第57話 エルフが来てファンタジー要素が増えました …って言ってる場合じゃありません!
「お大事に~♪」
本日最後の患者を見送った私は、玄関を閉めに向か…
「あの~…」
「うわぉおうっ!?」
ビックリした~!
てか、まだ居たの!?
持ってた受け付け表を慌てて見るが、既に全員の名前には治療済みの線が引かれている。
声がした方を見ると、フードを目深に被った1人の少女(?)が居た。
「えっと… 急患の方ですか? それなら治療室の方へ…」
「いえ! そうではありません! あの… その… えっと…」
何かを伝えようとしている様だが、どう言えば良いのか迷ってるみたいだな。
うん、こ~ゆ~場合は落ち着かせた方が良さそうだ。
「患者さんではないんですね? なら、こちらへどうぞ。リビングで話を聞きましょう」
言いつつ玄関の鍵を閉める。
そして私は治療室を抜け、奥の廊下から階段を上がる。
リビングではミラーナさんが寛いでいた。
「エリカちゃん、お疲れさん… って、誰だい?」
「あぁ、何か私に用があるみたいなんで連れて来ました」
私はミラーナさんに軽く紹介し、フードの少女にも話しかける。
「さ、こちらに座って待ってて下さい。食事でもしながら話を聞きましょう」
「ハイ… 失礼します…」
私とミラーナさんはキッチンに入り、夕食の準備を始める。
「なぁ、あの子って…?」
「何かワケありっぽいので… 悪い人では無いと思います。頼み事なのか何なのかは分かりませんけど…」
「…フードを目深に被ってるのが気になるけど、身体能力は高くなさそうだし、武器を隠し持ってる様子も無い… とりあえず、アタシ達に危害を加えようとしているワケでは無さそうだね」
パッと見ただけで判るんかい。
さすがと言うか、時々ミラーナさんの洞察力には感心させられるな。
そして夕食が出来上がり、まずは食べる事になった。
「………………!?」
うん、幻覚が見えたんだね?
大丈夫だよ~♪
私も毎日見てるからね~♪
悲しくなる程、慣れちゃった♪
「…エリカちゃん? なんか変な事、考えなかったか?」
「気のせいです」
やっぱり読心術のスキル持ってるだろ、アンタ…
「まぁ、それはさておき」
本題に入ろう。
…誤魔化してるとも言う…
「私に何か用があって来たんですよね? 頼まれ事には慣れっこなんで、気にしないで言って貰って構いませんよ? まぁ、引き受けるかどうかは別問題ですけど」
「あっ… その… 貴女がエリカさんって事は… そちらの女性が… 名前を呼んでたので… 確信しました…」
うん、何度か呼んでたな。
ミラーナさんの名前は私が呼んでないので『女性』としか言えないか。
「それよりさぁ… そのフード、いつまで被ってるんだい? 人と話すんなら、顔を見せた方が良いと思うけどね」
うん、それは私も気になってた。
何か事情があるんだろうけど、フードを被ったままだと不信感は拭えないな。
「確かに… 仰る通りですね… ただ… 驚かないで… 欲しいです…」
この、途切れ途切れの話し方はクセなのかな?
言いつつフードを取る少女。
「「!?」」
透き通る様な白い肌。
シルクの様なプラチナ・ブロンドの髪。
そして何より特徴的なのは、その長く尖った耳。
「エルフ!?」
驚くミラーナさん。
「わぁ~、エルフさんだぁ♡」
私は驚くと言うより感動していた。
この世界に転生して2年以上が過ぎ、初めて人間以外の種族を見た!
これぞファンタジー♡
こうなると、ドワーフなんかも期待したい♡
「エリカさんは… 驚かないん… ですか?」
驚くより嬉しいんだよ~♡
ミラーナさんは目を丸くしてるけど、私はファンタジー感に喜びしか無い!
「驚くより嬉しいですね♡ エルフさんには、いつか会いたいと思ってましたから♡」
ミラーナさんは固まり、エルフさんは珍しいモノでも見る様な目で私を見ていた。
────────────────
「とりあえず自己紹介しますね。知ってる様ですけど、私はエリカ・ホプキンス。魔法医で、このホプキンス治療院の院長です。こちらはミラーナ・フェルゼンさん。超一流のハンターで、この治療院の居候と言うか、私の同居人です」
「ミラーナ… フェルゼン… って! もしかしてイルモア王国の!?」
うん、さすがに気付くよね?
こう見えてもイルモア王国の第1王女なんだよなぁ…
未だに信じられんけど…
「エリカちゃん? 今、変な事…」
「考えてません」
やっぱり読心術使えるだろ、この女…
「はぁ~… やっぱりエリカさんって… 凄い… 人です…」
なんか恍惚とした表情なんですけど…
まぁ、良いか…
「で? 私に何の用なんですか? それを聞かない事には、何も話が進みませんね」
「あっ… そうでした… 申し訳… ありません…」
やっぱり、この話し方はクセなのかな?
「それよりさぁ、そっちの自己紹介がまだだよねぇ? 名前は? それと、エリカちゃんも言ってたけど何の用か聞きたいな?」
そう言や、名前も聞いてなかったな。
「あっ… すいません… 私… アリアと言います… 見ての通りエルフで… エリカさんの… 噂を聞きまして… その…」
クセと言うか、この話し方は緊張してるんじゃないか?
「アリアさん、もしかして緊張してます? もっと気楽にして欲しいんですけど…」
ビクッとするアリアさん。
いや、まぁ…
なんとなくだけど、私より見た目が年上っぽいんで『ちゃん』より『さん』かな~と…
「は… はいっ! じゃ、ハッキリ言わせて貰います! 私、ここで働きたいんです!」
はい?
ここで?
働きたい?
「え~っとぉ~… それって、ど~ゆ~事ですかねぇ~?」
「私、王都でのエリカさんの活躍を聞きまして! 是非、エリカさんの元で働きたいと思ってロザミアに来たんです! お願いします! ここで働かせて下さい! お金なんて要りません! ただ、エリカさんの元で働きたいんです!」
なんなんだ、この人は!
さっきまでとは違って、凄い勢いと圧力だぞ!?
どうする、エリカ!?
アリアをどうにか出来るのか!?
って、ナレーションしてる場合かぁあああああああっ!!!!
どうすりゃ良いんだ、これぇええええええええっ!!!!




