表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

209/243

第208話 王妃様達の執念(?)には、どうやっても勝てない様です…

 私はロザミアに帰ってくるなり、再び王都(ヴィラン)に向けて出発する事になった。

 馬車に(ほう)り込まれた私は、同乗するミラーナさんに文句を言う。

 あまりに急な出来事に、マインバーグ伯爵とフィリップ様は()(ぜん)としているが…

 無情にも馬車は王都に向けて走り出す。


「ちょっと待てぇえええええいっ! なんで帰ってきたばかりなのに、また王都に向かわなきゃいけないんですかぁあああああっ!」


「なんでって、まずはロザミアでの最後の社交シーズンだからって事で、キャサリンから()()でもエリカちゃんを連れて来て欲しいって言われてるんだよね。それと、社交シーズンが終わったらロズベルム王国へ行って、そのままキャサリンの結婚式に出席するからだよ」


 しれっと答えるミラーナさん。

 しかし私は納得できず、文句を続ける。


「だからって… 私、ロザミアに帰ってきたばかりなんですよ? 少しぐらい休ませてくれたって…」


「まぁ、文句を言いたい気持ちは(わか)るんだけどさ、イルモア王国を離れるキャサリンの()(まま)に付き合ってやってくれよ。これが最後…………だと思うからさ♪」


 今の微妙な()は何なんだ?

 私はミラーナさんを無言で(にら)み付ける。

 ミラーナさんは私から目を()らし…

 ()らした先から更に目を()らすが、その方向からも目を()らし…

 気付けば馬車の中に居る全員からミラーナさんはジト目で(にら)み付けられていた。

 いや、正確には1人だけ窓の外を夢中で(なが)めてるけど…


「まぁ、キャサリン殿下の事であるから… なんだかんだ理由を付けて、社交シーズンには帰国しそうではある… と、ミラーナ様は考えておられるのではありませんかな?」


 見かねたマインバーグ伯爵が言うと、(みんな)からジト目で(にら)み付けられたミラーナさんは、小さくなりながらコクリと(うなず)く。


「それを考えると、帰国の(たび)にエリカさんを王都(ヴィラン)に呼び付けるぐらいの事はしそうですよねぇ…?」


 私の隣にちょこんと座ったアリアさん。

 首を(かし)げて(ほお)に指で()き、困った様な表情で話す。

 あぁ… キャサリン様(あの人)なら、それぐらいの事は平気でしそうだな…


「ボク、馬車での旅って初めてだよ♪ ガタゴト()れるのと遅いのはイマイチだけど、何もしなくて()いのは(ラク)だなぁ♪」


 マイペース過ぎるライザさんは(ほう)っておこう…

 それより私は気になる事が…


「聞きたいんですけど、治療院ってどうなってるんですか? まさかと思いますけど、誰も居ないなんて事はないでしょうね…?」


 私は殺気をMAX(マックス)にしてミラーナさん、ミリアさん、モーリィさんを(にら)み付ける。

 3人は顔面を蒼白(そうはく)にして…

 って、おいっ!

 治療院を完全に留守にしたら、ロザミアがどうなると思ってんだ!?

 私がロザミアに定住する前は、毎年何人か死んでたってマークさんが言ってたんだぞ!?


「3人共、演技は()めて下さいよ… エリカさん、安心して下さい。ちゃんとアンドレ殿下が20人も魔法医を()(けん)して下さってます。実力的には申し分なく、骨折を1日に20人ぐらい治せる魔法医ばかりです」


「へっ!?」


 私は目を丸くしてアリアさんを見る。

 続いてミラーナさん達を見ると…

 3人は肩を(ふる)わせて笑いを(こら)えていた。


「…な? アタシの言った通りだろ? エリカちゃん、治療院を(カラ)にしたフリをしたら、絶対に(どう)(よう)するって…」


「…凄い殺気だったよねぇ…♪ すぐにアリアちゃんが演技だってバラしたから良かったけど、そうでなかったらハリセンの一発ぐらい食らってたかも…」


「…だから()めた方が()いって言ったじゃないですか… まぁ、私もアリアちゃんがバラすだろうって思ったから、同意したんですけど…」


 ずどぱぁあああああんっ!!!!

 めきぐしゃぁあああああっ!!!!


