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小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


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第24話 手に負えない規格外王女様

 私とミラーナさんは、ナッシュさんの話で盛り上がっていた。

 2人で夕食を作りながら、今度は私に対するナッシュさんの行動・言動をミラーナさんに聞かせていた。


「あはははは♪ アイツ、そんなバカな事を言いやがったんだ♪」


 ナッシュさんの『ロリババア発言』は、ミラーナさんにウケた様だ。

 個人的にはロリババアと言われるのは違う意味で心外なんだよなぁ…

 だって転生前は男だからね?

 ロリじゃ無いし!

 まだ25歳だからね?

 ババアじゃ無いし!

 勿論、ジジイでも無いし!

 転生とか、元が男ってのだけは誰にも言えんけど!


「さすがにロリババアなんて言われちゃ、私だってキレますよ。確かに見た目は8~10歳だから、ロリって言われるのは仕方無いと思いますけど… まだ25歳なんだから、ババア呼ばわりされちゃあねぇ…」


 そう私が愚痴(ぐち)ると、ミラーナさんは肩を(すく)めて言った。


「まぁ、仕方無いさ。アイツの(とし)で10歳も離れてりゃ、結構な年齢差なんだと思うよ?」


 そんなモンかねぇ?

 ミラーナさんは続ける。


「仮に2人がもっと(とし)を重ねてたとしたらどうだい? 例えばナッシュが30歳でエリカちゃんが40歳なら、今の15歳と25歳より見た目が近くなるから違和感は無いだろ?」


 そこで私は口を(はさ)む。


「私、不老不死だから見た目は永遠に変わりませんよ?」


「あ……」


 ミラーナさんが固まる。

 私が不老不死って事、忘れてたな?


「ま… まぁ、ナッシュはエリカちゃんが不老不死って事、知らなかったんだろ? なら、そっちの意味でも仕方無いさ!」


 (あわ)てて言い(つくろ)うミラーナさん。

 まぁ、別に()いけど…

 そんな事を話してる内に夕食が完成した。


「「いただきます♪」」


 ミリアさん以外が作る手料理を食べるのも久し振りだ。

 ミラーナさんは王女様だから普段は料理しないが、ハンターとして王都以外で活動してる時は自炊もするだろうし、腕前は期待して良いかも知れない。

 そう思いながらミラーナさんの作った料理を一口(ひとくち)

 食べた瞬間、私は宇宙空間を遊泳している幻覚を見た…

 気がした…

 ミリアさんの料理を食べた時のように意識が飛ぶ事は無い。

 味も問題無い。

 むしろ美味(おい)しい。

 しかし、今の感覚は何なんだ?

 恐る恐る、もう一口(ひとくち)食べる。

 今度は何も感じない。

 不思議だ。

 今度は自分が作った料理を食べる。

 うん、普通に美味(おい)しい。

 またミラーナさんの作った料理を食べる。

 うん、何も感じない。

 そして美味(おい)しい。

 私の気のせいだったんだろうか?

 そう思いつつも、無事に食事を終えたのだった。





 ─────────────────





 食後、ミラーナさんに私が感じた不思議な感覚を伝えると、ミラーナさんは平然と答える。


「あぁ、エリカちゃんも感じたんだ。いや、何も問題は無いんだよ。たださ、アタシにも(わか)らないんだけど、何故かアタシの作った料理を食べたら最初の一口(ひとくち)だけは変な幻覚が見えるんだよ。勿論、アタシにも変な幻覚は見えるんだ。だからって、アタシを含めて食べた人の身体(からだ)に異変が起きた事は無いんだよ。不思議だよなぁ」


 確かに私の身体に何らかの異変が起きている様子は無い。

 ミラーナさんの作った料理は間違い無く()()しかった。

 しかし、最初の一口(ひとくち)を食べた時に幻覚が見えたのも確かなのだ。

 更に言えば、先程(さきほど)のミラーナさんの台詞(セリフ)から(さっ)するに、ミラーナさんの料理を食べたのは私だけでは無いという事。

 他にも犠牲者(?)が居るのか?

 気になって聞くと、やはりミラーナさんは平然と…


「そりゃ居るよ。ギルドで受ける依頼の内容次第じゃ、パーティーを組んで何日も野宿する必要のある仕事もあるしね。そうなると、アタシが食事を作る当番の時もあるだろ?」


 なるほど、しかし…

 食材や調味料が豊富にある私の自宅ならともかく、現地調達が基本である『ギルドの依頼遂行中』のミラーナさんの料理は大丈夫なのか?

