第5話 魔法医になれました!
感想で『治療したときにギルドの人達が何に驚いているのかわからない』との一言がありましたので、状況説明を追加しました。
他の皆様も、気になる部分があれば遠慮無く書き込んで下さると嬉しいです。
「こんな小さな子供が魔法医だと!?」
朝になり、部屋から出た私は早速受け付けへと向かったのだが、ミリアさんから話を聞いたギルドマスターの第一声がこれだった。
まぁ、普通はそう思うよな。
ギルドマスターは口髭を生やした赤毛の細マッチョで、身長も高い。
今の私の身長──130cm──から考えると、180cmを超えているだろう。
年齢は40代半ばって感じかな?
「エリカ・ホプキンスと言います。ミリアさんから話を聞いて頂いたと思いますが、医学知識と魔力はあります。ですが天涯孤独の身の上で、このままでは生活していけません。ですので魔法医として働ける様、ギルドに登録して貰えないでしょうか?」
私は顎の少し下で両手を握りしめ、困った表情でギルドマスターを見つめる。
「事情は分かるんだが、こんな小さな子供を登録するのはなぁ…」
どうやら頭が少々固い人らしい。
じゃあ、ここは不老不死設定を活かして…
「私、見た目は子供ですけど、不老不死なんで実年齢は24歳ですよ?」
「「「なにぃいいいいいいい!!!!」」」
ギルドマスターだけでなく、その場に居た全てのハンターの皆さんも同時に叫ぶ。
あ、やっぱり意外だったか。
でも、本当に24歳なんだから仕方無い。
一応、前世での私の年齢だけど、別に嘘じゃ無いから。
「8~10歳ぐらいだと思ってたのに… マジかよ…」
「俺より5歳も年上?」
「俺の息子と同い歳じゃねぇか…」
等々、そこかしこからざわめきが聞こえる。
「う~ん… にわかには信じられんが…」
困惑するギルドマスター。
「そこまで言うなら登録は許可しよう」
「ありがとうございます!」
私は深々と頭を下げる。
「ただしだ… 規則ってのもあるし、言ってる事が本当かどうかは確かめさせて貰う」
あ、やっぱり試験か何かあるのかな?
「そうだな…… おい、ザック!」
少し考えてギルドマスターは一人の男を呼ぶ。
ザックと呼ばれた若い男は右足を引きずっていた。
「エリカと言ったな? こいつの右足を治す事が出来たら魔法医として登録を許可しよう」
「分かりました。じゃあザックさん、この椅子に座って下さい」
椅子に座ったザックさんの右足を見てみると、膝の裏から足首にかけて大きな傷がある。
最近出来た傷の様だ。
「ホーン・ベアにやられてな」
ザックさんは悔しそうに言う。
ホーン・ベアとは、角の生えた熊を想像して貰えれば良いと思う。
普通は4~5人、熟練ハンターでも2~3人で協力して倒す様な凶暴な熊だとか。
運悪く一人で薬草採取をしている最中に出会したらしい。
逃げる時に膝の裏に爪が深々と刺さり、足首まで引き裂かれたそうだ。
幸い、近くに別のハンター達が居てくれたので大事には至らなかったのだとか。
私は目に力を込めて患部を診る。
すると内部組織がハッキリ見えた。
実は今朝、まだ薄暗い内に目が覚めたので診察に必要と思われる能力を魔法で付与しておいたのだ。
この患部を透視する能力もその一つ。
レントゲンもCTスキャンも無い世界では、こういった能力は必須だ。
「うん、膝の靭帯が切れてますね」
足首までの傷自体は見た目より酷くないのだが、靭帯が切れているのはハンターとしては致命的だろうな。
「じんたい?」
あ、この世界じゃ医学もそこまで発展してないのか。
私は靭帯について簡単に説明し、魔法で切れた靭帯を修復する。
ついでに表面的な傷も。
「これでもう大丈夫ですね。右足だけでジャンプしてみて下さい」
「えっ…? あ、あぁ…」
ザックさんはクセになってるのか椅子を支えにして立ち上がり、今まで動かなかった右足で恐る恐るジャンプする。
勿論、何の問題もなくジャンプ出来たのだが…
「「「おおっ!」」」
ギルドマスターにザックさん、周りで治療を見ていた人達が一斉に驚きの声を挙げる。
そりゃ、驚くかな?
ザックさんの右足は、今の今まで動かなかったんだから。
「ハイ、これでもう大丈夫ですね。すぐにでもハンターとしての仕事が出来ますよ♪」
呆然と見つめていたギルドマスターが、ハッとして私に話し掛ける。
「エリカ… ちゃん、と言って良いかな?」
「ハイ、構いませんよ?」
そう言うと、ギルドマスターはニコニコしながら…
「エリカちゃんのギルドへの登録を認めよう。手続きをするから一緒に来てくれ」
「分かりました」
ギルドマスターはミリアさんを見て…
「ミリア、お前も担当したんだから一緒に来い」
「あ、ハイ。分かりました!」
そして三人でギルドマスターの執務室へ向かった。
これで晴れて魔法医になれそうだし、生活費は問題無しかな?