第64話 治療院の中と外では対照的な結果になりました
なんだかんだで不老不死になったミリアさんとモーリィさんは、早速ギルドに辞表を提出。
マークさんは驚いたものの、ギルドを辞める理由がハンターに戻る事と知ったら納得していた。
そして2人はミラーナさんとパーティーを組み、ハンターとしてのキャリアを再スタートさせた。
2人はCランクハンターだが、なんとミラーナさんはAランク。
元々王女である彼女に国の義務を負う覚悟は出来ていたので、義務が生じるBランク以上に昇進するのに抵抗は無かった。
…にしても、僅か16歳でAランクになっていたとは…
まぁ、ミラーナさんのバケ… 超人的な身体能力を考えれば、当然と言えば当然か。
「エリカちゃん。今、変な事を考え…」
「考えてません」
そして、この勘の鋭さ。
物忘れが多くて何処か抜けてるワリに、妙な所で私の思考を読んでくる。
天然なのか、ワザとなのか…
普段は破天荒なワリに繊細な一面──主に戦闘関係──もあり、未だに理解し難い人である。
「そんな事より、今日は3人揃っての初仕事なんでしょ? ミリアさんとモーリィさんにはブランクがあるんですから、しっかりフォローしてあげて下さいよ?」
「それは任せてくれよ♪ 多分だけど、2人に出番は無いんじゃないかな?」
「それじゃ意味が無いでしょうが! 勘を取り戻す意味でも、当分の間ミラーナさんは2人のフォローに徹して下さい!」
何年ブランクがあるのか知らないが、2人の勘が鈍っていれば余計な危険を招く事になりかねない。
まずは勘を取り戻して貰う事が最優先だ。
その為にも、しばらくミラーナさんにはフォローに徹して貰い、メインで動くのはミリアさんとモーリィさんにしなければならない。
魔物との戦闘ならば尚更だ。
「え~… それじゃアタシが活躍…」
「しないで下さい! 少なくとも、ミリアさんとモーリィさんが勘を取り戻すまでは!」
ガックリと項垂れるミラーナさん。
仕方無えだろ。
アンタを自由にさせたら、2人は寝てても殆どの依頼は達成出来るんだから。
そんなの、ハンターに戻った意味が無えだろ。
「とにかく! 当分の間、ミラーナさんは前面に出ないで下さい! ミリアさんとモーリィさんに勘を取り戻して貰わないと、2人に危険が及ぶのは勿論ですけど、ミラーナさんも危険な状態になる可能性があるんですからね!? ちょっとした怪我を治療するならまだしも、瀕死の皆さんを治療したくはありませんから!」
「いや… アタシ達、不老不死なんだけど…」
そ~ゆ~問題ぢゃ無えだろ!
そう思って私が〝改良型ナッシュ仕様ハリセンMARKⅡ〟を出すと…
「待った! 解った! 我慢する! 2人のフォローに徹するから、そのハリセンは止めてくれ!」
うん、このハリセンの破壊力はミラーナさんでもビビるみたいだな♡
なにしろ、使用している厚紙は通常の3倍の厚さ。
更には衝撃を逃がさない特殊な樹脂を染み込ませてあり、非力な私でも一撃でミラーナさんを昏倒させる事が可能なのだ。
先日、このハリセンをマトモに食らったミラーナさんが警戒するのも無理はない。
「じゃ、2人のフォローをお願いしますね♪ 2人が慣れるまでは、絶対に無茶はさせない事! 約束ですから守って下さいよ? 守らなかったら…」
「分かってる! だから、そのハリセンは…」
私が異空間収納にハリセンを入れると、ミラーナさんは安堵の表情を浮かべる。
「じゃ、ミリアさんとモーリィさんは、ミラーナさんがフォローに回ってくれますから安心して討伐依頼でも何でも受けて下さい♪ アリアさんは引き続き、治療院での治療見学と医学の勉強です♪」
「「「分かりました♪」」」
「はぁ~い…」
アリアさん、ミリアさん、モーリィさんの3人は元気良く返事し、ミラーナさんだけが不満そうな返事。
我慢しろよ。
アンタが前面に出たら、2人は単なる〝お飾り〟とか〝付き添い〟にしかならね~だろ。
元がCランクハンターとは言え、ブランクが長いんだから実質Dランク、下手すりゃEランクまで感覚が落ちてるかも知んね~だろが。
無能な味方は、有能な敵より怖いんだぞ?
味方のヘマで死にたくないだろ。
不老不死だから死なないけど…
そんな事をミリアさんやモーリィさんには聞こえない様に話すと、ミラーナさんは納得してくれた。
「なるほどな。だからこそ、アタシはフォローに徹する必要があるって事か」
「そ~ゆ~事です。判断はミラーナさんに任せますが、2人が大丈夫だと思ったら自由に暴れて貰って構いません。ただし…」
「分かってるよ。2人が勘を取り戻しても、アタシばかりが魔物とかを倒しまくるなって事だろ?」
よしよし、理解している様で安心かな?
