第73話 決戦は間も無く… なのかも…
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「何だ何だぁ!? 手応えが無いなぁ! そんなんじゃ、司令部ブッ壊されちまうぞ! ただでさえ烏合の衆だったのが、単なる雑魚になっちまうぞ!?」
「あははっ♪ もっと抵抗して下さいよ! 貴方達、ゴブリンより手応えがありませんよ! 本気で掛かって来てますか!?」
「ダメじゃん、ダメじゃん! 斬られるのは痛いからイヤだけど、誰にも斬られないってのも面白くないんだけど!? 少しは苦戦させてよね!」
ミラーナ、ミリア、モーリィの3人は、作戦通りに敵の司令部を襲撃する。
が、壊滅させるつもりは無い。
飽くまでも敵部隊を散開させないのが目的なので、適当に暴れてから撤退する。
真の目的は、イルモア王国からの援軍が到着するまでの時間稼ぎなのである。
そして、その目的は間も無く果たされる。
マインバーグ伯爵率いる援軍が、ようやくイルモア王国とブルトニア王国との国境に到着したのだ。
撹乱作戦も、今日1日で終了。
これまでミラーナ達3人の立場は、援軍と言うより遊撃隊扱いだった。
それが明日からはマインバーグ伯爵の部隊に吸収され、正式な援軍として暴れる事になる。
決着の時は近い。
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解せぬ。
それがハングリル王国軍最高司令官であるシュルンマック侯爵の感想だった。
何度考えても納得出来ない。
一時は本気で終戦後の保身のみを考えていた。
そう思うのも無理はない。
1ヶ月前までは優位過ぎる程、ブルトニア軍を圧倒していたのだ。
正確にはルーデンス伯爵軍の伝令兵が2度目の近況報告書を行うまでは、である。
最初の近況報告では、我が軍が敵軍を圧倒していた。
このまま一気にブルトニア王国を陥落させても不思議ではない勢いだったのだ。
それがどうだ。
2度目の報告では戦況が悪化したどころの問題ではなく、逆に此方が壊滅しているではないか。
信じられる話では無かった。
だが、現実に数百人の部隊が文字通りの全滅。
司令官の1人であるルーデンス伯爵は囚われの身となった。
拷問に依って、我が軍の情報はある程度流出したと思って間違い無いだろう。
最悪、全て流出したと考えて今後の作戦を練る必要に迫られていた。
正直言って、自分1人でどうにか出来る問題ではない。
かと言って、他の司令官にも期待は出来ない。
もう降伏しか思い付かない。
だが、現実を知らない本国の判断も期待出来ない。
何もかも投げ出したい気持ちで、各司令官達との今後の方針を決める軍義が開催されたのだった。
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「やっと来やがったか、マインバーグ伯爵。ところで、戦況は聞いているか?」
ミラーナさんが待ちくたびれた様子で椅子から立ち上がる。
強行軍で来た様で、司令部に姿を現したマインバーグ伯爵の顔に疲れが見える。
「お待たせして申し訳ありません。戦況は聞いております。ミラーナ様を相手にしたハングリル軍は気の毒ですな」
ホント、気の毒だ。
この1ヶ月弱、ミラーナさん達3人に蹂躙され続けたのだ。
まぁ、それも明日からは軍と軍との戦いになる。
勿論、ミラーナさん達も参戦するけど。
少なくとも、たった3人に翻弄される戦いでは無くなるのが救いかな?
ミラーナさん達に負ける事には変わりないけど…
「疲れてるのに悪いが、明日からの戦闘について説明したい。エリカちゃんも後方支援で来て貰う事になるから、会議に参加してくれ」
「了解です。救護所も作らないといけませんからね」
そうして私達は司令部の中の会議室へと向かった。
もっとも、重要な案件など何も無い。
せいぜい自分達の軍団が攻める相手を決める程度。
現状、ミラーナさん達3人はマインバーグ伯爵の軍に編入される。
数日以内に全ての援軍が揃うとの事なので、その後はミリアさんとモーリィさんは別の軍の主力として振り分けられる。
ハングリル軍にとって恐怖の対象である3人が、バラけて襲い掛かる事になるのだ。
恐ろしいなんてモンじゃないだろう。
私は後方で負傷兵の治療だ。
敵の矢も届かない。
勝ち戦が見えた中、安全な場所で治療に専念する。
ミラーナさん達には悪いが、私は兵隊ではないので仕方無い。
まぁ、万に一つも無いだろうが、ヤバくなったら戦場を迂回して敵の本部を破壊、司令部を壊滅させてやるだけだ。
本部が無くなれば戦闘継続は不可能だからな。
勿論、これは最終手段。
軍と軍とのぶつかり合いでケリを着けなければ意味が無いのだ。
まぁ、別動隊が本部を襲撃して勝利を得たと言い訳するのも可能だが…
そんなこんなで、5日前後を目処に勝敗を決するという大雑把過ぎる作戦会議は終了した。
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「降伏するなど論外ですな。まだまだ我が軍を含め、ハングリル王国は多数の軍が健在ですぞ?」
「その通り。ルーデンス伯爵の軍は、運が悪かったのでしょう。シュルンマック侯爵の軍もですが、ブルトニア軍を過小評価していたのではありませんかな?」
「援軍が来たのだとしても、我等ハングリル軍を圧倒する程ではありますまい。せいぜい互角か、少しばかり多い程度でしょう。ならば、鍛えぬいた精鋭を投入すれば攻略するのも難しくありますまい」
シュルンマック侯爵は苦虫を噛み潰した様な顔で会議の様子を眺めていた。
(どいつもこいつも、現実を知らないクセに好き勝手言いおって… ハングリル王国の中でも最大級の兵力を誇る私の軍が、たった3人の女剣士に赤子の手を捻るが如く翻弄されているのだぞ! そんな程度の認識しか持たぬ貴様達の軍など、アリの様に踏み潰されるのがオチだ!)
