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小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


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第31話 こっちの結論、あっちの結論

 2月15日の休日。

 ミリアさんと(とも)に休日を楽しむ私の元に、ミラーナさんとマインバーグ伯爵からの手紙が届いた。

 王宮では、私を王都に(しょう)(へい)すべきかどうか、仮に(しょう)(へい)するなら何人の魔法医をロザミアに派遣(はけん)すべきかの会議が開かれたそうだ。

 治療費の事は知られていない。

 いや、(うわさ)になってはいるのだが、値段を聞くと誰もが『そんなバカなw』と、本気にしなかったらしい。

 まぁ、そりゃそうだろ。

 骨折の治療費が安くて小金貨で2~3枚、高くて7~8枚必要なのに、私の治療費は(いち)(りつ)銀貨1枚なんだから。

 普通に考えれば本気にされなくて当然だ。

 仮に私を(しょう)(へい)したとして、代わりの魔法医が何人必要か…

 他の街ならまだしも、ここはハンターの街(ロザミア)だ。

 ()り傷や切り傷、ちょっとした風邪なんかは勿論、骨折や(だっ)(きゅう)の治療は当たり前。

 (ひど)い怪我だと、腕や(あし)千切(ちぎ)れ掛かっていたり、下手すりゃ千切れてたりもする。

 当然、使う魔力も()り傷や切り傷の治療と比べると(けた)違いに多くなる。

 無制限で魔力を使える私ならともかく、普通の魔法医だと何人必要か…

 (じゅう)(ぶん)な人数が来たとしても、私の代わりなんだから治療費は患者1人につき銀貨1枚しか貰えない。

 1日働いて100人治して金貨1枚分(もう)けても、人数で割れば食費程度しか(もう)からない。

 いや、人数次第では食費にすらならないだろう。

 勿論、宿屋に泊まろうにも宿代だって払えない。

 私の治療院には()いてる部屋も()るけど、さすがに私やミラーナさんの部屋は使わせられない。

 そうなると残る部屋は7つ。

 (ひと)部屋に2人で泊まっても最大14人。

 果たして14人で私の代わりが(つと)まるか?

 ギリギリ何とかなっても、食費が足りない。

 また、魔力()(かつ)した場合、(ひと)(ばん)寝るだけで回復するかも問題だ。

 仮に魔力()(かつ)しなくても、それに近い状態にはなるだろう。

 それを考えると、10数人の魔法医が1日交代で(つと)める事になるか…

 やっぱり30人程度は派遣して貰わないと、(しょう)(へい)には応じられないな。

 そんなには泊められないから、宿代や食費は持参して貰って宿屋暮らしして貰う事になるか。

 そして1日の儲けは銀貨数枚。

 実質はマイナス。

 こんな条件で派遣に応じる魔法医が王都に居るとは思えないな。

 そもそも名声や金儲けが目的の連中らしいし。





「こんなに条件が悪いんじゃ、王都から来る魔法医なんて居ないでしょうねぇ」


「ですよねぇ。ミラーナさんも、王都の魔法医の事をボロクソに言ってましたから」


「エリカちゃんの代わりなんて、(つと)まりそうにないわねぇ…」


 2人で手紙を読み、その結論に達したのだった。

 多分、王都でも同じ結論に達する事だろう。

 人口が5万人を超える規模の大きな都市だが、30人もの魔法医が居なくなる事は問題だろうし。


「さすがに、それはキツいでしょうね」


 ミリアさんも同意する。


「王都に魔法医が何人位居るのかは知りませんけどね。それでも30人もの魔法医が長期間不在ってのは、掛かり付けの魔法医が居る人にとっては()(かつ)問題… とまでは言いませんが、すぐに()て貰える魔法医が居ないのは困るでしょうね」


 ミリアさんも、ウンウンと(うなず)く。


「そうよねぇ。代わりの魔法医を探すのも大変でしょうし」


 そう。

 それが問題なんだよな。

 前世では大勢の医師が病院に(つと)めていたし、町医者だって多かった。

 けど、ロザミアには私が来るまで魔法医は居なかったし、(ほとん)どの魔法医が王都に集まってるとは言え、数は知れてるのかも知れない。


「なら、尚更(なおさら)エリカちゃんの代わりに来る魔法医なんて居ないでしょうね」


「ですよね。魔法医の数が多ければ、王都でも『これ以上は()らない』ってなるでしょうし」


 勿論、前世の話はしてないよ!

 そもそもロザミアに来た時に、魔法医の存在自体が少ないって聞いてるし。

 まぁ、王都以外ではって事かも知れないけど。

 いずれにせよ、私の代わりを(つと)めるのは無理って事!

 私達2人は、安心して夕食に出掛ける事にした。





 ─────────────────





 たまには私やミリアさんの行き着け以外の店にしようという事になり、ミリアさんがたまに顔を出すという店に行く事にした。

 店に入ると、カウンターにモーリィさんが居た。


「ヤッホー、モーリィ♪ 仕事、終わってたんだ♪」


「あれ、ミリア。この店に来るなんて久し振りじゃない♪ それに、エリカちゃんも来たんだ♪」


 (こた)える様に手を振るミリアさん。

 この店って、もしかして…

 そう思っていると、ミリアさんが気付いて言う。


「そうなの、ここってモーリィの行き着けなのよ♪」


 なるほど、だからたまに顔を出すんだ。


「なら、一緒に食べようよ。マスター! 私、あっちのテーブルに行くから!」


「あいよ~」


 そう言ってモーリィさんはテーブル席に移動し、私達も一緒のテーブル席に座って料理を注文する。


「一緒に来たって事は、今日もエリカちゃんと楽しく過ごしてたな?」


「まあね~♪」


 モーリィさん、なんか(くや)しそうな…


()いなぁ~。私もマークさんに頼んで5の付く日を休みにして貰おうかな~」


 それって私の休日が(さわ)がしくなりそうな…

 言えんけど…


「それって大丈夫なんですか? その分、他の人の負担が増えるなんて事は…」


 一応、確認してみる。


「シフトを交代して貰えば大丈夫よ。ミリア以外にも5の付く日が休みの人は何人か居るから、その内の誰かとね。ちなみに私は2の付く日」


 それなら大丈夫か。

 私が大丈夫じゃ無くなる気もするけど…

 勿論、これも言えんけど…

 その後、私達3人は食事をしながら会話を楽しみ、それぞれ()()についた。





 治療院に戻ると、一通の封筒が届いていた。

 リビングへと上がり、封を切って中の手紙を読む。

 手紙の内容は…

 王都の魔法医数人をロザミアに派遣し、私の代わりが(つと)まるか試験的に治療させてみて欲しいとの事だった。

 ………………………………

 来るんかぁあああああああああいっ!!!!

 それが王宮の結論かぁああああっ!!!!

 どうなるんだよぉおおおおおお!!!!


 私は脱力してソファーにへたり込み、気が付いたら朝でした………

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