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小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


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第23話 恐れられる王女様

 何故だろう?

 私は何故、ミラーナさんと並んで自宅(ウチ)までの道を歩いてるんだろう?

 どういう理由(わけ)か、気が付くとミラーナさんはロザミア滞在中、私と同居する事になった。

 不満?

 いやいや、そんなモノは無い。

 ただ、〝一抹(いちまつ)の不安〟を感じるだけだ。

 確かにミラーナさんは明るくて人懐(ひとなつ)っこい性格だ。

 反面、王女様でありながら規格外の()天荒(てんこう)な性格でもある。

 一緒に暮らして大丈夫なのか?

 私が何か考えている事を(さっ)してか、ミラーナさんも黙って歩いている。

 そんな時、ミラーナさんが右手に剣を(かか)えているのに気付いた私の脳裏に(ひと)つの疑問が浮かぶ。

 何かの本で読んだのだが、武士(ぶし)は相手に対して(てき)()が無い事を(しめ)す時は右手に(かたな)を持つとか。

 まぁ、ミラーナさんは武士じゃ無いけど…

 ミラーナさんが私に敵意を持っていないのは(わか)る。

 だが、ここはハンターの街(ロザミア)街中(まちなか)

 危険な街では無いが、(あら)くれ者は多い。

 私は(みんな)に顔を覚えて貰ってるから良いとして、ロザミアを離れて1年以上()つミラーナさんを知らない連中が(から)んで来ないとも限らない。

 そうミラーナさんに言うと、ニッと笑い


「それなら大丈夫♪ アタシ、左利きだからね♪」


 と、実は警戒していた事を明かしてくれた。

 それにしても左利きだとは、さすがに分からなかったな。

 だから万が(いち)の事が起きても剣を抜き(やす)い様に、私の右側を歩いてたのか。

 規格外に()天荒(てんこう)な人だけど、いろいろ考えてるんだな。

 そう思いながら歩き続け、ようやく自宅の()る円形広場にやって来ると、ギルドから仕事を終えたナッシュさんが出て来て私達に気付く。


「やぁ、エリカちゃん。今、帰りかい?」


 もう以前と変わりない様だ。

 一時期、精神的ダメージが大きかったからなぁ。


「ナッシュさん。さすがに立ち直ったみたいで良かったです」


 そう言うと、ナッシュさんは照れた様に頭を()きながら…


「やだなぁ、その事は忘れてくれよ… って… ミ、ミラーナの(あね)()!?」


 へ?

 (あね)()

 ミラーナさんを見ると無表情だ。

 再びナッシュさんを見ると…


「その(せつ)は申し訳ありませんでしたあああぁぁぁ……」


 と、(もう)ダッシュで走って行った。

 何かあったんだろうか?

 ミラーナさんに聞こうとすると…


「誰だっけ…?」


 と、首を(かし)げていた。

 覚えてないんかい!!!!





 ─────────────────





「あぁ、アイツだったんだ! 思い出したよ、アハハハハ♪」


 自宅のリビングで私がナッシュさんの事を話すと、ようやく思い出して笑い出した。

 ちなみに私の自宅はミラーナさんの領主邸が()った場所らしい。

 ミラーナさんは領主邸を取り壊して(さら)()にしてからランディさんに土地を売った。

 私が来る少し前に第2王子が生まれ、その世話でしばらく動けない王妃(母親)の代わりに国王(父親)の補佐をする為、最低でも1年は王都(ヴィラン)(とど)まる事。

 自分は売った土地を買い戻して何かを建てる気は全く無いので、何かを建てるなり誰かに売るなり好きにすると良い事。

 その2点をランディさんに伝えて王都(ヴィラン)に戻ったそうだ。

 と言うのも、自分が売った土地をランディさんが他に売ろうとする様子が無いので、さっさと誰かに売れば良いのにとヤキモキしてたんだそうだ。

 だから立地条件や広さが充分なのに(さら)()のままだったのか…

 そりゃ、元が領主の土地で、しかもその領主が王女様ともなれば、いつ気が変わって土地を買い戻すと言い出すかも知れないとか思うんだろうなぁ…

 知らんけど…


 ナッシュさんの事はと言うと、ミラーナさんもナッシュさんに言い寄られていたんだとか。

 …気の多いヤツ…

 ミラーナさんが王女様だと知らなかったナッシュさんは、当時14歳で成人前だったにも(かか)わらず、当時16歳のミラーナさんに言い寄っていた。

 後ろからペラペラ話しながら付いて歩くナッシュさんに対して頭に来た(キレた)ミラーナさんは、振り向く勢いを利用した(こん)(しん)の左アッパーブローを(みぞ)(おち)にブチ込んだ。


「ぐおぉおおおおおっ!!!!」


 完全に油断しており、無防備で急所に一撃を食らったナッシュさんは空中に舞い上がり…

 受け身も取れずに地面に叩きつけられ、()えなくダウン。

 うずくまり、悶絶(もんぜつ)するナッシュさんを怒りの表情で()()ろしながらミラーナさんは言った。


「アタシの事を知らない様だから教えてやる。言いたか無いが、アタシはこの国の第1王女だ!」


「…えっ!?」


 まさか!? という顔をするナッシュさんに、ミラーナさんは言葉を続ける。


「だからと言って、アタシの事を呼ぶのに『ミラーナ様』とか『ミラーナ王女』なんて呼ぶのは禁止だ。王都(ヴィラン)以外でのアタシは(いっ)(かい)のハンターだから、呼び方は今まで通り『ミラーナさん』でかまわん。だが、言い寄って来るのは今後(いっ)(さい)禁止だ。もしまた言い寄って来てみろ。その時は命が無いものと思え!」


 と、キツく言ったそうだ。

 …って、殺すんかい!

 ナッシュさんは完全にビビり、()つん()いで走り去った。


「スイマセンでした、ミラーナの(あね)()おおおぉぉぉ……」


 と叫びながら…

 それ以来、ミラーナさんの事を『ミラーナの(あね)()』って呼んでたんだそうだ…


「さすがに(あね)()ってのは(かん)(べん)して欲しいけど、あの様子じゃ直らないだろうなぁ♪」


 と言いつつ、なんだか楽しそうなミラーナさんだった。






 それにしてもミラーナさんって、王女様でありながら領民を殴ったり(きょう)(はく)的な言葉を()いたり…

 さすがに王都では王女様として相応(ふさわ)しい様、(せい)()に振る舞ってるんだろうけど…

 …振る舞ってるよね?

 なんか想像するのが(こわ)い…

ミラーナ王女の王都での振る舞いは、短編集の

『小さな魔法医エリカ外伝 ~ミラーナ王女は譲らない~』

『小さな魔法医エリカ外伝 ~ミラーナ王女の野望~』

『小さな魔法医エリカ外伝 ~ミラーナ王女は治めない~』

で読んでくれると嬉しいです。

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