表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/243

第61話 自分を基準に考えるのはダメですね

 アリアさんの特訓は()(こく)そうだ。

 慣れるまでの(あいだ)だけという条件で受け付けを無くし、以前と同じ様に私が患者を呼んでいる。

 アリアさんは私の後ろで治療を見学する間、(とう)()能力を常時発動している。

 しばらくすると、アリアさんは廊下に出て2階へ上がる。


「アリアちゃん、どうしたんだい?」


「いえ、彼女には色々用事があるんですよ♪」


 人間の内部を見るのに慣れる訓練をしているとは言えないので誤魔化す。

 多少慣れてきたとは言え、まだ2~3人(ごと)に2階のトイレに駆け込んでいる。

 患者さんに不信感を(いだ)かせない為に、廊下に出るまでは走らない様に言ってある。

 階段は走っても良いが、静かに(のぼ)る。

 アリアさんは胃の中の物を吐き出し、フラフラしながら階段を()りて来る。

 しかし、治療室に入る時はシャキッとしている。

 これも患者さんを不安にさせない為に、私が(げん)(めい)している事だ。

 かなりキツいと思うが、真面目な性格のアリアさんは言い付けを(けん)(めい)に守っている。





「具合はどうですか? 最初から無理しないで、夜の部は受け付けしてても()いですし、休んでても()いですよ?」


「正直言ってキツいです… けど… 慣れたら平気なんですよね? 少しでも早く慣れたいんです…」


 やっぱり真面目だなぁ。

 なんとかしてあげたいけど、こればっかりは慣れて貰うしかないからなぁ…


「お昼、どうします? 私は街の食堂街にでも行って食べようかと思ってますけど」


「私は………」


「無理しなくて()いですよ?」


「いえ、ご一緒させて下さい。これも慣れる為の修行だと思ってますから」


 思い込んだら(いち)()なのかな?

 気負(きお)い過ぎてなきゃ()いんだけどなぁ。


「アリアさん。医学の勉強も本格的に始まってませんし、(あせ)らなくても()いんですよ? 一気に慣れようとして身体(からだ)(こわ)しでもしたら、余計に時間が掛かるし勉強も(はかど)りませんよ?」


「う………」


「ですから今後の方針として、夜の部は受け付けするか休んで下さい」


 休む事も大切だからな。

 (こん)を詰め過ぎると、(かえ)って逆効果だし。


「でも、休むと言っても何をすれば…」


「じゃ、図書館にでも行って医学書を読んだらどうですか? 解剖図なんかが()ってるとは思いますが、実物より絵の方が気分もラクでしょうし」


 考え込むアリアさんを誘い、私達は食堂街へ向かった。





 ───────────────





「どうですか? それなら今のアリアさんでも無理せずに食べられるでしょ?」


「ハイ♪ それに、とっても美味(おい)しいです♡」


 現状、アリアさんが固形物を食べても胃が受け付けないと思った私は、スープの種類が多くて美味しい店をチョイスした。

 いや、他の店も美味(おい)しいんだよ?

 ()()()()()()()()()って事で選んだだけだからね?


「早くエリカさんみたいに、普通に食事できる様にならないといけませんね」


 慣れるまでの辛抱(しんぼう)だけどね。

 まぁ、慣れるまでの期間は人それぞれだけど…

 ついでなので気になってた事を聞いてみるか。


「ところで、私からアリアさんに質問があります。アリアさん、私の作った肉料理食べましたよね? 私の中ではエルフって菜食主義(ベジタリアン)ってイメージなんですけど、違うんですか?」


「それ、アタシも聞きたいな。実は気になってたんだよね」


 うをっ!?

 ミラーナさん、いつの間に!


「あぁ、驚かせたかな? ギルドへ行く前に何か食べようかと思ってさ。どの店にしようか考えてたら、2人が見えたんで来ちゃったよ♪」


 それは()いけど、気配を完全に消して来るなよ。

 オマケにドアに付いてるベルも鳴らさないなんて、アンタは暗殺者(アサシン)か…


「肉を食べるエルフも居れば、食べないエルフも居るってトコですね。人間社会に(かか)わりたくない(はい)()(てき)なエルフは食べない、と考えて貰っても()いかと思います」


 (はい)()(てき)かぁ…

 人間にも居るけど、エルフにも居るんだな…


「そんな考え、私には全く無いので普通に食べますね。人間の(さい)(しょく)(しゅ)()とエルフの(さい)(しょく)(しゅ)()は根本的に違うと思います。()くまでも私の考えですが」


「まぁ、人間の(さい)(しょく)(しゅ)()って、基本的に健康を考えての(さい)(しょく)(しゅ)()ですからね。エルフの(さい)(しょく)(しゅ)()が何を基本にしてるかは知りませんが、(おお)(すじ)でアリアさんの考えは間違ってないと思いますよ?」


 健康志向から菜食主義(ベジタリアン)になる人は意外に多い。

 羊の肉を食べてる時に子羊を見てショックを受け、肉食を()めて菜食主義(ベジタリアン)になった超大物ミュージシャンの奥さんが居たな。

 旦那さんのミュージシャンも、その影響で菜食主義(ベジタリアン)になってたが…

 誰とは言わんが、元・世界的に有名な4人組バンドのメンバーの1人とだけ言っておこう…


「偏見を持ってるエルフって多いんですよ。全ての人間が悪い人間じゃないのは明白なんですけど…

人間=悪。

エルフ=善。

なんて、バカげた思考のエルフって多いんですよねぇ…」


 それは人間も同じだな。

 肌の色が違うだけで、優劣を付けたがるクズも居るし…

 勿論、私にそんな考えは無い。

 肌の色が白いから優れている、肌の色が黒いから劣っている…

 正直、アホかと思う。

 そんなモンで人間の優劣が決まるワケ無かろうが!


ふぉへはわかふ(それは解る)ファカファカひいへほ(バカバカしいけど)ひんへんひほ(人間にも)ひはほうは(似た様な)ふぉふぉ()()ひゅうひゃふ(言うヤツ)ひふふぁははぁ(居るからなぁ)


 ミラーナさん、食いながら(しゃべ)るなよ…

 何を言ってるのかサッパリ分からないだろ。


「そうなんですね? エルフだけの考えじゃないって判って安心しました♪」


 通じたんかい。

 エルフ特有の固有能力(ユニーク・スキル)じゃ無かろうな。

 それはともかく、この様子だと夕食は普通に食べてくれるかな?


「まぁ、夜の部の診療時間、アリアさんは図書館で医学の勉強ですし、ミラーナさんも精神的ダメージからは回復してるみたいですね?」


「…………………」


「…………………」


「だから今日の夕食は、より精力を付けて貰う為にも肉をタップリ使った()()()()()()を考えてるんで、楽しみにしてて下さいね♡」


 すぱぱぁああああああああんっ!!!!


 私の後頭部にはミラーナさんの、顔面にはアリアさんのハリセン・チョップが炸裂した。

 なんで…?


「そんな簡単に回復するワケないだろ!」


「まだマトモに食べれませんし、食べても嘔吐(もど)すのがオチです!」


 なんかスイマセン…

 自分を基準に考えてました…


 その日の夜の部の診療は、顔面にクッキリ残ったハリセンの(あと)を患者さんに突っ込まれながら行いました(泣)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