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小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


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201/243

第200話 拉致られました… って、なんでやねぇえええええんっ!

とうとう200話です。

読んで下さってる皆様には感謝しかありません。

 異世界(この世界)でも正月は(さん)()(にち)の様で、飲食業界は4日から仕事を始めている。

 商店なんかは5日からが仕事始めだ。

 前世の日本と同じなのが面白い。

 今更だけどな…

 また、サービス業のホテルや宿屋、テーマパークは休む事なく営業している。

 勿論だが、ギルドも正月休みは無い。

 年末捻出特有の依頼もあるからだ。

 年末大掃除の手伝いとか、正月の飾り付けの手伝いとか庶民的なモンだけどな。

 てか、正月の飾り付けって日本かよ…

 まぁ、注連(しめ)(なわ)注連(しめ)(かざ)りも無いし、(かど)(まつ)も無いけどな。

 異世界(この世界)での飾り付けは、前世のクリスマスみたいな飾り付けだったりする。

 勿論、クリスマスツリーは無い。

 クリスマス自体が無いんだから、当然だけどな…

 そんなこんなで1月も5日になると、(ロザミア)普段(いつも)(かっ)()を取り戻す。

 もっとも、5の付く日を休診日にしているホプキンス治療院は、ロザミアで唯一の休みを満喫(まんきつ)してるのだが…

 ミラーナさん、ミリアさん、モーリィさん、ライザさんの4人は早速ギルドに出向き、適当な魔物の討伐(とうばつ)依頼を受けてニュールンブリンクの大森林へ出掛けていった。

 なので今、治療院でノンビリしてるのは私、アリアさん、ルディアさん(シフトで5の付く日が休み)の3人だ。


「それでは少し遅いですが、新年おめでとうございま~す♪」


「「おめでとうございま~す♪」」


 私が言うと、アリアさんとルディアさんがハモって(こた)え、エールで乾杯する。

 私は私の小さな身体(からだ)(くら)べて大きいジョッキを両手で持ち、魔法で冷やしたエールを(のど)に流し込む。


「ぷはぁ~っ♪ 美味(おい)しい~っ♡ 昼間っから飲むエールは最高ですねぇ♡」


 私は満面の笑みを浮かべ、エールが半分に減ったジョッキをテーブルにダンッと置く。


「エリカさん… それ、まるっきり酒飲みのセリフですよ…」


「エリカちゃんがお酒を飲んでると、なんだか子供に飲酒させてるみたいで罪悪感があるわねぇ…」


 言って2人は私を見ながら苦笑する。


「何を言ってるんですか。私はこう見えても29歳なんですからね? この治療院の()()()()()()最年長なんですよ?」


「そうなんだけど、やっぱり見た目がねぇ…」


 苦笑したままエールを飲み、(さかな)()わりの寿司を食べるルディアさん。

 まぁ、見た目8~10歳の私の身長は130(センチ)で、10歳女性の平均身長(日本人)より10(センチ)近く低い。

 顔立ちだって銀髪と(ひとみ)の色──エメラルド・グリーン──以外は日本人(ふう)だから、欧米人的な顔立ちのイルモア王国──だけでは無いが──では見た目の年齢より更に(おさな)く見えるだろうしな。


「私から見ても、エリカさんは(おさな)く見えるんですよねぇ… まぁ、私も見た目は13~14歳ぐらいなんで、エリカさんの事は言えませんけど…」


 なんて話してると、玄関の呼び鈴が鳴って来客を伝える。


「ん~? 折角(せっかく)の休みを満喫(まんきつ)してるってのに、急患ですかぁ~?」


 私はジョッキ片手に階段を降り、残ったエールを飲みながらドアを開ける。


「どうしました~? 今日は休診日なんで、急を(よう)さない病気や怪我は…」

「おお、エリカ殿! 新年おめでとう! 久し振りであるな! 突然で悪いのだが、今から私と一緒にヴィランまで同行を願いたい!」


 そこに居たのはマインバーグ伯爵。

 私の言葉を(さえぎ)り、言うが早いか待機させていた馬車に私を(ほう)り込む。


「なななななっ! (なん)ですか、この状況はっ!?」


「すまないが、話は馬車の中でさせて貰う。治療院の関係者には、この手紙を読んで貰おう」


 私の混乱を余所(よそ)にマインバーグ伯爵は手紙を治療院の玄関に置き、馬車に乗り込むと御者を()かしてロザミアを(あと)にしたのだった。

 これって拉致(らち)か?

