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小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


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234/243

第233話 料理に貪欲なパティさん

「ねぇねぇエリカちゃん♪ エリカちゃんって料理上手なんでしょ? モーリィ(お姉ちゃん)に聞いたわよ? で、お願いがあるんだけど~」


 パティさんが治療院に入院した翌日。

 彼女は朝から青椒肉絲(チンジャオロース)を完食し、朝の部の診療が終わるまで自室でゴロゴロしてたのだが…

 って、自室と言えば聞こえは()いが、単に治療院の3階に()る使ってない(ふた)部屋(へや)(うち)(ひと)部屋(へや)を、パティさんの入院部屋として使ってるだけなんだけどね…

 それはともかく、朝の部の診療が終わると同時にパティさんから詰め寄られた。


「私に料理、教えてくれないかな? 私も料理は得意な方なんだけどさ、エリカちゃんが作る料理みたいなのは知らないのよね。旦那や子供にも食べさせてあげたいしさ。ダメかな?」


 なるほど…

 私の作る和食や中華料理に興味を(いだ)き、そのノウハウを知りたい。

 で、旦那さんや子供にも和食や中華料理を食べさせてやりたいってか。

 私利私欲で教えて欲しいんじゃなく、純粋に家族に(うま)いモノを食わせてやりたいってんなら、いくらでも教えますよ♪


「それじゃあ今日の昼食、一緒に作ってみますか? 今日の予定は拉麺(ラーメン)炒飯(チャーハン)ですけど…」


「ら… ()()()()? ()()()()()? 初めて聞くんだけど…?」


 だろうなぁ…

 けどまぁ、そんな事はどうでも()い。

 作って食べてみれば()いんだよ。





 ────────────────





「ん~~~、美味(おい)しかった~~~♡ ()()()()を食べる時に使う(はし)ってのが使い(にく)いけど、これは慣れるまでの辛抱(しんぼう)って感じかな? ()()()()()を食べる時に使う()()()はスプーンに似てるけど、ちょっと感覚が違うかな? まぁ、特に問題は無いけどね♡」


 パティさんは(はし)の使い方に苦労しつつも、拉麺(ラーメン)炒飯(チャーハン)美味(おい)しさに感動しながら完食。

 作り方を教えた時も、しっかりメモを取りつつ(みずか)実践(じっせん)してたので問題は無い。

 てか、私が作った拉麺(ラーメン)炒飯(チャーハン)はパティさんとアリアさんが食べたのだが、パティさんが作った拉麺(ラーメン)炒飯(チャーハン)は私が食べて問題無しと判断。

 これなら旦那さんや子供に食べさせても美味(おい)しいと言って貰えるだろう。

 しかし…


「作り方とかは理解したんだけど… 炒飯(チャーハン)はともかく、拉麺(ラーメン)はロザミアじゃないと作れなくない? この(めん)だけど、パスタとは違うよねぇ? タルキーニでは手に(はい)らないんじゃないかな?」


 と、拉麺(ラーメン)に使った(めん)に疑問を(てい)する。


「そうですね。今回の拉麺(ラーメン)に使った(めん)は、私が(いち)から作った物ですから、タルキーニでは勿論ですが、ロザミアでも手に入りませんよ? まぁ、作り方を教えるのは(やぶさ)かではありませんが…」

「教えてっ! 私、再現したいっ! この(めん)()(ごた)えもだし、細いのにスープがよく(から)むし! パスタには無い(ちぢ)(めん)ってのにも興味あるし!」


 目の色を変えて…

 と言うより、目を血走らせて迫るパティさん。

 少し落ち着け。


「そんなに難しくありませんよ。ただ、(めん)を作る時に(ちから)が必要ですけど、パティさんは魔法で腕力を強くする事は可能ですか?」


「それぐらい簡単よ♪ 子育てには(ちから)仕事も多いからね。使い慣れちゃった♪」


 にこやかに(うなず)くパティさん。


「なら、大丈夫ですね。じゃ、実際に作ってみましょう♪ 材料は、ここにある小麦粉、鶏卵(けいらん)、塩です」


「へ? これだけ? もっと色々()り込んでると思った…」


「これだけですよ。じゃ、早速始めましょうか♪」


 そして、私の指導でパティさんの中華(めん)作りが始まった。





 ────────────────





「け… 結構、疲れるのね… で、これからどうするの…?」


 小麦粉に鶏卵(けいらん)、塩、水を加え、()って()って()りまくったパティさんは、疲労困憊(こんぱい)の様子。

 (めん)にコシを出す為だから仕方無いけど…

 魔法で腕力や持久力を上げてるとは言え、さすがに2時間も(めん)(もと)()ねるのは疲れるわな…

 まぁ、()ねた(あと)は、しばらく生地(きじ)を寝かせる予定だったから丁度良いかも。


「お疲れ様でした♪ ()ねた生地(きじ)は、しばらく放置します。これを〝寝かせる〟って言うんですが、こうする事で(めん)にした時にコシが強くなるんです。この(あと)、この麺棒(めんぼう)生地(きじ)を伸ばし、折り(たた)むかクルクル丸めて包丁で細く切るんです」


