ロザミアは〝ハンターの街〟で粗暴な人が多いですから気を付けて下さいね」
まぁ、ミラーナさんが領主を希望して騒ぎになったそうだから、王妃様は知ってるだろうけど。
子供達は知らない可能性が高いから、注意しておくに越した事はない。
明日は平民用の服を着ない方が良いかも知れないな。
少し遅めの夕食を食べ終えた一同は、一斉に風呂へ向かう。
私にとって恐怖の時間が始まるのか!?
………………………………
…と思ってたけど…
余程疲れているのか、自身の身体を洗い終えるとサッサと部屋へ戻って寝てしまった。
らっき~♫
ちなみにミリアさん、モーリィさん、アリアさんの3人もバテバテ。
方向音痴なのか、迷路で迷いまくっていた。
ミラーナさんは…
そろそろ帰ろうかという頃になって、丸太&ロープ渡りで離れ技を見せると言い出した。
数本の丸太を一気に飛び越えて見せると言うのだ。
疲れてるから止めた方が良いと皆が言うのも聞かずに挑戦し…
………………………
見事に転落した。
アホかい…
~追記~
翌日から丸太&ロープ渡りの前には『丸太は無理せず、一本ずつ渡りましょう』と書かれた看板が設置される事になった。
ある意味、施設の安全に貢献してくれたな。