 拉致(らち)なのか!?





 ────────────────





「…で? ど~ゆ~事なのか説明して貰えますか?」


 私が(にら)んで言うと、マインバーグ伯爵は少し()(まど)った様に話し始めた。


「実はエリカ殿に頼みがあってな… しばらくの(あいだ)、ヴィランで魔法医達の講師を(つと)めて貰いたいのだ…」


「はぇっ!? 私が講師!? ど~ゆ~事ですか!?」


 ワケが(わか)らず、私は頭が混乱する。


「エリカ殿は、キャサリン様がロズベルム王国のアンドレ殿下の(もと)(とつ)ぐ事は存じておるな?」


 私は黙って(うなず)く。


「そのアンドレ殿下が、婚礼(こんれい)()にホプキンス治療院の(かた)(がた)を呼びたいと(おっしゃ)ってる事は?」


「知ってます… と言うか、アンドレ様から(じき)(じき)に出席して欲しいと頼まれましたよ…」


 私の言葉を聞き、驚くマインバーグ伯爵。


「それは何故であるか!? アンドレ殿下はロズベルム王国に帰った(はず)だが…?」


 私はアンドレ様がミラーナさん達と共にロザミアに来ていた事を(かん)(けつ)に話した。


「なんと… アンドレ殿下がロザミアに… それもエリカ殿の所に滞在していたとは… ならば、ロズベルム王国の魔法医の実力も聞いたであろう?」


「えぇ、聞きましたよ。話を聞く限りでは、魔法医としての実力も考え方も、イルモア王国… と言うより、ヴィランの魔法医達より間違い無く上ですね。以前、私の()わりを(つと)めた魔法医達は、40人も集まったワリに良くやったとは言い(がた)く…」


 マインバーグ伯爵の表情が(こわ)()る。

 が、私は(かま)わず続ける。


「ところがアンドレ様の話では、ロズベルム王国の魔法医なら20人も居れば、交代制で私とアリアさんの代わりには(こと)()りるみたいなんですよねぇ。骨折ぐらいなら、1人で1日20人ぐらい治せるらしいんですよ。ヴィランの魔法医達は、10人も治せないってのに…」


 マインバーグ伯爵は(こわ)()った表情から(あき)れた表情に変わり、馬車の座席に(ちから)無く(もた)れた。


「ならば、やはりエリカ殿を講師として(しょう)(へい)すると言う()()()()()()は正解であるな… エリカ殿、すまぬがヴィランの魔法医達に()()()()()()()()()()を教え、()()()()()()()()()(ほどこ)してはくれまいか? このままでは、イルモア王国に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と、他国に(かげ)(ぐち)(たた)かれかねん。このルドルフ・フォン・マインバーグ、()して願い(たてまつ)る!」


 (たてまつ)るな!

 あんた、最近の(いくさ)功績(こうせき)で、侯爵に(しょう)(しゃく)寸前なんだろ!

 そんな(えら)いさんに頭を下げられたら、断りたくても断れんやないかいっ!

 …(など)と言ってる(あいだ)に、最初の宿場町が見えてきたのだった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「エリカさん、マインバーグ伯爵様と一緒にヴィラン(王都)に行ったみたいですね…」


「マインバーグ…? 伯爵…? エリカちゃんって、貴族様とも付き合いがあるの? 見た目は子供なのに、底が知れないわねぇ…」


 マインバーグ伯爵の残した手紙を見ながら、アリアとルディアはエールを飲みながらボケ~っと会話を()わしていた。

 そこへミラーナ達が帰宅。

 2人から事情を聞くと…


「母上が裏で糸を引いてんのか… そりゃ、

マインバーグ伯爵も逆らえないよなぁ… エリカちゃんもだけど…」


「マインバーグ伯爵様も、気苦労が()えませんねぇ… エリカちゃんもですけど…」


「ホント… 王妃様に振り回されるマインバーグ伯爵様もだけど、エリカちゃんも大変だねぇ…」


「ボク、疲れたから少し寝るね。夕飯の用意が出来たら起こしてね~♪」


 ミラーナ、ミリア、モーリィの3人はエリカとマインバーグ伯爵に同情していた。

 が、(われ)(かん)せずと言った感じのライザだけは相変わらずのマイペースで、さっさと部屋に戻ってベッドに(もぐ)り込んだのだった。

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