(くだ)らん冗談は()めて下さいっ! 私にとってはキャサリン殿下の()(まま)に付き合うより、治療院の方が何より大切なんですからね!」


「エリカさん… 3人共、聞こえてないと思いますよ…?」


 アリアさんが私の服をツンツン引っ張りながら言うので3人を見ると…

 私の(はな)ったミラーナ仕様ハリセンの一撃で、3人は(まと)めて馬車の床に頭をめり込ませて失神していた。





 ────────────────





「すまぬな、エリカ殿… 私としても、まさかロザミアに着いた()(たん)(とん)()(がえ)りする事になろうとは…」


「まぁ、日程を考えると仕方無いのかもしれませんけどねぇ… それでも少し飛ばせば社交シーズンには間に合うんだし、1日か2日ぐらいはロザミアで休めたんじゃありませんか?」


 私がロザミアに帰り着いたのは2月10日。

 普通に馬車で移動するなら王都(ヴィラン)までは20日(はつか)()かるから、3月から始まる社交シーズンに間に合わせる為、すぐに出発するのは理解出来る。

 が、私が馬車を牽引(けんいん)する馬や御者に()()()()()()()を掛ければ、眠らず休まず王都(ヴィラン)まで移動する事は可能。

 半分以下の日程で王都(ヴィラン)まで行けるのだ。

 …って、いつだったか王都(ヴィラン)からロザミアに帰る時に、その方法で帰ってきた様な気が…


「それなら父上、エリカちゃんの言う()()()()()とやらでヴィランに戻りましょう。キャサリン殿下達も、そんなに早くエリカちゃんが戻るとは思っていないでしょうから、今度は王都邸(我が家)でノンビリお風呂に入って(いただ)けるのでは?」

「それ、採用!」


 フィリップ様の意見に、私は間髪入れず賛成する。


「当然ですが、ミラーナさん達も一緒で(かま)いませんよね? (かり)にミラーナさんだけでも王宮に帰ったら、私が王都(ヴィラン)に居るのがバレちゃうかも知れませんからね」


「…それもそうか。アタシだけが先行してヴィランに戻るってのも、おかしな話だからな」


 ミラーナさんも賛成してくれた様だ。

 そんな中、おずおずと手を()げるルディアさん。


「それ、私もですか…? 貴族様の()(やしき)に、私みたいな黒人がお邪魔しても大丈夫なんでしょうか…?」


 人種を気にしてんのかい…

 ロザミアでは人種差別は無いけど、王都は別だとでも思ってんのかな?


「人種を気にしているのであるか? それなら気にする事はない。イルモア王国では人種に()る差別を禁じておるし、貴殿の事はランジェス大公(たいこう)から聞いておるのでな」


「父上の言う通りだから安心してよ。王都(ヴィラン)には他の街より有色人種が多いんだ。それに、僕の婚約者も黒人ではないけど有色人種でね。少し浅黒い肌をしてるんだけど、チャーミングな女性なんだ♡」


 話の後半、フィリップ様は全員がドン引きする(ほど)デレていた。


「フィリップの(のろ)()は置いといて… ルディアさん、マジでイルモア王国(この国)には人種差別なんて無いから安心してくれ。事実、アタシ達みたいな白色人種とルディアさんみたいな黒色人種が婚姻を結んでる例も多いんだ。アタシの元・婚約者候補にも、何人か黒色人種が居たしね♪」


「フィリップもだが… 白色人種も含め、全員がミラーナ様にブッ飛ばされたのであるがな。はっはっはっ♪」


 おっさん… 余計な事を言うなよ…

 フィリップ様、落ち込んでるじゃんか…


「父上ぇ~… もう忘れさせて下さいよぉ~… ミラーナも笑うなよぉ~…」


 (しゃ)(こう)()()(ぐう)みたいになった()から、ツ~ッと涙を流すフィリップ様。

 ミラーナさんはと言うと…

 フィリップ様から顔を()らし、肩を震わせて笑っていた。

 いや、ミラーナさんだけじゃなく、事情を知っているミリアさん、モーリィさんも、顔を(うつぶ)せ必死(?)に笑いを(こら)えている。

 てか、いつの間に復活したんだ、テメー()…?

 ついさっきまで、(ハリセンを食らって)馬車の床に頭をめり込ませて失神してただろうが…


「…まぁ、(せま)い車内での一撃でしたからねぇ。威力が半減してたんじゃないですか?」


 アリアさんが冷静に分析(ぶんせき)(?)する。


「なるほど… なら、(せま)い空間でも威力が落ちないハリセンを…」

「「「それは()めてっ!」」くれっ!」


 ミラーナさん達3人は、全力でハモって私の研究(?)を()()するのだった。




 その()、私のドーピング魔法で移動した私達は、社交シーズンが始まる10日(とおか)前に王都(ヴィラン)に到着。

 少しはノンビリ出来ると思ったのだが…

 私の魔力を(かん)()した王宮に(つと)める侍従の1人がキャサリン様に密告(チクり)

 私は王宮に拉致(らち)され、毎日王妃様達からお風呂攻撃を食らわされたのだった。

 ど(ちく)(しょう)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