第223話 エリカの回顧録 ~後編~
PVアクセスが累計550000を突破しました♪
読んで下さってる皆様には、感謝しかありません♪
ありがとうございます♪
「そう言えば… エリカちゃんの治療院を建てる話が出る少し前かなぁ? ミリア、エリカちゃんに相談を持ち掛けたよねぇ♪」
悪戯っぽい表情をしたモーリィさんが、ミリアさんにニヤニヤしながら話し掛ける。
「ちょっ! モーリィ!? その話は…!」
「あぁ… ミリアさんが料理下手だったって話ですか? 今はもう改善してるんだから、話しても良いと思いますけどねぇ…」
慌てるミリアさんだったが、私が追い討ちを掛ける様に言うと、観念したのか…
「はぁ… 確かに今では克服してるからねぇ… と言っても、最終的にはエリカちゃんの魔法のお陰なんだけど…」
と、完全に諦めムードだった。
モーリィさんは、そんなミリアさんを追い討ちを掛ける様に話を続ける。
「今じゃ信じられないけどねぇ… エリカちゃんに聞いた話だと、隣に並んで一緒に料理を作ったのに、エリカちゃんの料理は普通に食べられても、ミリアの料理は一口食べただけでブッ倒れたってんだからねぇ」
「言わないでよっ! 私だって、努力したのに料理の腕が上がらないのに悩んでたんだからねっ!」
冗談めかして言っただろうモーリィさんだったが、マジで気にしてたミリアさんに胸ぐらを掴まれた上、涙ながらに詰め寄られて大慌て。
「ご… ごめんってば、ミリア… てか、そこまで気にしてたなんて思わなくてさ…」
「まぁ、確かに不思議でしたよねぇ… 今から思えば、何かに呪われてたんじゃないかって思いますよねぇ…?」
ミリアさんとモーリィさんの2人は呪いと聞いて顔を見合せ…
「あはは♪ 呪いって、そんなワケ無いじゃん♪」
「そうよねぇ… 仮に呪いだとしたら、エリカちゃんの魔法でも治らないんじゃない? 治ったとしても、しばらくしたら元に戻りそうだしねぇ」
モーリィさんは笑い、ミリアさんは冷静に分析する。
まぁ、確かにそうかも…
「呪い云々の話は置いといて、続きを話しましょうか? そもそも呪いってのは、私の思い付きで言っただけですしね」
ミリアさんとモーリィさんは、揃って頷いた。
ミリアさんが料理下手だった過去を知らないミラーナさん、アリアさん、ライザさん、ルディアさんは聞きたそうにしていたが…
脱線したら、いつまで経っても私の話が終わらないから無視する事にした。
「話を戻しますね? 不動産屋のランディさんから治療院建設の話を持ち掛けられて、私も必要性を痛感してたからOKしたんですよ。ミラーナさん、ミリアさん、モーリィさんは知ってますけど、土地の値段が金貨300枚、治療院の建設費も金貨300枚、合計で金貨600枚だったんですよね。まぁ、毎日金貨1枚程度の稼ぎはありますし、それまでの貯蓄もありましたから、あんまり気にしなかったんですけどね」
私がサラッと言うと、ミラーナさんは疲れた様な表情で突っ込む。
「合計で金貨600枚… それを毎月金貨20枚ずつ返済してたんだったよな? で、完済予定の半年前に、それまで貯めてた金貨を払って終わらせたんだっけ? 凄ぇよなぁ…」
それだけ頑張って毎日の治療をこなしてたからな。
ロザミアが別名『ハンターの街』って呼ばれるぐらいハンターの数が多く、毎日の様に多くのハンター達が治療に訪れてくれてたからってのが大きいんだけどな。
「ボクも一応、知ってるけどね。治療院の中でドラゴンの姿に戻ろうとして、エリカちゃんにハリセンで叩かれたから。その時に建物の値段を聞いて、驚いたっけ♪」
「楽しそうに言わないで下さいよ… ライザさんの稼ぎって、月に金貨2~3枚なんでしょ? 弁償するとなると、瓦礫の撤去費用に再建費で… 最短で167ヶ月、最長で200ヶ月も私に返済しなきゃいけないんですよ?」
楽し気に言うライザさんに、私はジト目で突っ込む。
ライザさんは宙を仰ぎ…
「167ヶ月…? 200ヶ月…? いまいちピンと来ないなぁ… 何年何ヶ月の方が解るんだけど…」
と言ってくる。
面倒臭いヤツだな…
「最短で13年11ヶ月、最長で16年8ヶ月ですよ。それも、全ての稼ぎを私に支払ってですからね? その間、ライザさんは自分の稼ぎを全く自分で使えない事になります。まぁ、月に金貨1枚は欲しいって言うなら構いませんけど、代わりに支払い期間が最長33年4ヶ月まで延びる事になりますけどね」