「へぇ~… そんな棒を使うのね? 伸ばすってのが、いまいち(わか)らないけど…」


「やってみたら(わか)りますよ。で、伸ばして折り(たた)んだ、あるいは丸めた生地(きじ)を切って(めん)(じょう)にするのが、この包丁です」 


 言って私は〝麺切(めんきり)(ぼう)(ちょう)〟を見せる。


挿絵(By みてみん)


「何これ!? 初めて見る包丁なんだけど? こんなの、ロザミアの金物屋でもタルキーニの金物屋でも見た事ないわよ!?」


 そりゃそうだろ。

 これは私の前世の記憶から、最近プリシラさんに注文して作って貰った特注品なんだから。


「最近ロザミアに来た、プリシラさんってドワーフの鍛冶師に作って貰ったんですよ。麺切(めんきり)(ぼう)(ちょう)()(わた)りが長く、()の下まで刃が伸びているのが特徴です。また、まな板との(すき)()を生まないように刃に全く()りが無く、剣みたいな()(さき)もありません。(めん)を切るときは、(めん)の上に乗せたガイドとなる板(こま板)などに沿()って動かし、()(きざ)みに(めん)を切っていきます。この運動を助けるために重く作られているんです。


挿絵(By みてみん)


刃の前端部分にも刃が付けられていますが、これは切る為ではなく、切った(あと)(めん)(すく)い取るスクレーパーの役割を持たせている為なんですね」

「ちょっちょっちょっ! 情報過多(かた)っ! 一気に説明されても理解が追い付かないわよっ!」


 私が一気に説明すると、パティさんは(あわ)てて制止する。

 しまった、私の悪いクセが出たな…

 私は他人(ひと)に説明する時、とにかく全部話さないと気が済まない(しょう)(ぶん)なのだ。

 前世でもその事で()めた事もあるっちゃ~あるけど…

 まぁ、全てを説明してた事で、結果的には丸く(おさ)まってたけどな。


「とりあえず今日の夕食で仕上げを覚えて貰いますので、それまで休んでて下さい。(めん)以外の具材の作り方は、次の機会にしましょう。一気に説明しても、さすがに覚え切れないでしょうからね」


「確かにね… スープだって、お昼に食べた()()()()()だけじゃなくて、塩とか()()とか()()()()とか、いろいろな種類が()るんでしょ? ()()()()って、奥深いのねぇ…」


 そうなんだよなぁ…

 私も前世では、様々な味やトッピングを(ため)しては失敗を繰り返したモンだ。

 特に豚骨(とんこつ)拉麺(ラーメン)(いち)から作った時は、その(にお)いで近所の人から苦情が殺到(さっとう)し、(あやま)り倒したのも今となっては良い思い出だ。


「家庭で作るなら(しょう)()、塩、味噌(みそ)が作り(やす)いですかね? (しょう)()味噌(みそ)もロザミアでは普通に出回ってるので、タルキーニで手に(はい)らなくても手紙で知らせてくれれば送りますよ」


「じゃあ、ロザミア滞在中に()()()()()()()()()()()()、出来るだけ教えてね♪ タルキーニに帰ったら、頑張ってエリカちゃんの味を再現するから! 旦那や子供に食べさせてあげたいし! あ、子育てが落ち着いたら、食堂を経営しても()いかも! ロザミアでなら()()()()()()()()()も食べられるかもだけど、タルキーニじゃ食べられないモンね! 作り方を知ってるのがタルキーニで私だけなら、人気を独占して(はん)(じょう)するのは間違い無し! ロザミアとタルキーニはニュールンブリンクの大森林を(はさ)んで距離もあるし、簡単にノウハウは盗まれないよね! タルキーニで唯一(ゆいいつ)()()()()()()()()を提供する食堂をオープンさせて─」

ちぃたぁ(少しは)落ち着かんかぁあああああいっ!!!!」


 すぱぁあああああんっ!!!!


 私のハリセンの一撃(いちげき)がパティさんの脳天に炸裂(さくれつ)

 勿論、お(なか)への影響を考えて、吹っ飛ばす様な一撃(いちげき)ではない。

 ノーマルなハリセンを使用し、(すい)(ちょく)に振り()ろす。

 当然ダメージは無く、単に叩かれた部分が痛いだけ。


「ご… ごめん… 私、料理が好きだからテンション上がっちゃってた…」


「上がり過ぎですよ… まぁ、タルキーニで食堂を経営するのも()いですし、()()()()()()料理を提供するのも()いですよ? ところで、タルキーニって魚は簡単に手に(はい)りますか?」


 私が質問すると、パティさんは首を(かし)げながら答える。


「魚? うん、ロザミアとノルン(ほど)は近くないけど、馬車で4時間だったかな? カペリって漁村が()るから、魚は簡単に買えるわよ?」


「なら、私だけじゃなく、ルディアさんにも料理を教わると()いですよ? 昨日から夜番でギルドに泊まり込みなんですが、明日は非番ですし治療院も休診日なんです。なので、まるっと1日、料理の勉強会と行きましょうか♪」


 私の提案にパティさんは…


「ルディア… って、誰…?」


 あ、説明するの、忘れてたよ…

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