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小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


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206/243

第205話 逃げられませんでした… 負けてたまるかぁあああああっ!

 土曜日の朝。

 私は王都の魔法医達を王宮前の広場に集め、横一列に並べて『魔力使い切り治療大会』を開催した。

 勿論、王都の住民達には告知済み。

 しかも破格の銀貨1枚で。

 なので、怪我や病気で治療を望んでいても、値段で二の足を踏んでいた人達が(たい)(きょ)して押し寄せてきた。

 お(かげ)で『魔力使い切り治療大会』は大盛況。

 そんな中、(よわ)()()く魔法医が()ると、私が行って魔力残量を()る。

 そして…


「コラッ! もう1人や2人、あんたに残った魔力量なら治療できるでしょ! あんたも手を抜くなっ! この程度の怪我、1回の治療で(かわ)()させられないなら魔法医なんか()めちまえっ! (ほか)の魔法医達も、()()(ごと)と思ってんじゃないぞ! 今日の昼からと、明日は1日休めるんだから魔力を使い切れっ! 魔力の底上げは国王命令だって事を忘れるな! ()(ごと)()かすヤツは、国王陛下から(せい)(さつ)()(だつ)の権限を(あた)えられている私が殺してやるから──」

「エリカ様! 落ち着いて下さい! (かれ)()(わか)っております! それと、殺してはいけません! (せい)(さつ)()(だつ)の権限も(あた)えられてはおりません! それは()くまでも言葉の(あや)です!」


 えっ?

 そうなの?

 確か陛下は、最大魔力容量(キャパシティ)の底上げについて出来ないとか()かす連中には、私が『怒りに(まか)せて貴殿等らを骨も残さず消滅させると伝えよ!』って言ってたよ!?

 その時には言い過ぎとか思ったけど、それぐらい真剣に魔力の底上げが必要だと…

 傷病人を治す事の重要性を(さっ)してくれての発言だと思ったんだけど…


「それはエリカ様の(おっしゃ)る通りです! ですが、王都の魔法医を殺してしまっては、下手をすればエリカ様がロザミアを離れて王都に引っ越し、(てい)(じゅう)する事になりかねませんぞ!? (よろ)しいのですか!?」


 うっ…

 それは困る…

 私の生活基盤は、()くまでもロザミアだ。

 私はロザミアが気に入ってるし、ロザミアの住人達からの信頼・信用も()ている。

 それとは別に、ロザミアには私とアリアさん以外に魔法医は()ないのだ。

 まぁ、アリアさんの実力を考えると、彼女にロザミアを(まか)せるって選択肢も考えられない事もないのだが…

 アリアさんの性格を考えると、ロザミアで私の()わりの魔法医として定住するとは思えない。

 まず間違いなく、私と共にロザミアを離れて王都に付いてくるだろう。

 そうなると、またロザミアは魔法医不在の状態になり、私がロザミアに来る以前の様に、毎年何人ものハンター達が命を落とす事に…

 ロザミアは『ハンターの(まち)』と呼ばれており、住人の半数以上がハンターとして活動している。

 そんな(まち)から魔法医が()なくなっては…

 ハンター達は勿論だが、それ以外の人達も怪我や病気を自力で治さなくてはならなくなる。

 ロザミアには(くすり)調(ちょう)(ごう)できる人も()ないし、ポーションを作れる人も()ない。

 逆に、王都には魔法医が(あふ)れる(ほど)

 とは言い過ぎか。

 王都の魔法医は180人ちょっと。

 人口5万人程度の王都で1人の魔法医が担当する患者は、計算上300人にも満たない。

 王都の住人全員が()()治療を必要としているワケもないし、1人の魔法医が1日に治療する人数は知れている。

 事実、どいつもこいつも1日の治療人数は10人前後だと言っていた。

 しかも、最低金額とされている()()()()()が銀貨5枚だと…

 重傷・重症患者だと、小金貨5~15枚も取ってるんだとか…

 ふざけんなよ!?

 こちとら毎日100~200人を、1人につき銀貨1枚で治療してるってのに…

 それこそ手足が千切(ちぎ)れた治療は勿論、一歩遅けりゃ死んでた様な傷病人の治療もだぞ!?

 そりゃ、魔法医──医者──だって生活があるから金は必要だよ!

 確かに風邪は万病の(もと)って言うから油断できないし、重傷・重症患者を治療する魔力消費量は大きいけど!

 だからって風邪の治療で銀貨5枚は暴利だろ!

 重傷・重症患者も、小金貨5~15枚は取り過ぎだろ!


