表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

240/243

第239話 モーリィさんも、姪っ子には勝てません

 私は1日の診療が終わってから、あるいは食事の(あい)()、入浴中や寝るまでの時間を使い、パティさんに方言(広島弁)のレクチャーを行った。

 当然… なんだろうか、パティさんからはクレームが(はい)る。


「プリシラさんと会って話す事なんて(めっ)()に無いんだから、わざわざプリシラさんの方言を覚える必要は無いと思うんだけど…?」


「でも、覚えておいて(そん)は無いでしょ? わざわざ通訳を通すより、直接話した方が話が早いですしね? それに、もしかしたらパティさんがプリシラさんに何かしら台所用品とか生活必需品とかの作成を依頼するかも知れないじゃないですか? ジャック(旦那)さんをロザミアに移住させようって思ってるんでしょ? それを考えると、やっぱりプリシラさんの方言(広島弁)を覚えておくのが正解だと思うんですけど、違いますか?」


 私はパティさんのクレームに対し、(まく)し立てる様に()(ろん)を展開する。


「た… 確かにジャックちゃんをロザミアに、とは言ったけど…」


「でしょ? なら、パティさんの家族が何処に住むかは(わか)りませんけど、ロザミアに住む以上はプリシラさんとも頻繁(ひんぱん)に… とまでは言いませんが、それなりに(かか)わる(はず)ですよね? だったらプリシラさんの方言(広島弁)は、覚えて(しか)るべきなんです!」


 私の力説(りきせつ)に、パティさんは(なか)(あきら)めた様に(うなず)く。

 何故、そんな疲れ切った表情…?


「それで()いわ… プリシラさんの方言、教えてちょうだい… ただし、条件が1つ… モーリィ(お姉ちゃん)とミリアさんも一緒に教わる事… 2人もプリシラさんの方言、理解出来ないんでしょ…?」


 私は(ふた)つ返事で引き受け、その日の夜から3人への広島弁講座を始めたのだった。





 ────────────────





「なんで私達までプリシラさんの方言の勉強しなくちゃいけないのかしら…?」


「だよねぇ… まぁ、私も武器のメンテ頼むから、プリシラさんの方言が(わか)れば話がスムーズに進むだろうけど…」


 そして何故かアリアさんとライザさんも、私の〝プリシラさんの方言(広島弁)講座〟を受けに来ていた。


「アリアさんとライザさんは、王都(ヴィラン)からロザミアに帰る(どう)(ちゅう)、プリシラさんやミラーナさんから方言を教わったんじゃ…?」


 私が聞くと、2人はフルフルと首を()り…


「確かに教わりましたけど、ライザさんの速度ですからねぇ… 馬車なら20日(はつか)掛かりますから、それなりに覚えられたんでしょうけど…」


「だよねぇ… ボクもアンドレ様を乗せてたのと、プリシラさんの荷物がグチャグチャにならない様に、急加速や急減速を(おさ)えてた関係から全速で飛ばなかったんだけど… 途中の宿場町に()れたのって、2ヶ所しか無かったからさ… あんまり勉強出来なかったんだよねぇ…」


「だから、ちょっとした方言の意味は覚えましたけど、通訳出来るだけの知識は無いんですよ…」


「アリアちゃんは移動中にプリシラさんやミラーナさんから教わっただろうけど、ボクは宿屋で教わっただけだから…」


 うん、納得。

 かくして私は5人に対してプリシラさんの方言(広島弁)を教え始めた。

 ちなみにルディアさんはと言うと…


『私はプリシラさんとは(ほとん)ど会わないし、会うとしてもギルドの食堂で注文を受け付けるぐらいだから、方言を知らなくても問題無いわよ?』


 と、特に教わる必要無しと判断。

 私も納得した。

 そして、広島弁講座を始めて数日後…

 ルディアさんが講義の席に座っていた。


「ルディアさん… プリシラさんの方言を知らなくても問題無かったんじゃ…?」


 私が聞くと、ルディアさんは疲れた表情になり…


「そう思ってたんだけどねぇ… プリシラさん、意外と話し好きみたいなのよ… それに、昼から仕事を始めるからなのか、夜ご飯はラストオーダーの少し前に来るのよ… そんな時間だからギルドに来る人達も少ないし、私の仕事も少ないでしょ? だから、結構話し相手になる事が多くて…」


 なるほど…

 それでプリシラさんに方言(広島弁)(まく)し立てられて意味が(わか)らず、(せっ)()()まって教えて貰いに来たって事か…


「そうなのよ~… 昨夜(ゆうべ)なんて、席に着くなり『ルディアちゃ~ん、()()()()エール♪』って言うから、大至急かと思って(あわ)てて持って行ったら…」


「そ~ゆ~意味じゃないと、(あと)で知ったと…?」


「そうなのよ~… 大急ぎで持って行ったら、プリシラさんが()(ぜん)として『そがぁに(あわ)てんでもええんよ? エールを持ってきてもろうとるまに、何を注文しようか考えよ~おもうとったんじゃけぇ』って言われて… それもなんとなくしか(わか)らなかったけど…」


