第44話 ロザミア帰還、戻って来た日常って… おいっ!
いよいよロザミアに帰る朝。
昨夜は最後の思い出って事で、また全身を好き放題に洗われたよ…
王都に来てから精神的疲労というか、精神的ダメージを受けまくってる気がする…
特に後半…
まぁ、それも今日が最後!
いや、今朝か。
朝の精神的ダメージさえ乗り切れば、後はロザミアまでノーダメージで過ごせる!
ダメージを受ける前提なのが悲しい…
思いつつ、食堂へ向かった。
国王一家との最後の朝食は、普段と違って静かだった。
いつもなら会話を楽しみつつ食べるのだが、誰も喋らず黙々と食べている。
私が居なくなる事を寂しがってくれてるのかな?
「とうとうエリカちゃんがロザミアに帰ってしまうのねぇ…」
沈黙を破り、しんみりと王妃様が言う。
「うむ、寂しくなるな」
国王陛下も同意する。
「もっと一緒にお風呂に入りたかったなぁ…」
フェルナンド様!
それは言わんでくれ!
「そうですわね。もっと洗いっこしたかったですわ♡」
いや、キャサリン様!
洗いっこぢゃなくて、私が一方的に洗われてただけですから!
「私も、もっとも~っとエリカちゃんを洗ってさしあげたかったですわ♡」
ロザンヌ様!
アンタ、余計なトコまで洗ってたやないか!
詳しくは言えんけど!
完全に脱力し、私はテーブルに突っ伏した…
帰りの馬車もマインバーグ伯爵と一緒だ。
相変わらずカタい人だが、今は何故か安心してしまうなぁ。
私は馬車の窓から手を振り、国王一家に別れを告げる。
「エリカ殿、王都は如何であったかな?」
伯爵は風呂での騒動を知らないから気楽に聞いてくる。
仕方無いけど…
「後半は大変でしたけど、概ね楽しめましたかね?」
伯爵は頷く。
「確かに大変だった様であるな。まさか傷病人が大挙して押し寄せるとは思いもしない事であったからな」
だよなぁ…
私の代わりで40人もの魔法医が不在になったんだから、これも仕方無いんだけど…
「でも、これで落ち着けます。ロザミアが懐かしいですよ」
「王女殿下達や王太子殿下は歳の近い友人が居らぬ故、エリカ殿に会うのをずっと楽しみにしておられたのだ。エリカ殿は大変であっただろうが、理解してくれぬか?」
あぁ、立場上の問題もあるだろうしな…
ロザミアに着いたら手紙でも書くか。
─────────────────
王都に向かった時と同様、帰りの道も順調に進んだ。
途中で盗賊らしい連中を見掛けたが、馬車に付いてるマインバーグ伯爵の家紋の効果だろう。
遠巻きに眺めてるだけだった。
間も無くロザミア到着。
小さく見えていた街が徐々に大きくなる。
皆、元気かなぁ?
夕方にロザミア到着。
門の前で馬車が停まる。
「エリカ殿には申し訳無いが、私は馬車にて待機させて貰う。荷物は護衛の者に運ばせよう。護衛が戻り次第、王都へ向けて出発する」
???
「はぁ、分かりました」
言って私は馬車を降りる。
私の荷物は護衛の2人が1つずつ持って運ぶ。
「それではマインバーグ伯爵様、道中お世話になりました。また会える日を楽しみにしてます♪」
「うむ、私も楽しみにしている」
別れの挨拶を済ませ、私は護衛と共に門を潜る。
「やぁ。エリカちゃん、お帰り♪」
「王都はどうだった?」
「待ってたよ♪」
道行く人々が声を掛けてくる。
50日振りのロザミア♡
帰って来たんだなぁ♪
治療院の在る円形広場に着くと、私が帰るのを知っていたのか大勢の人が出迎えてくれた。
「「エリカちゃ~ん、お帰りなさ~い♪」」
ミリアさんとモーリィさんが、声をハモらせながら駆け寄って来る。
「ミリアさん、モーリィさん。お久し振りです♡ お変わりありませんか?」
2人は顔を見合せる。
「私達より、魔法医の皆さんが…」
「ちょっと… ねぇ…」
???
「さすがに全員バテちゃって… あははw」
あ~…
1日交代とは言え、ロザミアの怪我の程度は王都より重い人が多いからなぁ…
て事は、治療が終わってない人も居るのかな?
とりあえず荷物を治療院に運び込もう。
「ちょっと待ってて下さいね」
言って私は護衛の人を治療院に案内する。
荷物を運び終えると護衛の2人は
「それではエリカ様、我々はこれにて」
「また、お会い出来る日を楽しみにしております。では!」
と言って去って行った。
さ~て、気合いを入れてみるか。
と… マークさんが何か言ってるな。
「お前等! エリカちゃんは長旅で疲れてんだ! 今日は我慢しろ! 良いな!」
おいおい、怪我人は大目に見てやれよ…
「おうっ! こんな怪我、大した事無いぜ!」
無理すんなよ…
腕がプラプラしてるぞ?
確実に折れてるだろ…
「俺も大丈夫だ! 問題無しだ!」
言いつつパンッと脚を叩き…
プルプル震えて蹲る。
傷口、開いたろ…
血のシミが広がってるぞ?
やれやれ…
「痩せ我慢しないで下さい! 怪我人は全員治療院へ! 今すぐ治療します!」
言いつつ私は治療院に入る。
ぞろぞろ着いて来る怪我人達。
気にすんなよ、好きでやってんだから♡
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全員の治療は思ったより早く終わった。
私はハンターの兄ちゃん達に誘われるまま、ギルドへ向かう。
ギルドに入ると、酒や料理の乗ったテーブルが所狭しと並んでいる。
「今夜はエリカちゃんのロザミア帰還パーティーだ! 好きなだけ飲んで食って騒ごう!」
マークさんが叫ぶ。
こんなに喜んでくれるなんて、嬉しいなぁ♡
続いてミラーナさんが叫ぶ。
「遠慮すんなよ! 飲食代はエリカちゃん持ちだからな!」
なんでやねんっ!
すぱぁあああああああんっ!!!!
必殺のハリセン・チョップがミラーナさんの後頭部に炸裂する。
「じょっ… 冗談に決まってんだろ! それよりそのハリセン、何処から出した!?」
「細かい事は気にしちゃいけません!」
実は常に持っているのだ。
魔法で作った異空間に保管してるんだよ!
ミラーナさんには、これが一番有効みたいだし。
「プッ… あははははっ♪ やっぱ、これだな! こうでなきゃロザミアじゃないよ♪」
私の肩を抱いて大笑いするミラーナさん。
「あはははっ♡ 私も、やっとロザミアに帰って来た実感が湧きました♡」
私もミラーナさんを抱き締めて笑った。
一部の兄ちゃん達は、ミラーナさんをハリセン・チョップで叩いた私を畏怖の眼で見てたけど…
とにかく、その日は夜遅くまで騒ぎまくり…
翌日は怪我人や病人の治療より二日酔いの治療の方が忙しかった…
お前等、ちょっとは翌日の影響も考えて飲めよ…




