第42話 喜ぶべきか、悲しむべきか!?
王都で傷病人の治療を本格的に始めて3日。
私は気合いを入れまくり、朝8時から20時まで連日700人近くの治療をした。
1人1分程度で次々と治していく。
なので、ノンビリと食事休憩なんかしてる暇は無い。
サンドイッチを作り置いて貰い、治療の合間にサッと食べるだけ。
毎回、最後はブッ倒れたけど…
その度に王妃様や王女様達は私を介抱・世話してくれた。
いやいや、お風呂は1人で入ったからね!
その甲斐あってか、ようやく落ち着きが見えてきた。
当然の事だが、料金は1人につき銀貨1枚しか貰わなかった。
…後で問題にならないだろうか?
その日もブッ倒れた私は、王宮で国王一家の見守る中で目を覚ました。
「エリカ殿、もうそろそろ良かろう。報告では、ちょっとした風邪や軽い怪我程度の者しか残っていないと聞いたぞ?」
「陛下の仰る通りですよ? 貴女の身体が心配です。無茶はいけませんよ?」
王女様達は黙ったまま、私を心配そうに見ている。
…どうしようかな?
中途半端は嫌だし、残りの人数で決めるか…
「後、何人くらい残ってますか? 人数次第では続けます」
両陛下は驚いている。
唖然とした表情で顔を見合わせ…
「…200人も残っていないと聞いているが…」
その程度なら、普段の忙しい日と変わらないな。
「じゃあ、続けます。今までのペースなら、昼までには全員の治療を終われます。新たな傷病人が来るかも知れませんが、多少増えても夕方頃には終われるでしょう」
私の言葉を聞いた国王陛下は静かに頷く。
「エリカ殿の意志は固い様だな。ならば、止める方が無粋と言うものだろう」
「そうですわね… なら私達に出来る事は、明日の為にエリカちゃんの疲れを取ってあげるだけですわね♡」
王妃様も同意してくれる。
王女様達は何やら相談し…
「お母様、ならば私達も♡」
「えぇ、是非お手伝いさせて頂きますわ♡」
「僕は… ちょっと恥ずかしいから遠慮します…」
ん?
…まさか…
「「まずは、お風呂で疲れを取りましょう♡」」
ハモるなぁあああああああっ!!!!
王妃様と王女様達は私を風呂へと引っ張り、国王陛下とフェルナンド様は手を振って見送る。
助けろぉおおおおおおおおっ!!!!
こうして私は3人に全身を好き放題に洗われ、夕食にはフェルナンド様も加わって食べさせてくれたのだった。
身体の疲れは取れるけど、精神的には疲労困憊だぞ、これ…
────────────────
翌朝、なんとか精神を持ち直した私は中央広場へと向かった。
残りの人達の治療、気合いを入れるとするか。
前日までと同じ様に、治して治して治しまくる。
重傷病者全員を先に治したからか、かなりラクに治療が進む。
たま~に新たな重傷病者が来るけど…
思ったより患者は増えないが、気を抜くワケにはいかない。
集中力を高めて治療を続ける。
「エリカ様、今の患者が最後の1人です! お疲れ様でした!」
テントの外に居た護衛の兄ちゃんが言う。
まだまだ! 確認してから!
「周りを確認して下さい! こちらへ向かって来る人は居ませんか!?」
待つこと数分…
「確認しました! 向かって来る者は居りません!」
終わった…
300人ちょっとだった… かな…?
