第59話 歓迎会という名の突っ込み大会?
私達は、アリアさんを登録する為にギルドへやって来た。
まずはギルドマスターのマークさんに紹介だ。
「ほぅ、エリカちゃんの所で働くのか」
「はい♪ アリアと言います。見ての通り、エルフです」
ざわつくギルド内部。
今のアリアさんは、治療院に来た時と違ってフードを被っていない。
下手に正体を隠すより、最初からバラした方が揉めないだろうとの考えだ。
「マークさん、ダメって事は無いよな? ギルドの規則に、人間以外の種族は登録不可なんてのは無かったと思うし」
ミラーナさんが確認する。
「あぁ、それは大丈夫ですよ。勿論、ロザミアでは初めての事ですけどね。念の為、王都のギルド本部に問い合わせてはみますが」
だとすると、結果が判るのは早馬を使ったとしても半月は掛かるかな?
往復10日、王都で結果が出るのに何日掛かるか次第だけど…
「なので、結果が判るまでは仮登録にしておきましょう。本登録は結果次第ですが… で、エリカちゃんの所で働くって事は、その娘も魔法医なんですか?」
「いや、アリアちゃんは受け付けする事になってる。エリカちゃんが医学を教えて、最終的には魔法医を目指すんだけどね」
まぁ、それは先の話。
何年掛かるかはアリアさんの頑張り次第だからね。
問題は魔力。
最大魔力容量次第では魔法医になる事は出来ても、私と一緒にってのは諦めなければならない。
私と一緒に魔法医として働くなら、1日100人程度は治せるだけの魔力量は持ってて欲しいけど…
「ふむ… それなら…」
マークさんは私をチラッと見る。
多分、私と同じ事を考えてるんだろう。
私はマークさんに頷く。
「仮登録のついでに魔力量を測るとしようか。一緒に執務室まで来て貰えるかな?」
例のオーブだな。
私達3人はマークさんと一緒に執務室へ向かう。
「少し、ここで待っていてくれ。すぐ戻る」
言ってマークさんは奥の部屋へ。
待つ事しばし。
マークさんがオーブの乗った台を持って来た。
「じゃ、アリアちゃん。このオーブに触れてみてくれ。それで大体の魔力量が判るから」
アリアさんがオーブに触れる。
次の瞬間、かなり眩しい光が執務室に広がる。
光が収まると、そこには先程と変わらないオーブがあった。
「なるほど、かなりの魔力量だな。これなら将来、エリカちゃんと一緒に魔法医として働くのに充分だろう」
「本当ですか!?」
心底嬉しそうなアリアさん。
「なぁ♪ アタシも測って良いかな? てか、測らせてくれよ♪」
マークさんに詰め寄るミラーナさん。
子供か、アンタは…
「構いませんよ? どうぞ」
ルンルン気分でオーブに向かうミラーナさん。
子供だなぁ…
いや、見た目が子供の私が言うのも何だけど…
ミラーナさんがオーブに触れると、眩しい光が執務室に広がる。
が、アリアさんには及ばない様だ。
光が収まると、そこには落ち込むミラーナさんの姿。
「アリアちゃんには及ばなかったか…」
対抗心、燃やしてたんかい…
「まあまあ、ミラーナさん。これで落ち込んでちゃ、いけませんよ。これで落ち込む様なら、エリカちゃんのを見たら再起不能ですよ?」
マークさん…
余計な事を言うなよ…
「そうなのかい? てか、エリカちゃんって、そんなに凄いのか? じゃあエリカちゃん、オーブに触ってみてくれよ。どんなに凄いか見てみたくなったよ」
ほらぁ…
こうなると思ったんだよ…
「私も見てみたいです♪ エリカさんが凄いのは噂でしか聞いた事がなかったので、是非この眼で見てみたいです♪」
チラッとマークさんを見るが、何も気にしていない様だ。
その眼は『どうせ直してくれるだろ?』と、語っている。
仕方無いなぁ…
「じゃあ、触りますね」
言いつつ私はオーブに触れる。
瞬間、とてつもない光が執務室に広がる。
「「うわわわわわわっ!!!!」」
ミラーナさんとアリアさんの驚きの声がハモる。
何が起こるか知っているマークさんは、予め眼を手で覆っていた。
勿論、私は最初から眼を閉じている。
しばらくして光が収まる。
「何だったんだ、今のは!?」
「何が起きたんですか!?」
2人は眼を擦りつつ、ゆっくりと眼を開ける。
そこには、砂状になった元オーブが在った。
「えっ……………?」
「これ… は………?」
呆然と元オーブを見詰める2人。
まぁ、当然の反応かな?