だが、もう降伏するしか無いと思っているシュルンマック侯爵は何も言わない。
黙って会議の様子を眺めているだけだった。
言ったとしても、誰も信じないだろう。
ならば勝手にさせ、自身の軍が壊滅する様を見ていれば良いのだ。
その時は嘲笑ってやる。
絶望の表情を浮かべる連中に、『だから言ったであろう。降伏すべきであると。その忠告を無視した結果がこれである。己の無知・無謀を恥じよ!』と、言ってやるつもりだった。
そしてそれは、数日後に実現するのだった。
シュルンマック侯爵は、自身の軍を撤退させる事に決めていた。
この数日の戦闘で、軍全体の半数以上が死亡か戦闘不能になっていた。
満足に戦える状態ではない。
その事は、会議に出席している将校も認めていた。
だが、彼等はその事も軽視していた。
ルーデンス伯爵の軍も、シュルンマック侯爵の軍も、運が悪かっただけなのだと思い込んでいた。
それが後の悲劇を生む事になるとは夢にも思わず。
結局、現状でハングリル王国の行く末を正しく見据えていたのはシュルンマック侯爵ただ1人と言う事だった。
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「だいたい、こんなモンだな。とりあえず援軍が揃うまで、アタシ達3人はマインバーグ伯爵の軍で適当に暴れる事にする。他の連中は負傷に気を付けて、アタシ達の退き際をフォローするだけで充分だな」
「ミラーナ様達だけを突入させるワケにはいきますまい。私の軍からも突入させましょう。その方が、より相手に警戒させる事になります。適当に我が軍を警戒させておいて、援軍が揃い次第ミリア殿とモーリィ殿を別の軍に編入。3方向から暴れて頂きましょう。同時に全軍を多方面から戦線に送り込みます。数的には互角でしょうが、戦闘能力が全く違います。数日と経たずに敵は降伏を申し出るでしょうな」
私が口を出す事もなく、何の問題も無いであろう戦略が立てられる。
不老不死のミラーナさん達3人が参戦した時点で勝敗は決したも同然なのだ。
後は敵が降伏するまで戦闘継続するだけだ。
「何の問題も無さそうですね、ミラーナさん以外は…」
「エリカちゃん! ど~ゆ~意味だよ!?」
「説明しなくても理解してるんじゃありませんか? 私が抑止力にならなきゃ、ミラーナさんが暴走しそうですしねぇ?」
会議室に居る面々は互いに顔を見合せ…
一斉に頷いたのだった。
「ちょっ…! お前ら! なんでエリカちゃんが居なけりゃアタシが暴走すると思ってんだ!? 今までだって暴走しなかっただろ!?」
一同は、再度顔を見合せ…
代表してマインバーグ伯爵が口を開く。
「いや… 後方にエリカ殿が居たからこそ、ミラーナ様は暴走を思い止まっていたのではありませんかな? 意外にエリカ殿がミラーナ様の抑止力になっていたのは知られていますぞ? ですので、此度のミラーナ様の参戦にエリカ殿が同行していると聞いて、安心した将校は多いと聞き及んでおります」
マジか…
私はミラーナさんの保護者かよ…
別に良いけど…
だが、過剰な期待はしないで欲しい。
でもまぁ、一応安心させておいてやるか。
「完全に止められるかは確約出来ませんけど、私が認識した範囲でならミラーナさんの暴走は止めましょう。この『改良型ナッシュ仕様ハリセンMARKⅡ』を、更に改良した『ミラーナ仕様ハリセン』で!」
「ちょっと待ったぁあああああっ! 何だ、その『ミラーナ仕様ハリセン』ってのは!?」
「対ミラーナさん専用のハリセンです♪ さっきも言いましたけど、つい最近までの最新型だった『改良型ナッシュ仕様ハリセンMARKⅡ』を更に改良した物でして… ハリセンからの衝撃は勿論ですが、ハリセン自体が受けた衝撃を倍に反射して対象にダメージを与える… 簡単に言えば、今までの数倍の威力でミラーナさんをシバけるって事ですね♡」
当事者であるミラーナさんは、少し考え込み…
「頼むからアタシには使わないでくれ…」
と、懇願した。
勿論、確約は出来ない。
全てはミラーナさん自身の行動・言動次第なのだ。
そして会議と言えない様な会議は終わり、翌日からの決戦に向けて各々睡眠を取るのだった。
今はシリアス(?)な展開ですが、たまにはこんなのも良いかな?と思って書いてみました。
近日中に、通常のコメディー路線に戻ると思います。




