表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/243

第37話 王都からの迎え

 時間が無い。

 マインバーグ伯爵からの手紙では、手紙が着いた数日後には魔法医達がロザミアに来ると言う。

 私は入れ替わりに王都へ行かなくてはならない。

 勿論、治療院の診療方針を伝えてからだ。

 勝手な事をされては困る。

 とにかく魔法医達が来る前に準備を調(ととの)えなくては。

 私は毎日、治療院の仕事が終わると王都行きの準備に追われていた。

 ミラーナさんも手伝ってくれている。


「王都には何日ぐらい滞在(たいざい)しないといけませんかねぇ?」


 あまり長く治療院を()けたくないんだよなぁ…


「そうだなぁ… 初めてなんだから、そんなに長くはないと思うんだけど… だからって、すぐに帰らせてくれるとも思えないし… 10日(とおか)滞在(たいざい)すると思っておいた方が()いかな?」


 10日か…

 確かに2日(ふつか)3日(みっか)で帰らせてくれるとは思えないし、かと言って1ヶ月も()め置かれるとも思えない。

 まぁ、10日なら許容(きょよう)(はん)()かな?


「10日だとすると、片道10日の往復20日(はつか)。1ヶ月留守にするって感じですかね?」


「いや、それは無理だと思うけど?」


 へっ?

 だって計算上は行きに10日、滞在(たいざい)10日、帰りに10日で1ヶ月じゃあ…


「乗り合い馬車なら、確かに片道10日だよ。だけど王都に(しょう)(へい)する以上、乗り合い馬車で王都(ヴィラン)()させるって事は無いだろうね。まず間違い無く誰かが迎えに来る(はず)だよ。そうなると、往復の日程は20日じゃ無理だね」


 ???


「乗り合い馬車なら、朝に出発して夜に宿場町に着くんだ。急ぐ連中は、そこで夜に宿場町を出発する馬車に乗り()える。馬車の中で寝て、朝に次の宿場町に着く。そこでまた朝に出発する馬車に乗り()える。これの繰り返しで王都まで10日なんだ」


 …………………………………


「対して迎えの馬車だと、朝に出発して夜に宿場町に着く。そこで朝まで1泊する事になる。馬車を乗り()えるなんてしないから、乗り合い馬車の半分しか進めない。だから王都までの日程は倍になると考えた方が()いな」


 え~と……………


「だから早く戻って来れても、50日間はロザミアを留守にするって感じかな?」


 50日ぃいいいいいいい????

 そんなに長い(あいだ)、治療院を()けなきゃならんのかいっ!!!!

 いや、王都からの魔法医達に診療させるけど!!!!

 予想より20日(はつか)も長くなるやないかぁあああああああっ!!!!


「そんなに遠いんですか…? 王都って…」


 なんか、一気に(ちから)が抜けたぞ…


「エリカちゃん、あんまり世の中の事を知らないみたいだなぁ。馬車で何日って、走り続けてって意味なんだよ。貴族連中は、寝てる間も馬車を走らせる事は無いんだ。そんな事をしたら馬が(つぶ)れるし、使うかどうかも(わか)らない代わりの馬車を(かく)宿場町に待機させる事も無いしね」


「でも、マインバーグ伯爵は…?」


 彼は20日のパーティーに参加するのに、10日にロザミアを出発してたぞ?


「彼は馬に乗って走らせたんだよ。馬車を引くより早いから、宿場町2つ分を走破出来るんだ。だから10日で移動出来たんだよ」


 私は馬に乗れないから、当然馬車での移動か…

 ちょっぴり疲れる旅になりそうだと思いつつ、私は全ての準備を調(ととの)えた。





 ─────────────────





 翌朝、ついに王都から魔法医達が到着した。

 人数が多いから、乗り合い馬車4台に分乗してのお出ましだ。

 彼等は私の迎えが来るまでは待機しているらしい。

 その(かん)、私は通常の診療を行った。

 夜になって迎えに到着したのはマインバーグ伯爵。

 知らない人と一緒に馬車の旅にならずにホッとしたなぁ…

 伯爵には治療院に泊まって貰い、翌朝一緒に出発する。

 魔法医達を治療院のリビングに上げ、診療方針を説明する事にした。

 整然と並ぶ魔法医達の前に、私達3人が立つ。

 私の説明に(うなず)く伯爵。

 ミラーナさんは魔法医達を見ている。

 (にら)み付けて()(かく)するの、()めた方が…

 一通(ひととお)り説明を終えると、ミラーナさんが口を開く。


「いいか、貴様()! 今、言われた通りにやれよ!? 余計な事はするな! アタシが見張ってるからな!」


 恫喝(どうかつ)も止めた方が…

 その後、魔法医達は取っていた宿に戻り、私達は夕食だ。






「うむ、実に興味深い味でしたな。お(ふた)(かた)、ご馳走になりました」


 言って深々と頭を下げる伯爵。

 これ、絶対に幻覚を見たな…

 伯爵にはミラーナさんの向かい側の部屋を使って貰う事にした。

 私達は風呂を済ませ、少しリビングで会話する。


「じゃあ、やっぱり王都までは20日の日程ですか?」


「うむ、長く治療院を()けたくないエリカ殿には申し訳無いのだが、やはり乗り合い馬車でと言うのは(はばか)られるのでな」


「だよなぁ。何か悪い事でもして呼び付けるなら乗り合い馬車でも構わないだろうけど、大勢の人を治療している人物に来て貰うって事だからなぁ」


 伯爵はコクリと(うなず)く。


「ミラーナ様の(おっしゃ)る通りです。その様な素晴らしい人物に対し、迎えも送らないのは失礼極まりない事ですからな。また、エリカ殿も知らない者との旅では気が休まりますまい。そこで私が志願(いた)しました」


 相変わらず(りち)()な人だなぁ…


「まぁ、マインバーグ伯爵なら、アタシも安心して任せられるな。盗賊の中には貴族の馬車を襲う(ぶっ)(そう)な連中も居るが、マインバーグ伯爵の馬車は襲われた事が無いからな」


「お言葉、恐縮(きょうしゅく)にございます」


 そうなんだ…


「マインバーグ伯爵は()(とう)()で有名だからな。マインバーグ伯爵家の紋章を見れば、盗賊は近付かないさ」


 なら、安心だな♪


「それじゃあマインバーグ伯爵様。明日から王都まで、(よろ)しくお願いしますね♡」


「うむ、こちらこそ」


 私とマインバーグ伯爵は固く握手し、それぞれの部屋へと戻って眠りに着いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