「それ… 『そんなに(あわ)てなくても()いですよ? エールを持ってきて貰ってる(あいだ)に、何を注文しようか考えようと思ってたんだから』って意味ですね。ちなみにですけど、プリシラさんの言った〝たちまち〟って、プリシラさんの方言で〝とりあえず〟って意味ですね」


 私が説明すると、ルディアさんは目を丸くして…


「へ…? じゃあ、普段ハンターの人達が仕事わ終えてギルドの食堂に来て、席に着くなり『とりあえずエール♪』って言ってるのと同じだったの…?」


 私は無言で(うなず)く。


「じゃあ、逆にプリシラさんが〝とりあえず〟って言った場合は…?」


「逆にそれが〝たちまち〟って意味ですね♪ プリシラさんの使う方言は、〝とりあえず〟と〝たちまち〟の意味が逆転してるんですよ。私の記憶では、意味が逆転してるプリシラさんの使う方言は〝とりあえず〟と〝たちまち〟だけですから、それだけ気を付けていれば大丈夫だと思いますよ? なので、プリシラさんの言葉(づか)いや特殊(とくしゅ)な言い回しを覚えれば、問題は無いと思いますよ?」


 ルディアさんは納得して(うなず)き、私の〝プリシラさんの方言(広島弁)講座〟を真剣に受講したのだった。





 ────────────────





 私が〝プリシラさんの方言(広島弁)講座〟を始めて早くも1ヶ月。

 ミリアさん、モーリィさん、アリアさん、ライザさん、ルディアさんは、完璧とは言えないものの、普通に会話するには問題無い程度にプリシラさんの方言(広島弁)を覚え、日常会話で私やミラーナさんが通訳する事は無くなった。

 それと同時にパティさんの出産時期も近付き、パティさんの旦那さんであるジャックさんと娘のミリアンちゃんが出産に立ち会う為にロザミアに来たのだが…


()(わい)いっ()(わい)いっ()(わい)い~っ♡  何なんですか、このミリアンちゃんの()(わい)さはっ♡ とてもモーリィさんの(めい)っ子とは思えないんですけどっ♡」


「ど~ゆ~意味よっ!」


 すぱぁあああああああんっ!!!!


「あ(いた)ぁっ!」


 普段の様に後頭部ではなく、背中にハリセンを叩き込むモーリィさん。

 後頭部を叩いたら、私の頭が抱き()めてるミリアンちゃんの頭にぶつかるからだろうけど…

 結構、痛いぞ…


「エリカおねー()ちゃん、だいじょーぶ(大丈夫)? せなか(背中)いた()いの?」


 痛みで(うずくま)る私の前に(かが)み込み、心配そうに私の顔を見詰(みつ)めるミリアンちゃん。


「じゃあ、ミリーがいた()くなくなる()()()()()してあげるね♪ いた()いのいた()いの~、()んでけ~っ♪」


 て… 天使や…

 天使がここに()る…♡

 そしてミリアンちゃんは、モーリィさんに向き直り…


「モーおば(伯母)ちゃん! ひと()たた()いたらめー(ダメ)でしょ!? エリカおねー()ちゃんに、ごめんなさいするの!」


 ミリアンちゃんに詰め寄られ、モーリィさんはたじたじ…

 まぁ、6歳の幼児に本気で反論出来ないよねぇ…


「ご… ごめんなさい…」


 納得出来ない様子で、仕方無く(あやま)るモーリィさん。

 気持ちは(わか)らないでもない…

 が、それにしても…


「モ… ()()()()()()()…? た… 確かにモーリィさんはパティさんの姉だから、ミリアンちゃんからしたら伯母(おば)だけど…」


「わ… 私と(おな)(どし)のモーリィが… お… 伯母(おば)ちゃんって…」


「け… 結構、衝撃的ですよね…?」


「ボ… ボク… 笑って()いのかな…?」


「……………………!」


 ミラーナさん、ミリアさん、アリアさん、ライザさんは、必死に笑いを(こら)えているが、ルディアさんはツボに()まったのか(はら)(かか)えて床に()()している。

 そしてモーリィさんは、伯母(おば)ちゃん呼ばわりされたのがショックだったのか、私に(あやま)った(あと)(たましい)が抜けた様に放心状態だった。





【追記】

 ちなみに治療院のメンバーのミリアンちゃんからの呼び名は…


 私=エリカ・・・エリカお姉ちゃん

 ミラーナさん・・ミラー()お姉ちゃん

 ミリアさん・・・ミ()アお姉ちゃん

 アリアさん・・・アリアお姉ちゃん

 ライザさん・・・ライザお姉ちゃん

 ルディアさん・・ルディ()お姉ちゃん

 モーリィさん・・モー伯母(おば)ちゃん


 で、完全に固定。

 モーリィさんは、何度も『伯母(おば)ちゃんじゃなくて、()()()()()って呼んで!』と頼んだのだが…

 ミリアンちゃんから『ママのおねー()ちゃんだから()()()()()なの!』と言われ、シクシク泣いていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