かつてのマークさんとミリアさんも、似た様な反応だったし。
「これがエリカちゃんの魔力量ですよ。俺も最初は信じられませんでしたが、ロザミアでの活躍や王都での活躍を聞けば、誰でも納得ですよね」
何故、遠い眼をするんだ、アンタは…
「じゃ、エリカちゃん。オーブを宜しく」
「は~い♪」
言って私は元オーブに手を翳す。
元オーブは光に包まれ…
光が収まると元のオーブに戻っていた。
「はぁ~… やっぱりエリカさんは凄いです♡」
だから恍惚とするな。
アリアさんは恍惚とし、ミラーナさんは更に落ち込んだ。
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「これでも結構、自信あったんだけどなぁ… エリカちゃんにはともかく、アリアちゃんにも負けるなんてなぁ…」
ブツブツ言うミラーナさん。
仕方無いよ。
そもそもエルフの最大魔力容量自体が人間より多いんだから。
「なにか… スイマセン…」
「あ… いや… アリアちゃんは何も悪くないから気にしなくても良いんだよ!? むしろアタシが調子に乗ってたって言うか、その…」
ミラーナさん、上には上が居るって理解したみたいだな…
「まぁ、ミラーナさん。そんな事より歓迎会なんですから、楽しくやりましょうよ♪ 魔力で負けたって良いじゃないですか。ミラーナさんには誰にも負けない身体能力があるでしょ?」
「えっ!? ミラーナさんって、身体能力凄いんですか!? 王女様だからてっきり…」
ひ弱だと思ってたってか?
そんな可愛らしい人なら、私は苦労してませんよ。
「エリカちゃん? 今、何かアタシを貶める様な事…」
「考えてません」
私の心、読んでんのかアンタは…
「それはともかく、好きなだけ飲んで食べて下さいね♡ 遠慮なんて要りませんから♡」
「そうそう♪ アリアちゃんも、今日からアタシ達の家族だからな♪ 遠慮は要らないよ♪」
アンタは少し遠慮しろ。
私とアンタの割り勘とは言え、何杯飲んでんだ?
この呑兵衛が。
「エリカちゃん、今…」
「気にしちゃいけません」
要らんトコだけ勘が鋭いな、この女…
「…まぁ、良いや。アリアちゃん、医学に関しちゃエリカちゃんに教われば問題無いと思うよ? 王都から連れて来た魔法医連中でさえ、エリカちゃん1人に敵わなかったんだからさ♪ アリアちゃんの頑張り次第では、何年も経たない内にエリカちゃんと肩を並べるんじゃないかな?」
だな。
最大魔力容量は申し分無いし、知識と技術を磨けば私と同等の魔法医に成れそうだ。
期待の大型新人って感じかな?
「て~事で、やっぱりここの払いはエリカちゃんだな♪」
それとこれとは話が違うわいっ!
「なんでやねんっ!」
「どさくさ紛れに何を言ってるんですかっ!」
すぱぱぁあああああああんっ!!!!
何の打ち合わせも無く、私とアリアさんのハリセン・チョップがミラーナさんの顔面と後頭部に炸裂する。
前後から挟み込まれる形でハリセンを食らったミラーナさんはダウン。
とりあえず支払いをダウンしたミラーナさんに押し付け、私とアリアさんは逃げる様に治療院へ帰ったのだった。
勿論、私の支払い分は後から渡しましたよ?




