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小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


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203/243

第202話 私の提案に、ウキウキし過ぎるマインバーグ伯爵です…

 ロザミアを出発してから20日(はつか)、ようやく私達は王都(ヴィラン)に到着したのだが…

 (どう)(ちゅう)(すべ)ての街や宿場町では、宿(やど)がホプキンス治療院かと勘違いする程に(いそが)しかった。

 お(かげ)で私は()(ろう)(こん)(ぱい)

 王妃様、キャサリン様、ロザンヌ様からの()()()()()(かい)()する事が出来ず、またも好き放題洗われたよ…

 その所為(せい)で今回の一件──私を逃がさない為トーマス・ボウマン少尉に指示し、立ち寄る街や宿場町に私の情報を流させた黒幕を探す気力すら無くなったわ…


随分(ずいぶん)と疲れておる様だが… エリカ殿、大丈夫であるか…?」


 案内された部屋でグッタリする私の顔を、マインバーグ伯爵が心配そうに(のぞ)()む。


(どう)(ちゅう)での治療行為に関しては問題ありませんよ… ロザミアでの日常と変わりないですからね… 疲れたのはお風呂です…」


 私が答えると、マインバーグ伯爵は首を(かし)げる。


「風呂で疲れたのであるか? 風呂は疲れを(いや)()(はず)だが…?」


「王妃陛下、キャサリン殿下、ロザンヌ殿下から全身を洗われまくるんですよ… 何が楽しいのか理解に苦しむんですけど、皆さん()()として私の身体(からだ)を洗うんです… それがもう、精神的に疲れて疲れて…」


 私が言うと、伯爵は何やら考え込み…


「王妃陛下、キャサリン殿下、ロザンヌ殿下から全身を…? それは(うらや)まし… ごほっ、ごほっ! 失礼… いや、私には娘が()らぬ(ゆえ)、つい(ほん)()が… ではなくて! (なん)と言えば良いのやら…」


 マインバーグ伯爵も男なんだなぁ…

 でもまぁ、男親としては娘と一緒に風呂に入るのは夢なのかも知れないな…

 なら、ここは私が一肌(ひとはだ)()ごうじゃないか!

 私自身、中身は男なんだから伯爵と一緒に風呂に入るのは何の抵抗も無いしな。


「あの、マインバーグ伯爵様…? 王都の魔法医達の講師を(つと)めるのに、必ずしも王宮に滞在する必要はありませんよね? 講師を(つと)める場所が王宮だとしても、寝泊まりする場所まで王宮である必然性は無いと思いますけど…?」


 私の意見に伯爵は(ちゅう)(あお)いで考える。

 待つ事しばし。

 やがて伯爵は考えが(まと)まったのか、私を()()えて話し始める。


「確かにエリカ殿の言う通りではあるな。講師を(つと)めて貰う場所は王宮の会議室であるが、今までと違って(ほう)(しょう)する(ため)ではないからな… だが、それなら()()で寝泊まりするつもりであるか? 途中の街や宿場町での診療で宿泊費ぐらいは(かせ)いだではあろうが、患者1人につき銀貨1枚の治療費では(たい)した(かせ)ぎにはならなかったであろう?」


 いや、普段と変わらないぐらい忙しかったから、金貨20枚は(かせ)いだけどね?

 言う必要はないから言わんけど…


「そうですね… なので、ご迷惑でなければマインバーグ伯爵様の王都(てい)に泊めて(いただ)ければ助かるし、(うれ)しいのですが… それに、伯爵様さえ良ければ一緒にお風呂に入って背中を流させて(いただ)いても… 本当の娘ではありませんが、私と一緒にお風呂に入る事で伯爵様の夢… と言って()いのか分かりませんけど、それ──娘と一緒に風呂に入る──が(かな)えられたらと思ったんです… ダメですか…?」


 私は少し(うつむ)き、(うわ)()(づか)い──勿論、計算()く──でマインバーグ伯爵を見て(こん)(がん)する。

 マインバーグ伯爵は困り顔をしつつも真っ赤になり、汗をダラダラ流しながら話し始める。


「ま… まぁ、エリカ殿の(たっ)ての願いであると言うなら、私としても(やぶさか)かではないし… (さき)(ほど)も申した様に、必ずしも王宮に滞在する必要は無いのであるからして… しかし、エリカ殿は私の王都(てい)に滞在するのはともかくとして、私と一緒に… その… 風呂に入るのに抵抗は無いのであるか? 見た目こそ子供だが、実年齢は成人であろう?」


 おっさん… なんか()(わい)く思えてきたぞ…


「私は(かま)いません。勿論、伯爵様に(した)(ごころ)が無ければですが…」


「そっ そんな事、あるワケ無いではないか! この様な事を言うのは迷惑かも知れぬが、エリカ殿は私の娘みたいなモノだと思っておるのだ! …よかろう。今から陛下に申し上げてみよう。しばらく待っていて(いただ)けるか?」


 私が黙って(うなず)くと、マインバーグ伯爵は部屋を出ていった。


 よっしゃぁああああああっ!

