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小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


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204/243

第203話 ほのぼのとしたマインバーグ伯爵邸、王宮では…?

 時は少し(さかのぼ)り、エリカがマインバーグ伯爵に連れ去られた(?)翌日。


「なんねぇ。エリカちゃん、ヴィランに連れて行かれたんかや? ほしたら(そうしたら)治療院はどがいする(どうする)(だい)? アリアちゃん1人で()()するんかや(するのかい)?」


 夜の部の診療開始から、失神したサミュエルを引き()ってきたプリシラが(たず)ねる。


「まぁ、アリアちゃんの最大魔力容量(キャパシティ)なら問題無いよ。多分だけど、ヴィランの魔法医100人と治療競争しても負けないんじゃないかな?」


「ミラーナさん、それはさすがに無理ですよ… 王都の魔法医って、1日に骨折を7~8人治せるって聞いてますよ? 単純計算でも、1000人近く治療しないと勝てないですから… エリカさんならまだしも、私には無理です…」


 アリアは()(しょう)しながら答える。


「まぁ、確かにエリカちゃんにしか出来ないだろうなぁ… エリカちゃんの最大魔力容量(キャパシティ)は底抜けと言うか、天井知らずだからなぁ…」


「そうよねぇ… エリカちゃん以外に1日で何百人も治せる魔法医なんて、()ないでしょうしねぇ…?」


「…って言うかさ、ヴィラン(王都)の魔法医の実力が低過ぎなんじゃない? だからエリカちゃんが講師として呼ばれた(拉致された)んでしょ?」


 アリアの言葉に同意(?)するミラーナ、ミリア、モーリィ。


ほぅよのぅ(そうだねぇ)… エリカちゃんやアリアちゃんに比べよったら、王都の魔法医は情けなぁ(無い)けぇ(から)ねぇ… いちんち(1日)に骨折を7~8人しか治せん(治せない)って… ウチがサミュエルをシゴウしゃげた(シバき倒した)時も、3人ぐらい集めんと治せんかったけぇね」


 サラッと言うプリシラだったが、全員が彼女を『やり過ぎだ』と言わんばかりのジト目で見るのだった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「さて、エリカ殿。そろそろ風呂に入って寝るとするかね?」


 夕食を終え、歓談(かんだん)する事しばし。

 時計が21時を少し過ぎた頃、マインバーグ伯爵がソファーから立ち上がりながら言う。


「そうですね♪ お背中、お流しします♪」


 私も立ち上がりながら(こた)えると、(ひか)えていた執事やメイドが驚く。


「だ… 旦那様! もしやエリカ様とご一緒に!?」


「あぁ、私には息子しか()らぬ(ゆえ)()()()()()()()()()()のは、(かな)わぬ夢だと(あきら)めていたのだが… その夢をエリカ殿が(かな)えてくれるそうだ♪」


 少し()れつつも、(うれ)しそうに話すマインバーグ伯爵。


「それは… ()うございました… こんな事を言っては(ぼっ)ちゃま達に申し訳無く思いますが、旦那様は男の子が()まれる(たび)に残念そうにしておられましたから…」


 それ、本当に申し訳無いぞ、マインバーグ伯爵…

 同じ残念がるにしても、生まれた事を喜んでからにしろよ、おっさん…

 生んでくれた奥さん(ミランダ様)にも悪いだろ…

 まぁ、私は前世で妹が()たし、子供の頃は一緒に風呂にも入ってたから、伯爵の気持ちはイマイチ理解出来ないんだが…

 それでも男として、女の子と一緒に風呂に入るのが嬉しいってのは(わか)る。

 てか、嬉しくない男なんて()ないだろ!

 いやまぁ、同性愛者は別だろうけどさ…

 それは別として、スキップするのは()めろ、伯爵…

 使用人達がドン引きしてるぞ…

 そうして私は、スキップするマインバーグ伯爵の(うし)ろを(しゃ)(こう)()()(ぐう)みたいな表情の侍従長と付いて行くのだった。





 ────────────────





「侍従長さん、私が服を脱ぎ始めたら顔を()らしてましたねぇ…」


 マインバーグ伯爵の背中を流しながら話し掛けると、伯爵は苦笑しながら言う。


「エリカ殿の(はだか)を見ては失礼だとでも思ったのであろう♪ ()(やつ)からすれば、見た目は(まご)と変わらんであろうにな♪」


 そうなのか?

 見た感じ、マインバーグ伯爵より少し(とし)(うえ)

 50歳を少し過ぎたトコだと思うんだけど…?


「うむ、セガールは私より(むっ)つ上の51歳であるな。確か、20歳(はたち)で長男が()まれ、その長男も20歳(はたち)で子を()しているそうであるから、(まご)は10~11歳であったかな?」


 なんだ、それなら私は本当に(まご)──見た目()()は──みたいなモンじゃないか…

 顔を(そむ)ける必要、無いと思うけどな…?