 不安に思って聞くと、ミラーナさんは…


「う~ん、味で文句を言われた事は無いんだよなぁ… 幻覚が見えるのも最初の一口(ひとくち)だけだし… 一応は(こう)(ひょう)みたいだよ? 他のパーティーからも一緒に来て欲しいって声が掛かる事もあるし」


 と、答えたのだった。

 まぁ、ミラーナさんの料理を食べて再起不能になった人が居ないだけ良しとするか。

 …なんかミラーナさんに毒されてる気がしないでも無いが、この(さい)気にしない事にしよう。

 それにしてもミラーナさんにミリアさん…

 私の(まわ)りに居る女性の料理って、こんなのばっかりなのか?

 そう思いつつミラーナさんを観察すると、思ったより多くの傷が身体中にある事に気が付いた。

 大きな傷は無いが、細かい()り傷や切り傷が身体中にある。


 その事をミラーナさんに伝えると…


「気にする事は無いよ。こんな傷、ハンターなら当たり前だよ。って言うか、この程度で済んでるんだから()い方だと思うけど?」


 と、まるで気にしていない様子。

 でも、王都に戻って王女として振る舞う時に困るんじゃないかと言うと…


「あ~、それは確かに困るかも知れないなぁ… (えっ)(けん)()に居る時は貴族連中との距離があるんで(とお)()には(ほとん)ど見えないから()いけど、次の社交シーズンは妹の成人披露パーティーに出席するからなぁ」


 と、納得していた。

 ミラーナさんが王都に帰る前に、私が治療して傷を消す事を提案すると…


「そりゃ助かるよ♪ もしかしたら全身に化粧しなくちゃダメかもって悩んでたんだ。顔に化粧するだけでも違和感があって嫌いなのに、全身に化粧するなんて(むし)()が走るよ!」


 確かにミラーナさんって素顔(すっぴん)だな。


「でも、傷が多いからなぁ… 治療費、高くなるだろ?」


「いやいや、私の治療費は()()()()()()()()()()()で、1回の治療で何ヶ所治しても金額は変わりませんから」


 そう言って、どんな魔法でも無制限に使える事を説明した。


「へぇ~… そりゃ凄い…」


 あれ?

 なんか、余計な事を言った気が…

 するとミラーナさんは、とんでもない事を言い出した。


「ならさ、エリカちゃんの魔法でアタシを不老不死する事も可能だよね?」


 やっぱり余計な事を言ってしまっていた。


 私はどんな魔法でも無制限に使える。

 そう、()()()()()()()だ。

 ミラーナさんは、そこに反応した様だ。

 無論、ミラーナさんを不老不死にする事は、不可能か可能かで言えば可能。

 でも、本当に不老不死になって()いのか?

 そう思いながらミラーナさんを見ると、言い出したミラーナさんも何故か思案顔で悩んでる。

 少し考えてミラーナさんは言った。


「いや、やっぱりダメだな…」


 やはり死ぬに死ねない不老不死には抵抗があるか…


「不老はともかく、不死はダメだ」


 ん?


「下手をすれば死ぬ。これがハンターの(だい)()()だからな。不死の身体(からだ)じゃ、そのスリルを味わえないじゃないか!」


 そっちかい!!!!

 やっぱり規格外だよ、この王女様…


「だから不老不死じゃなくて、不老だけにしてよ! それなら、死ぬかも知れないスリルを味わいながら、死なない限り永遠にハンターを続けられる!」


 私は気圧(けお)されながらも、ある事に気付く。


「あの~、ミラーナさん。不老だけだと見た目が変わらないだけで、いつかは普通に死にますよ?」


「へっ?」


 ミラーナさんは目を点にして固まる。


「不老だけだと(とし)を取らない… つまり見た目が()けないだけで寿命はそのままですから、いつか必ず死んじゃいます」


「あ…」


 更に私は続ける。


「逆に不死だけだと、死なないだけで(とし)は取ります。見た目は成長し、どんどん()けて行きます」


「………」


 言葉を()くすミラーナさん。

 私は(とど)めを()す。


「だから()()()()()永遠にハンターを続けたければ、ミラーナさんが望まなくても不老不死に()らざるを得ませんよ?」


 ソファーに(ちから)無く背を(あず)け、上を向くミラーナさん。

 その口から(たましい)が出てる様に見えるのは私の気のせいだろうか?


 しばらく呆然(ぼうぜん)としていたミラーナさんだが、フラリと立ち上がり…


「やっぱり不老不死にしてくれ! 不死の事は忘れたら()い! それならスリルを味わいながら永遠にハンターを続けられるじゃないか!」


「へっ?」


 今度は私の目が点になった。


「スッキリしたから、今日は風呂に入って寝るよ。不老不死にして貰うのは今回の滞在中なら何時(いつ)でも構わない。じゃ、お休み♪」


 私の返事も待たず、ミラーナさんは意気(よう)(よう)とバスルームへ向かった。

 やっぱり規格外だよ、この王女様はぁあああああ!!!!

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