 これで王宮から逃げ出せるぜ!

 私は急いで王宮から逃げ出す為の荷造りを始めるのだった。





 ────────────────





「なるほど… エリカ殿の言い分も道理であるな… マインバーグ伯爵、()殿(でん)(やしき)でエリカ殿を充分にもてなしてやってくれ」


「はっ! 承知致しました!」


 ニコニコ笑顔でマインバーグ伯爵は敬礼し、(えっ)(けん)()を出ていく。

 急いでエリカに知らせようと小走りになるマインバーグ伯爵だったが、いつの間にかスキップに変わっており、その姿を見た者をドン引きさせたのだった。

 勿論、(えっ)(けん)()から後ろ姿を見た国王(アインベルグ)もである。


「ルドルフ… 何をそんなに()()()()()おるのだ…?」





 ────────────────





「あっさり許可が()りましたね… まぁ、私としては助かりましたけど♪」


「うむ、王妃陛下達の楽しみを奪ってしまった事は申し訳無く思うのであるが、エリカ殿が疲れて講師としての役割を(まっと)う出来なくなるのでは(ほん)(まつ)(てん)(とう)であるからな。ただ、国王陛下には(つら)い思いをさせてしまうのではないかと、(こころ)(ぐる)しいのではあるが…」


 あぁ… 王妃様達から責められるだろうからなぁ…

 すまん、陛下。

 頼むから()えてくれ。

 これも私の心身の平和の為なんだ…

 私は心の中で陛下に()びた。


「エリカ殿、顔がニヤけておるぞ? まぁ、王妃陛下達からの風呂攻撃から(のが)れられて嬉しいのであろうが…」


 あら?

 本音が顔に出てましたかね?


「えっ? えっと… 私、ニヤけてました? …それはともかく、私の講師としての仕事はいつからでしょうか? 出来れば今日は遠慮させて欲しいんですけど…?」


「あぁ、それは問題ない。王都の魔法医達の休診日に講義を予定しておる(ゆえ)な。なので、今日と明日は私の(やしき)(くつろ)いでくれ」


 それは助かる。

 マインバーグ伯爵の王都(てい)でノンビリ過ごさせて(もら)いつつ、気が向いたら王都を散策しようかな?

 てか、王都の魔法医の休診日って、(みんな)が同じ日なのか?


「うむ、王都の魔法医達の休診日は、日曜が丸1日、水曜と土曜が昼からの休みであるな。月に3日、5の付く日のみ休みのエリカ殿からしたら、(ふん)(がい)するやも知れぬが…」


 …いや、さすがに怒らないよ?

 だって前世の日本の医療機関の休診日と(ほとん)ど同じだし…

 勿論、例外はあるけど…


「まぁ、(みな)さん私みたいに最大魔力容量(キャパシティ)が多くありませんからね。それぐらい休まないと魔力が回復しないんでしょう。とりあえず私は講師に相応(ふさわ)しい服でも買いに行きます。さすがに普段着で、と言うのは失礼でしょうし… 何処か()い店をご存知ありませんか?」


「講師に相応(ふさわ)しい服であるか…? それなら私の妻(ミランダ)の行き付けの店が良いであろうな。案内しよう」


 そうして私はマインバーグ伯爵に連れられ、ミランダ様()用達(ようたし)の店へと向かったのだった。





 ────────────────





「エリカ殿、このスーツは(いか)()であるか? この花柄のブラウスを合わせれば講師としての気品だけでなく、貴殿の()(わい)らしさも引き立ててくれると思うのであるが? おっ、このドレスなども良いのではないか? 王宮で着ている物よりピシッとしており、講師としても申し分ないであろう♪」


 マインバーグ伯爵は、店に入るなり()()として服を選び始めた。

 それにしても、さすがは王都。

 それも貴族が行き付ける店だけあって、どの服も目が飛び出るほど高い。

 値札を見て、私が(ちゅう)(ちょ)していると…


「値段を気にしているのであるか? それなら気にする事はないぞ? ここでの支払いは私が(すべ)て持つから、安心して好きな服を選んでくれたまえ♪」


 おっさん…

 はしゃぎ過ぎだよ…

 そうして私はマインバーグ伯爵に言われるがまま、大量の服を購入する羽目(はめ)になったのだった。

 いや… 勿論、支払いはマインバーグ伯爵だけどね…

 そんなに私が一緒に風呂に入るって言ったのが(うれ)しかったんかい…

 その()、王都(てい)に帰ったマインバーグ伯爵は夕食の席でもソワソワしていて、使用人達から()(しん)()で見られていたのだった。

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