そこで私の意識は途絶えた…
────────────────
目を覚ますと…
国王陛下達が私を覗き込む、見慣れた光景。
「だから無茶はいけないと言ったでしょう? 仕方の無い娘ねぇ…」
王妃様が困った顔をして言う。
「無茶はしてませんよ? やっと治療が終わって気が抜けちゃっただけですから…」
私はゆっくりと身体を起こし、ニッコリと笑いながら言う。
「それなら良いが… とにかく、ご苦労であったな。まだ明るいし、皆と茶会でもしていると良い」
言って陛下は公務に戻って行った。
「エリカちゃん、起きても大丈夫なの? 大丈夫だったら、すぐにお茶の用意をして貰うけど…」
キャサリン様が心配そうに聞く。
「えぇ、大丈夫です♪ さっきも言いましたけど、気が抜けただけなんで♪」
「じゃあ、お茶の用意をして貰いますわね♡」
言いつつロザンヌ様が部屋の外へ行く。
「エリカお姉ちゃん、やっぱり凄いね♪」
フェルナンド様は素直に感心してくれている。
皆優しいな♪
国王一家が国民に慕われてるのが解るよ♪
私はドレス──動き難いけど──に着替え、国王一家と共にテラスでお茶を楽しむ。
国王陛下は公務で居ないけど…
そよ風が気持ちいい♪
疲れが消えていく気がする♪
「それにしても…」
王妃様が私をまじまじと見詰めて言う。
「私、噂を耳にした時にはとても信じられませんでしたの。なにしろ突拍子も無い噂でしたから、この眼で見るまでは信じられませんわよね…」
まぁ、何十人もの魔法医がってんならまだしも、たった1人で毎日大勢を治療してるなんて眉唾物だからなぁ…
「私も、大袈裟に話が伝わってると思ってましたの」
「えぇ、私もですの」
2人の王女様達も同じ事を思ってたか…
「僕は… そんな凄い人が居るんだって感心してたんだ。姉上達には、人の噂は時間と共に大きくなるって言われたけど… やっぱり本当だったって分かって、嬉しかった♪」
フェルナンド様、素直で可愛いなぁ♡
でも、妃だの側室だのには絶対ならないからね!
「エイカたん、しゅごい♡」
まだ上手に喋れない第2王子様も褒めてくれる。
嬉しいし癒されるなぁ♡
この子が将来、私を妃にって言い出さない事を祈ろう。
「エリカちゃん、顔色が良くなりましたわね。少しは疲れが取れましたか?」
キャサリン様がにこやかに聞いてくる。
「はい♪ そもそも気が抜けて倒れただけなんで、それほど疲れてませんでしたから♪」
私はニッコリ笑って返事する。
「それじゃあ、もう大丈夫なんですね?」
ロザンヌ様が嬉しそうに聞いてくる。
「はい♪ すっかり元気ですね♪」
私はガッツポーズで返事する。
「じゃあ、そろそろですわね? キャサリン♡ ロザンヌ♡」
「「はい♡」」
王妃様が何やら聞くと、2人の王女様は元気良く応える。
ん?
「フェルナンドは?」
「僕も、今回は♡」
やはり王妃様が聞くと、フェルナンド様が照れた様子で応える。
んん?
何か計画してたのか?
「決まりですわね♡ なら、行きましょうか♡」
回復祝いか何かかな?
「「「皆でお風呂ですわ♡」」」
女3人でハモるなぁあああああっ!!!!
なんぢゃ、そりゃぁあああっ!!!!
「いやいやいや、1人で入れますしっ!!!!」
私は慌てて拒否する。
「遠慮は要りませんわ♡」
いや、遠慮ぢゃないから!
「身体の隅々まで洗って差し上げますわ♡」
要らんっ!
洗って要らんからっ!
「もうすぐロザミアに帰っちゃうから、思い出造りだよね?」
にこやかに話し掛けてくるフェルナンド様。
だから、そんな思い出は要らんっつってんだろ!
言えんけど!
「おふろ♡ おふろ♡」
あぁ~、ローランド様は素直に喜んでるぅうううううううっ!!!!
「エリカちゃん♡ 覚悟は宜しくて?」
何の覚悟だっ!?
何の!?
誰か助けてくれぇええええええっ!!!!
そして私は必死の抵抗も虚しく、やたらと広い浴室へ連行されて行ったのだった…
浴室で何があったかは、想像にお任せします…




