第81話 胸の話でなんでやねん!
「エリカちゃん、もう明日はロザミアに帰ってしまうのねぇ… 前回より滞在期間が短くて残念ですわ」
私達の滞在最終日の夕食の席、心底残念そうな表情の王妃様。
いや、私としては毎晩の〝お風呂で寄って集って全身を洗われる攻撃(?)〟から解放されて嬉しいんですけど…
「次にエリカちゃんと一緒にお風呂に入れるのは何ヶ月後かしら…?」
キャサリン様、こっちは一緒に入りたくないんですけど…
「正直、私もミラーナ姉様みたいにエリカちゃんと一緒に住みたいですわ… そうしたら毎日エリカちゃんを洗えますのに…」
ロザンヌ様、私の身体を洗う事の何が楽しいんですか?
この際だから聞いてみるか…
「あの~… キャサリン殿下もロザンヌ殿下も… 勿論、王妃陛下もですけど、私の身体を洗う事の何が楽しいんですか…?」
3人は顔を見合せ…
「「「主に声と表情」」」
ハモって答える。
ど~ゆ~意味ぢゃい。
「声と表情って…?」
意味不明なんだが…
「私達が洗って差し上げてる時の恍惚としたエリカちゃんの表情…」
んっ?
「そして、時折漏れる甘い吐息…」
んんっ?
「更にエリカちゃんの官能的な喘ぎ声が…」
ちょっと待てコラ。
「いつ私がそんな表情や声を…」
ハッキリ言うが、全く身に覚えが無い。
「ミラーナ姉上… かんのーてきなあえぎごえとは何ですか?」
素で聞くフェルナンド様。
「あぁ、要するに性的感覚を─」
「説明すなっ!」
すぱぁああああああんっ!!!!
「あ痛っ!」
「子供に何を教えようとしてるんですか! まだ6歳のフェルナンド殿下には早過ぎます! フェルナンド殿下も、今の話は忘れて下さい!」
私はミラーナさんをハリセンでシバき倒し、フェルナンド様には忘却を促す。
「エリカお姉ちゃん、目が怖いよ…」
ひきつった笑顔のフェルナンド様。
あ… いけね、思わず睨み付けてしまった…
「いやねぇ、エリカちゃんったら♪ 冗談ですわよ♪ キャサリンもロザンヌも、悪ノリしちゃって♪」
冗談って…
だったら少しは笑える様な内容に…
「だって、面白そうだったんですもの♪」
だからって、キャサリン様…
「まさか私の一言にフェルナンドが反応するとは予想外でしたけど…」
ロザンヌ様… アンタ、ここに居る女性陣の中で一番若いのに、何ちゅう一言を…
それに、多感なフェルナンド様が知らない言葉に反応するのは当たり前だろうが。
あまり後先考えず口に出すのは血筋なのか?
ミラーナさんも似た様なモンだし…
「エリカちゃん、アタシの事…」
「何も考えてません」
…だから心を読むなっつってんだろが。
「会話に付いていけない…」
「内容がブッ飛んでるって言うか…」
困惑するミリアさんとモーリィさん。
そりゃそうだろ。
風呂には2人も一緒に入ったが、王妃様や王女様達の言う様な内容は全く無かったんだから。
王妃様の意味不明な作り話。
それに悪ノリして話を盛る2人の王女様。
突っ込みを入れようとする私と、疑問に思った事を聞くフェルナンド様。
その疑問にマジで答えようとするミラーナさんを、私がハリセンで黙らせる。
ミラーナさんを叱る私に引き気味のフェルナンド様。
…って、何を解説してるんだ、私は…
「とにかく、笑えない冗談は止めて頂けますか? 特にロザンヌ殿下の一言は、フェルナンド殿下の教育上良くないかと…」
前世でも、そう言った教育を始めるのは10歳頃からだからな。
いくらなんでも、まだ7歳にもならないフェルナンド様には早過ぎるだろ。
「あら、エリカちゃんって真面目と言うか奥手なのかしら? 貴族なら10歳を過ぎたら婚約者候補を募る関係上、早くから性教育を始めますのよ? だから、もうすぐ7歳になるフェルナンドにもそろそろ…」
へっ?
そうなの?
いや、確かにこの世界での成人年齢は15歳だけど…
それにしても、7歳頃から性教育って早過ぎないか?
いやまぁ、前世での常識とこの世界の常識は違うんだろうけど…
確かに、この世界の王族や貴族は早婚多産だけど、前世は晩婚少子化がって…
あぁっ、前世と今世が入り混じってぇええええええええっ!!!!
「エ… エリカちゃん!? 何を悶えてるの!?」
慌てて私の元に駆け寄るミリアさん。
「なんか見てて面白いんだけど…w」
モーリィさん、アンタねぇ…
「あらあら。ここは私に任せて下さいな♪」
言いつつ私の頭を胸に抱き寄せる王妃様。
「ほ~ら、落ち着きなさいな♪ そう言えば、エリカちゃんのご両親って早くに亡くなったんですって? なんなら、私を母と思っても宜しいんですのよ?」
私は王妃様の豊満な胸に顔を埋め、頭を優しく撫でられている。
あ… なんか凄え良い香りがする…
母と思っても良いってか…
でも、王妃様って何歳だ?
どう見ても40代には見えないよなぁ。
仮に15歳で結婚して、16歳でミラーナさんを生んだとしたら…
34歳!?
だったら私の実年齢と8歳しか変わらないんだけど…
いずれにせよ、まだ30代半ばってか?
見た目は20代後半に見える程に若いんだけど…
まだ混乱してるみたいだけど、この柔らかな胸の感触には抗えない…
「う~ん… 私では、お母様の真似は無理ですわね…」
自分の胸を触りながら、残念そうに言うキャサリン様。
いや、10年後に期待ですよ。
「キャサリンお姉様に無理なら、私は…」
やはり自分の胸を触りながら、残念そうな表情になるロザンヌ様。
いやいや、こちらも10年後に期待ですよ♪
「私も… 無理かなぁ…」
ミリアさん…
対抗するなよ…
「私も無理そうだよねぇ…」
モーリィさん…
アンタもかい…
「アタシは… これで良いな。母上みたいに豊満だと、剣を振り回す時に邪魔なんだよ。むしろ、エリカちゃんみたいに絶壁の方が…」
「絶壁って言うなぁああああああっ!!!!」
ずばぁああああああんっ!!!!
そりゃ、私は元・男だ。
言えんけど。
男で胸が絶壁なのは当然だ。
でも、一応は女の子の身体になってるし、今では自分が見た目8~10歳の美少女(?)だという自覚もある。
胸だって微かではあるが、10歳程度の平均的な膨らみにしてあるのだ。
決して絶壁ではない。
そりゃ、申し訳程度の膨らみだけど…
不老不死だから、胸が成長する事も無い。
それで良いんだよ。
下手に豊満な胸にしたら、自分の身体とは思えなくなるから。
自分的に違和感の無い程度の膨らみで良いんだよ。
なんか悲しい気持ちになるのも、気の所為に決まってる。
「エリカちゃん、気にしなくても良いんですのよ? 胸の大きさで女性の価値は決まらないんですからね? 貴女は貴女なんですから♡」
「ハイ…♡」
思わず王妃様を抱き締めて返事をしてしまう。
なんでやねぇえええええええんっ!!!!