「それは仕方あるまい。王都(ヴィラン)に住む(もの)(ども)からすれば、エリカ殿は聖女と思われておるのだ。まぁ、数年前の王都(ヴィラン)での()()()王都(ヴィラン)だけでなく、周辺の領地でも有名であるからな。そんな人物の(はだか)を見るのは()(けい)だとでも思ったのであろうな、はっはっはっ♪」


 いや、笑ってる場合ぢゃねぇよ、おっさん…

 私は聖女(あつか)いなんて()(めん)(こうむ)るっての!

 まぁ、言っても無駄なんだろうけどね…


「はぁ… 何度も言ってますけど、私は聖女じゃありませんからね…? それはともかく、マインバーグ伯爵様の背中って大きいんですねぇ…」


 今まで服の上からしか見た事がなかったし、旅の途中での治療でも服は着たままだったから、(ナマ)の背中を見たのは初めてなんだよな…

 治療院に泊まって貰った時も、風呂は一緒じゃなかった──当然だけど──し…


()(じゅう)(かた)だったか()(じゅう)(かた)だったかを治療して貰った時にも言ったが、これでも(きた)えておるのでな♪ そんじょそこらの若者には負けぬだけの自信はあるのだよ♪」


 うん、それは(わか)る。

 特に(こう)(はい)(きん)なんて、前世での(ホン)(コン)の俳優(けん)武術家みたいじゃん…

 下手すりゃ、それすらも上回ってるんじゃないか?

 こんな凄い身体(からだ)の伯爵を簡単に負かしてたのか、ミラーナさんは…

 そんな事を考えていると、伯爵はクルリと私の方へ身体(からだ)を向ける。


「では、今度は私がエリカ殿の身体(からだ)を洗って(しん)ぜよう。タオルを貸したまえ♪」


 と、言うが早いか、私の手からタオルを取ると、液体石鹸を追加して洗い出す。


「あっ、あのっ! 伯爵様!?」


 驚く私に伯爵はニッコリと笑い…


「娘の身体(からだ)を洗う。これも夢だったのだよ。なぁに、息子達も小さい頃は、よくこうやって洗ってやったものだ」


 と、実に(うれ)しそうに私を泡だらけにしていく。

 なんだろう…?

 王妃様達に洗われる時と違って、疲れや恥ずかしさを全く感じないんだけど…?

 疑問に思った私がポロッと伯爵に言うと、伯爵は少し考えてから答える。


「フム… それは私が自分の娘と思って洗っているからではないかな? エリカ殿が王妃様達に洗われて『疲れる』『恥ずかしい』と感じるのは、きっと遊び半分で洗っているからなのであろうな…」


 確かに…

 王妃様にせよ2人の王女(キャサリン&ロザンヌ)様にせよ、私を自身の子供と思って洗っているワケじゃないからなぁ…

 王妃様はともかく、2人の王女(キャサリン&ロザンヌ)様は特に…

 子供が()ないんだから当然と言えば当然なんだが…


「王妃様達に洗われるのは疲れますけど、伯爵様に洗って(もら)うのは気持ち()いですね♡ 洗われて疲れると感じるのか、気持ち()いと感じるのかは、洗う(がわ)の気持ちで変わるって事なんでしょうね♡ 私、伯爵様となら毎日でも一緒に入りたい気分です♡」


「そ… そうであるか? なら、エリカ殿がヴィランに来た時は、()(やしき)(じょう)宿(やど)にしても良いのであるぞ? 願わくば、私が領地に戻っている時は侍従長(セガール)と共に入ってやってはくれぬか? 実は()(やつ)も娘が()らず、(まご)も男ばかりであるからな。きっと、娘や孫娘と一緒に風呂に入りたかったと思っておろう」


 私は二つ返事で了承した。

 が、さすがに…


「この(やしき)()(あいだ)は、私の事を『パパ』と呼んでくれたら、更に(うれ)しいのであるが…」


 との提案は『伯爵様に対し、それは不敬である』と全力で断ったが…

 鼻の下、伸ばし過ぎだろ、おっさん…





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 その頃、王宮では…


「陛下… (わたくし)達がエリカちゃんの(らい)(ほう)(こころ)()ちにしていた事はご存知ですわよね…?」


「お父様! (わたくし)、もうすぐアンドレ様と結婚してイルモア王国を離れますのよ! エリカちゃんをお風呂で洗う機会も、今回の(らい)(ほう)が最後かも知れないんですのよ! その機会を奪うなんて、お父様は悪魔ですわ!」


「お姉様の気持ち、(わたくし)にも痛いほど(わか)りますわ! (わたくし)(いず)れは結婚して、イルモア王国を離れますのよ! 残り少ないエリカちゃんをお風呂で洗う機会を奪うなんて、どうしてくれますの!?」


 マリアンヌ、キャサリン、ロザンヌから、エリカがマインバーグ伯爵(てい)に宿泊する許可を出した事を責められ泣いている国王、アインベルグの悲惨な姿があったのだった。

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