第88話 王族のロザミア来訪希望に頭を悩ませても、結局は王族次第なんだと諦めました
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「そろそろミラーナさんが帰ってくる頃ですね」
「年に2回王都に行く? 帰る? どっちにしても大変よねぇ」
「仕方無いですけどね、そういう家系に生まれちゃったんだから」
治療室でアリアさん、ミリアさん、私の3人が会話中。
ちなみにモーリィさんは…
「喋ってないで、早く治してよぉ~… 痛いんだからぁ~…」
「自業自得じゃないですか。前にも言いましたよね? 敵を撹乱するのはスピード・ファイターのミリアさんに任せるべきだって。相手が少しばかり素早い程度の魔獣だからって、調子に乗るから怪我するんですよ?」
私は呆れて言う。
「だってさぁ~… ただのワイルド・ウルフが十数頭だよ…? ちょっと素早いだけだから、私でも何とかなるかな~って思ったんだよぉ~…」
それでまた大木に激突して肋骨を折ってりゃ世話無いわ。
あのミラーナさんでさえ、あれから大木に激突する事は無いってのに。
ミリアさんとアリアさんは苦笑いしている。
ちなみにワイルド・ウルフとは、その名の通り狼型の魔獣。
普通の狼に比べて2倍近い大きさながら、その素早さは比較にならない。
鋭い爪と牙を持つだけでなく、長い尻尾での攻撃も脅威なのだ。
ちょっと素早いだけなんてのは、モーリィさんは勿論、ミラーナさんやミリアさんみたいな高ランク・ハンターだから言える事だ。
Dランク以下のハンターでは、1頭だけでも単独での討伐依頼は受けられない。
繁殖力も高く、集団暴走を起こし易い厄介な魔獣と言われている。
私は折れた肋骨を治し、モーリィさんの背中をベチンッと叩いて言う。
「それならそれで、もう少し周りに注意して行動して下さい。敵しか見てないから、障害物にぶつかるんですよ!?」
「分かったよぉ~… 分かったから、ミラーナさんには言わないでよ? ミラーナさんと同じ事して2回も骨折したなんて知られたら、どれだけ笑われるか分かんないからさぁ…」
懇願するモーリィさんに、私達3人は…
「「「言わない自信は無いわぁ…」」」
思わずハモってしまった。
ぷしゅぅううううううっ
と、モーリィさんはベッドに倒れ込んだのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ガタゴトと揺れる乗り合い馬車の中で、ミラーナは悩んでいた。
妹のキャサリンがロザミアに行ってみたいと言うのだ。
キャサリン1人なら良い。
だが、キャサリンがロザミアに行くとなると、ロザンヌも行くと言い出すだろう。
そうなると、フェルナンドも行くと言い出すに決まってる。
ならば、付き添いとして母上も行くと言うに決まってる。
そうなると当然、ローランドも一緒にという事になる。
公務で忙しい国王は無理としても、5人がロザミアへ行くなら護衛も結構な数になる。
まさか観光ホテルが丸ごと貸し切りになる程の人数にはならないだろうが、かなりの大事になるのは間違い無いだろう。
考え事をしているミラーナの表情は険しく、同乗している誰もが距離を置く程だった。
ヴィランを出発してからロザミアに到着するまでの10日間、たまたま乗り合わせた乗客は理不尽な緊張を強いられたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ただいま~…」
まだ夜の部の診療時間中の為、裏口から入るミラーナさん。
なんか声に張りが無いな。
「ミラーナさん、なんだか元気が無いみたいですけど… 疲れてるんでしょうか?」
アリアさんも気になった様だ。
「夕食の時にでも聞いてみましょう。今は治療に集中です」
「ハイ♪」
私とアリアさんはミラーナさんに違和感を覚えつつも、患者の治療に専念する。
夕食時、ミラーナさんから聞かされた話は私達を驚愕させた。
確定したワケではないが、王妃様と子女の皆さんがロザミアに来るかも知れないと言う。
それだけなら良い。
大勢の護衛も一緒の可能性が高いのだとか。
想定外だよ…
ロザミアにテーマパークを造り、多くの観光客が訪れればロザミアの活性化に繋がり、街が豊かになる。
近隣の街や、その街の領主が観光に訪れてくれる事を期待してテーマパークや観光ホテルを建設したのだ。
ロザミアが〝粗暴なハンターだらけの街〟というイメージを覆す意味もある。
駄菓子菓子… じゃなくて、だがしかし…
王族が来る事までは考えてなかった。
そもそも王族がテーマパークで平民に混じって遊ぶなんて、誰が考えるってんだ?
「で、ミラーナさん… どうするんですか? …って、ミラーナさんがどうこう出来る問題でもない様な気もしますが…」
「う~ん… とりあえず、受け入れ体制を調えなきゃいけないから待ってくれとは言ったけど、そんなに待たせられないよなぁ… 変に日数を掛け過ぎると催促の手紙とかが来そうだし… どうしたモンかなぁ…」
あぁ… キャサリン様って、何故か私の事に関しては妙に積極的だからなぁ…
ロザンヌ様もだけど…
いや、何も理解してないローランド様以外は全員かも。
まさかと思うけど、5人全員ホテルじゃなくて治療院に宿泊するつもりなんじゃないだろうな?
治療院に個人用の部屋は、私の部屋を含めて全部で9部屋在る。
その内、現在使用中なのは5部屋。
まだ幼いローランド様と王妃様は同室だろうから、必要なのは4部屋。
キャサリン様、ロザンヌ様、フェルナンド様は1人1部屋、まだ幼いローランド様は王妃様と一緒の部屋って考えると…
ピッタリ納まるやないかいっ!
…いや、護衛の人達の事を考えると、治療院に泊まるのは不可能かな?
やっぱり観光ホテルに宿泊だろう。
そう思いたい。
てか、思わせてくれ。
「タイムリミットは…?」
「多分だけど、遅くても9月の頭には返事を届けなきゃだろうな… だから、早馬の便を使うにしても、今月中には結論を出す必要があるな」
ミラーナさんの一族なだけに、その場しのぎの案は通用しないだろう。
しっかりとした対策を考える必要があるのは間違い無い。
かと言って、如何にも〝王族御一行です〟なんて大袈裟なモノにも出来ない。
道中はともかく、ロザミアが混乱するのは間違い無い。
貴族や近隣の領主にロザミアを宣伝するだけの筈が、何でこんなに大袈裟な事になってんだ?
…って、テーマパークを建設したのが原因ですか、そうですか。
それって、巡り巡って私が原因なんですね…?
テーマパーク建設を言い出したのは私ですからねぇ…
「仕方無いですねぇ… とりあえず、ロザミアに来るのは了承しておいて下さい。ただし、護衛を最小限に留める事は厳命しておいて下さいよ? でないと、ロザミアが大混乱に陥る事になる可能性が高いですから。後は… 成り行きに任せるしかないかも知れないですね…」
殆ど問題を投げ捨ててる様なモンだが、私達では何も出来ないのが現状なのだ。
王族側に丸投げしてるとも言えるが、こればかりは仕方無いだろう。
だが後日、悩んでいたのがバカらしくなる様な状況を私達は目の当たりにするのだった。




