第58話 新たな仲間と落ち込むミラーナ
「どうするんだい?」
「どうしましょうかねぇ?」
私とミラーナさんは、エルフのアリアさんについて、リビングで話し合っている。
ちなみにアリアさんは食事の後、早々にお風呂に入り、早くもミラーナさんの向かい側の部屋で眠っている。
まぁ、疲れてたみたいだし…
とにかく私と一緒に働きたいと言うアリアさんをどうするかで、私もミラーナさんも悩んでいるのだ。
「明日は休診日だろ? じっくり話を聞くしか思い付かないなぁ…」
「まぁ、それしか無いんでしょうけど…」
「とにかく他に何も思い付かないし、明日は3人で話し合うとするか…」
私もミラーナさんも、どう対処したら良いか判らず、結局アリアさんの話を聞く事で落ち着いた。
いや、他にどうしろと?
明けて翌日、まずは朝食を食べながら話す事に。
勿論、最初は幻覚を見てからだけど…
「で、エリカちゃんと働きたいって事だけど、何が出来るんだい? え~と… アリアちゃん? さん?」
「好きに呼んで頂いて結構ですよ? 私の見た目、どう見ても13~14歳にしか見えないですから。成人してるとは思われませんし…」
「えっ? じゃあアリアさんって何歳なんですか? もしかして成人してるんですか?」
そう言えば、エルフって人間に比べてかなり長寿だった様な…
「あはは♪ 誰も信じてくれませんけど、こう見えて150歳超えてるんですよねぇ…」
「150歳!? 超えてる!?」
驚きまくるミラーナさん。
もしかして、エルフが長寿なのを知らなかったのかな?
「150歳を超えてるんですか~… まぁ、私は見た目が8~10歳程度なんで、私はアリアさんって呼びますね♪」
「ちょっと、エリカちゃん!? 何、落ち着いてるんだよ! どう見ても成人前なのに150歳超えてるんだよ!? あり得ないだろ!?」
やっぱり知らないんだな…
「ミラーナさんこそ落ち着いて下さい。アリアさん、エルフなんですよ? 人間と比べてかなり長寿の種族です。正確な寿命は私も知りませんけど…」
「へっ? そうなの?」
私の事を世間知らずみたいに言ってたけど、ミラーナさんも似たり寄ったりじゃん♪
「私の記憶ですと、確かドワーフなんかも長寿の種族ですね。人間は長く生きても100歳前後ですけど、エルフやドワーフなんかは人間の10倍は長く生きるんじゃないですかね? ハッキリとは知りませんけど」
「その認識で良いと思います。記録では、2000歳ぐらいまで生きたエルフも居たらしいですね」
「そうだったのか… 知らなかったよ…」
脱力するミラーナさん。
「ミラーナさん、脱力してると食事が冷めますよ?」
言いつつ私は食事を続ける。
「なんでエリカちゃんは平気なんだ? 150歳とか、2000歳まで生きたって聞いて…」
「だって私達、不老不死じゃないですか。何千年も何万年も… 永久に生きられるのに、2000年程度じゃ驚きませんよ」
ミラーナさんは、ハッとした表情になり…
「忘れてた…」
若年性健忘症か、アンタは…
と、今度はアリアさんが呆然としている。
「お2人共… 不老不死… なんですか?」
「えぇ、私とミラーナさんは不老不死なんです。私は永遠に怪我や病気を治し続けたい。ミラーナさんは永遠にハンターを続けたい。この願いが叶ったんだ、とだけ言っておきますけど」
「はぁ~… やっぱりエリカさんは凄いです…」
恍惚とするな、恍惚と…
「そんな事より、聞きたい事があります」
「そんな事って…」
とりあえずミラーナさんの抗議(?)は無視。
いちいち付き合っていては、聞きたい事が聞けなくなる。
「何故、私と一緒に働きたいんですか? 知っての通り、私は魔法医です。一緒に働くって事は、アリアさんも魔法医なんですか?」
もし魔法医なら、私の負担が減るから助かると言えば助かるけど…
「いえ… 私は魔法医ではありません。けど、お手伝いなら出来ます。受け付けとかですけど…」
う~ん…
それでも助かる事は助かるけど…
「私はエルフなので魔力はあります。だから、エリカさんと一緒に仕事しながら医学を勉強して、それから…」
私は掌を突き出す。
「!?」
固まるアリアさん。
その表情も悲しげに固まっている。
ミラーナさんは無言で私を見ている。
「やっぱり… ダメ… ですか…?」
今にも泣き出しそうなアリアさん。
私はゆっくりと首を振る。
「医学の道は難しいし、厳しいですよ? 私だって、今の知識を身に付けるのに10年以上費やしてるんですから♪」
言ってウインクひとつ♡
「じゃあ♪」
「はい、まずは受け付けから。空いた時間で少しずつでも勉強しましょう。私達にとって10年や20年なんて、たいした年月じゃありませんからね♡」
「ありがとうございます! ありがとうございます! 私、一生懸命頑張ります!」
嬉し涙を流しながら何度も頭を下げて礼を言うアリアさん。
こんなに喜んでくれるとは思わなかったな。
「なら、ギルドで登録しなきゃな。ついでだから、アリアちゃんの紹介を兼ねて歓迎会でも開くか♪ 勿論、費用はエリカちゃん持ちで♪」
「なんでやねんっ!!!!」
ずぱぁあああああああんっ!!!!
「あだぁっ!!!!」
ダウンするミラーナさん。
へっ?
そんなにキツかったっけ?
……………………
「エ… エリカちゃん… そのハリセン… ナッシュ用の…」
あ…
つい、うっかり…
…まぁ、良いか♪
「アリアさん♪ これ、プレゼントします♪ ミラーナさんが変な事を言った時は、遠慮せず今みたいに使って下さいね♡」
うん♡
今のはお手本って事で♡
「渡すなぁあああああああっ!!!! 警戒する相手が増えるじゃんかぁあああああああっ!!!!」
「警戒しなくて良い様に、言動には気を付けて下さいね♡」
「そんなぁ~…(泣)」
落ち込むミラーナさんを傍目に、私とアリアさんはクスクス笑い合っていた♪
こりゃ、心強い仲間が増えたかな?
ミラーナさんには、気の毒だけどね♡