私がサラッと言うと、ライザさんは…
「ち… 治療院、壊さなくて良かった…」
と、私の説明にマジで真っ青になっていた。
「まぁ、ライザちゃんの件はともかくとして、返済が終わってくれたからアタシ達は無料で住まわせて貰えてるんだよな。それはエリカちゃんに感謝だよ♪ 安い所を選んでたとは言え、宿代もバカにならなかったからなぁ♪」
苦笑しながら言うミラーナさんに…
「だけどそれ、ミラーナさん自身が望んだ生活なんじゃ…?」
「宿代を払うのが嫌なら、領主邸を解体せずに住んでたら良かったんじゃ…?」
「そうよねぇ… そうしたら、少なくとも自分のお金を使わなくても生活は保証されてたわよね…?」
私、モーリィさん、ミリアさんが口々に言う。
だけど…
「ただ、それだとミラーナさんの税制改革(?)も無かったんだよねぇ…? だから偶然とは言え、エリカちゃんがロザミアに来て治療院を開いたのは…」
「そうねぇ… それを考えれば、ミラーナさんにとっては良かったのかも知れないわね…」
モーリィさん、ミリアさんが辛辣な感想を述べる。
だがまぁ、言いたい事は解る。
「ちょっと待ってくれよ、ミリアさん! アタシにとってはって、ど~ゆ~意味だよ!?」
解らんのかい…
私は溜め息を吐きつつ説明する。
「はぁ… ミリアさんとモーリィさんは1人暮らしとは言え、ギルド職員として毎月一定の稼ぎがありましたよね? だから日々の生活に問題は無かった筈です。アリアさんは魔法医になる事を目的としてロザミアに来ましたから、私の弟子として必然的に治療院に住む事になります。ライザさんは迷子のドラゴンですから無職ですし、ロザミアに来た時点では何も決まってない状態です。なので職が決まるまで、しばらく一緒に暮らす事になる可能性は充分に考えられます。職が決まった後は判りませんけどね。ルディアさんは、他国からの漂流者ですし、ロザミアに来た当時の成り行きから、やはり治療院で職が決まるまで面倒を見た可能性は充分に考えられます。だけどミラーナさんの場合は、それなりにハンターとしての稼ぎもありましたし、そもそも国王陛下の長子・長女だし… 治療院に住む事になったのも、ミラーナさんが強引に… と言って良いのか判りませんけど、私の了承を得ずにミラーナさんが勝手に… これも、そう言って良いのか判りませんけど決めましたよね? あ、ミラーナさんと暮らすのが嫌だとか、そ~ゆ~意味ではありませんので、そこは勘違いしないで下さいね? 私は今の生活に満足してますから。ミラーナさんを含め、皆さんの一緒に生活するのは楽しいし、出来れば永遠に続く事を希望してますから♪」
少しばかり長々と演説(?)してしまったが、これは私の本心だ。
「で、治療院を建てて少しした頃、ミラーナさんと出会ったんですよね。ロザミアに来て1年ちょっと経ったぐらいですかね? 初めて会った時は、さすがに混乱しましたよ…」
「あぁ~… 言っちゃ悪いんだけど、ミラーナさんって王女様のイメージから大きく離れてるモンねぇ♪」
私の言葉を受け、モーリィさんが楽し気に言うと…
ミリアさんが呆れた様に話し出す。
「そうよねぇ… 特に驚いたのは、ミラーナさんのロザミア領主着任の挨拶よね… 領主になるのが王女様だって聞いてたから、清楚な雰囲気の女性が丁寧な挨拶の言葉を述べると思ってたんだけど… あんな型破りな挨拶、初めて聞いたわね…」
そう言えば、ミラーナさんがロザミアの領主になったのって、私がロザミアに来る1年だか1年半前だって話だったな。
それにしても型破りな挨拶って…
私はジト目でミラーナさんを見るが、アリアさん、ライザさんに加え、ルディアさんまでもがミラーナさんをジト目で見ていた。
その目は私も含め…
『どんな挨拶したんだよ…』
と、半ば呆れる視線だった。
が…
「いやまぁ… 王女だって事で、舐められちゃいけないって思いもあったんだけど… って、これは言い訳だな… ハッキリ言って、アタシの本性… とまでは言わないけど、素を出した挨拶だったのは確かだな…」
ここで私の話は終わり、今度はミラーナさんの話を根掘り葉掘り聞く事になったのだった。




