第36話 やっぱり行かなきゃダメですか??
私の弟子になるのを諦めた魔法医達が王都に帰って1ヶ月。
久し振りにマインバーグ伯爵から手紙が届いた。
ミラーナさんも興味津々で、一緒に読む事にした。
『春も闌となり草木も芽吹くこの季節、如何お過ごしだろうか?』
「相変わらずカタいなぁ…」
うん、私も同感だ。
『ミラーナ様も、貴殿と共に楽しく過ごしている事と思う』
「おぅっ♪ 元気、元気♪」
ウンウン、2人共元気ですよ♪
『本題だが、貴殿の元に送った魔法医達の報告を基に、数日間の会議が行われた』
「なんで数日も掛かるんだ?」
「そんなに揉める様な事、ありますかねぇ?」
なんなんだろうな…?
『国王陛下が魔法医達の話を聞き、是非とも貴殿と会って話がしたいと仰られたのだ』
「はぁっ!? 父上がエリカちゃんと会いたいって!?」
「!?」
嫌な予感…
でも、私を王都に拉致… いやいや、招聘するには何十人も魔法医を派遣しないと…
『しかし、貴殿を王都に招聘するには10人や20人の魔法医を派遣した程度では間に合わぬのは明白である』
「だよなぁ… それは魔法医連中の報告を聞いたら誰でも解るよなぁ」
「ですよねぇ…」
どれだけの魔法医が王都に居るかは知らないが、私の治療院が休診日以外も閉める事態は絶対に避けたい。
『だからと言って、貴殿と会う為だけに陛下自身がロザミアに出向く事も難しい』
「確かになぁ… 国内行幸のついでと言うか、予定に組み込むならまだしも… 個人に会う為にだけ父上が王都を出るってのはなぁ…」
「ですよねぇ… 貴族の誰かに会うならともかく、私は単なる平民ですから…」
「いや、それならアタシに会う名目で来れるかも… って、アタシは身内だから意味が違うか…」
だよなぁ…
『それでも陛下は、なにがなんでも貴殿に会いたいと頑なに仰る。おまけに王妃様、御子息、御息女の皆様までもが貴殿に会いたいと仰る始末』
「はあっ!? 母上にキャサリンにロザンヌ、フェルナンドまでもか!?」
「どうなってるんですか!?」
「知らないよ! アタシに聞かないでくれ!」
…確かに聞いても仕方無いが…
『仕方が無い故、無駄だと思いつつも王都の魔法医に志願を募ったのだ。ロザミアに出向いても良いと言う魔法医が充分に集まらなければ、貴殿を招聘するのは陛下も諦めるであろうとの思いであった』
「あぁ、確かにな…」
「ですね。私がロザミアを出ても大丈夫なだけの魔法医を派遣しなかったら、私は動きませんから」
そんなに集まるとは思えないしな。
『すると、驚いた事に100人近くの魔法医が志願したのだ。これには私も驚きを隠せなかった』
「はあっ!? 100人近くだと!?」
「………………」
私は固まった…
『その中から申し分の無い者を40名選び、ロザミアに派遣する事になった。貴殿には申し訳無い事だが、彼等がロザミアに到着し次第、貴殿には王都に来て貰う事になる』
「………………」
「………………」
私もミラーナさんも、言葉にならない。
『この手紙が着いた数日後には魔法医達がロザミアに到着するであろう。早急に王都へ向かう準備を調えて貰いたい』
「………………」
「………………」
私とミラーナさんは顔を見合せる。
『では、王都での再会を楽しみにしている』
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「こりゃ、腹を括るしか無いな。ま、留守は任せてくれ」
ミラーナさんは私の肩をポンポンと叩きつつ、苦笑いしながら言う。
マジかぁあああああああっ!!!!
マジで王都に行かなきゃならんのかぁあああああああっ!!!!
なんなんだよぉおおおおおおおおっ!!!!
私の平穏な生活が崩れるぅうううううううううううっ!!!!
いや、今でも平穏とは言えんかも知れんけど!!!!
ミラーナさんには振り回されてるけど!!!!
王都に招聘なんかされたら、私の噂が現実の事だって広まるのは間違い無いだろっっっっっっっ!!!!
絶対、弟子にしてくれってヤツが大挙して押し寄せて来るだろっ!!!!
その度に前回みたいな事をしなきゃならんのかいっ!!!!
そんな事、してられるかぁあああああああっ!!!!
悶絶する私をミラーナさんはニヤニヤして見ている。
「ミラーナさん! ニヤニヤしてないで助けて下さいよ! 何とか出来ないんですか!?」
私は一縷の望みをミラーナさんに託す。
「そりゃ無理だよ。こうなった以上は、諦めて王都に出向くしかないね」
やっぱりかぁあああああああっ!!!!
しくしくしくしく…
私は仕方無く王都に向かう準備を始めるのだった。
何事も起きませんように…