「エ… エリカ様… おち… 落ち着いて… 下さい…」


 フレデリック教授が私の腕を(ちから)()くペシペシ(たた)く。

 あ… 思わず教授の首、()め上げてたよ…


「す… すいません、つい… てか私、もしかして…?」


「…はい、全部(しゃべ)っておられました…」


「一応、聞きますけど… 全部って…?」


「はい… 『うっ… それは困る…』からです…」


 ホントに全部やんか!

 やっぱり思った事を口に出すクセは治らないなぁ…

 そんな事を思いつつも、再び私は魔法医達に魔力を使い切らせるべく、(げき)を飛ばすのだった。





 ────────────────





「お… おぉ… 戻ったか、エリカ殿。朝から1日ご苦労であったな。…で、魔法医達の様子はどうであったかな?」


 最初の『魔力使い切り治療大会』を終え、戻った私をマインバーグ伯爵が出迎える。

 が、(なん)だか(きょ)(どう)()(しん)な気が…


「あの~、マインバーグ伯爵様…? 何か隠してませんか?」


「えっ…? と…」


 私はマインバーグ伯爵をジト目で見詰める。

 すると…


「…だから言ったじゃありませんか、お母様。マインバーグ伯爵は態度に出るから、内緒にしてエリカちゃんを驚かせるのは無理ですって…」


「お姉様の言った通りでしたね… あ~あ、サプライズでエリカちゃんに驚いて欲しかったのに…」


「ごめんなさいね~… マインバーグ伯爵、無理を言いましたわね。考えてみれば、貴方(あなた)()(とう)()でしたものね。(わたくし)達の(らい)(ほう)を知られない様に演技しろと言う方が、無理難題でしたわね」


 と、悪魔の笑顔──私にとっては──を浮かべて王妃様、キャサリン様、ロザンヌ様が現れたのだった。


「えぇえええええっ!? なんで伯爵邸(ここ)に王妃陛下が!? それに、キャサリン殿下とロザンヌ殿下も!? なんで!? どうして!?」


 私は思わず後退(あとずさ)る。

 そしてチラッと門の方を見ると…

 いつの間に現れたのか、剣や(やり)(たずさ)えた兵士達が何人も…

 絶対に逃がさないって(かま)えかよ…

 すると、キャサリン様がズイッと私に近寄り…


「…と言うワケで、今からエリカちゃんは(わたくし)達と一緒にお風呂ですわ♡」


 ガシッと私の片腕に抱き付く。


「何が『…と言うワケで』なんですかっ!? そもそも私は了承して──」

「反論は無しですわ♡ 王都(ヴィラン)()て、(わたくし)達から逃げられると思わない事ですわ♡」


 言いつつ、キャサリン様とは反対側の腕に抱き付くロザンヌ様。

 そして…


「「お母様♡ ドアを開けて下さいまし♡」」


「は~い♡」


 ハモって言う2人の王女(キャサリン&ロザンヌ)様の指示で、ドアを開けるニコニコ笑顔の王妃(マリアンヌ)様。

 すると2人の王女(キャサリン&ロザンヌ)様は腕に抱き付いたまま私を持ち上げ、伯爵邸の浴室に向かって私を運んでいく。


「やめぇえええええいっ! ただでさえ疲れてるのに、更に風呂で疲れさせんでくれぇえええええっ!」


 私は(あし)をバタつかせて抵抗するが、私の小さい身体(からだ)では全く無意味だった。

 そして3人は好き放題に私を洗い、満足したのかホクホク笑顔で王宮へと帰っていった。





 ────────────────





「すまん、エリカ殿… 大丈夫であるか…?」


 グッタリとソファーに横たわる私を、心配そうに(のぞ)き込むマインバーグ伯爵。


(あやま)らないで下さい… 王妃陛下や王女殿下達から、何を言われたのかは知りませんけど… (さか)らえませんよねぇ…?」


「まぁ… そうであるな… エリカ殿の言う通り、私では(とう)(てい)(さか)らえぬ。いや、アレックス殿でも無理であろうな。なにしろ国王陛下ですら、エリカ殿を私の(やしき)に滞在させる事を()められ、泣きながら弁明したそうであるからな…」


 アレックス…?

 …あぁ、ルグドワルド侯爵の事か。

 てか、国王陛下…

 泣いたんかい…

 それにしても、王妃様や王女様達…

 ここまで私を風呂で洗う事に執着するとは…

 恐ろしい執念だな…

 だが私は(あきら)めない!

 絶対、この王都滞在を平穏(へいおん)に過ごしてやる!

 そう決意した私は、早速行動に移したのだった。

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