こうしてミラーナさん達3人は依頼を求めてギルドへ出掛けた。
アリアさんは私の治療を見学しながら勉強だ。
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「解りますか? この部分が炎症を起こしてるんですよ。私のと比べて見ると、より解り易いと思いますよ?」
「なるほど… 確かにエリカさんのとは違いますね。解り易いです♪」
待合室にアリアさんの医学勉強の協力を求める貼り紙をし、了承してくれた患者さんに限り、私が治療しつつ講義を行っている。
今のところ断る患者さんは居ないので、アリアさんの勉強は驚く程捗っている。
「俺にゃ見えないけど、炎症が原因で肩が痛かったのか。俺にも勉強になるなぁ」
「皆さんが協力してくれるんで、私の勉強も捗ります♪ 本当にありがとうございます♪」
アリアさんも嬉しそうだ。
皆、親切だなぁ♡
「これだけ皆さんが協力してくれるのは、やっぱりエリカさんが信頼されてるからなんでしょうね♪」
そうなんだとしたら、私も嬉しいな♡
一生懸命治療してる甲斐があったかな?
「皆、エリカちゃんのお陰で仕事が出来るんだ。礼を言うのは俺達の方だよ♪」
「そう言って貰えると嬉しいですね♪ でも、無茶はしないで下さいよ? 怪我しないのが一番なんですから♡」
こんなやり取りを交えつつ、アリアさんの勉強は順調に進んでいる。
とまぁ、こっちは良い感じなんだが、ミラーナさん達は大丈夫なんだろうか?
ミリアさんやモーリィさん、勘が戻ってないのに無茶してないだろうなぁ…
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「ただいま~♪」
「「ただいま~…」」
元気に帰って来たミラーナさんと対照的に、疲労困憊といった感じの2人。
やっぱりブランクがある所為なんだろうか?
「お疲れ様でした♪ 久し振りのハンター活動はどうでしたか? ミラーナさんは退屈しませんでした?」
「アタシはそれなりに動けたから、退屈はしなかったな。けど、2人は…」
グッタリした様子でソファーに座り込む2人。
久し振りとは言え、そんなにキツかったんだろうか?
まぁ、つい先日までギルドの受け付け嬢だったから、運動量的にはキツいんだろうけど…
「だってぇ~… いきなり討伐依頼だよ? それもオーガの~…」
「強い魔物を相手にした方が良い刺激になるからって、ミラーナさんが… せめてゴブリン程度にして欲しかったんだけど…」
…いきなりオーガって…
そりゃ、いくらなんでもキツいだろ…
2人共、よく無事だったな…
「あの… オーガって、熟練のハンターなら3人居れば倒せますよね? お2人はブランクがあるとは言え、Cランクなんですよね? そこにミラーナさんが加われば問題無いと思いますよ? どうしてそんなに疲れてるんですか?」
アリアさんが疑問を口にする。
だよなぁ…
仮に2人がメインで戦い、ミラーナさんは2人が危なくなった時だけフォローに回ったとしても、こんなに疲れるとは思えないんだけど…
「だってぇ~… オーガ5体が相手だよぉ~…」
「ブランク明けに、それはキツいって言ったんだけど… 強引に…」
…………………………
「でも、言った通り良い刺激になったろ? 明日からもこの調子で…」
すぱぱぁああああああああんっ!!!!
「あだぁっ!!!!」
ミラーナさんの顔面に私のハリセン、後頭部にアリアさんのハリセンが炸裂する。
「2人が慣れるまでは、絶対に無茶はさせない事って言ったでしょうがっ!!!! 何を聞いてたんですかっ!!!!」
「それ、私も聞きました! 忘れたとは言わせません!」
蹲るミラーナさん。
そりゃ〝ナッシュ仕様ハリセン〟と〝改良型ナッシュ仕様ハリセンMARKⅡ〟に挟み撃たれたんだからな。
「ゴメン… オーガと戦えるのが嬉しくて… 忘れてた…」
マジで健忘症なんじゃ無えだろうな、コイツ…
「そんなに忘れ易いんなら、身体で覚えて貰いましょうか? 今日の夕食、罰としてミラーナさんは無しにしますね♡」
「そ… そんなぁ…(泣)」
泣くんなら忘れんなよ…
まぁ、これで少しは物覚えが良くなるだろうと思いたい。
念の為、ミリアさんとモーリィさんには魔法の言葉(?)を教えておいた。
『また夕食抜きになりますよ?』
この言葉は実に有効だった様で、ミラーナさんが2人に無茶振りする事は完全に無くなったそうである。
ミラーナさんにメシ抜きって、ハリセンより有効なんじゃないか?




