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第17話 悪い噂には別の噂を重ねれば良い?

変な噂が広まった事に困惑するエリカですが、何か良い解決策は見付かるんでしょうか?

 ナッシュさんの一件があって以来、ハンター達の怪我も少しだが減った様な気がする。

 どうやらハンター達の何割かは、ナッシュさんと同じ様にワザと怪我をしていたらしい。

 ギルドマスターのマークさんから、ワザと怪我した事が判明したらハンター登録を抹消すると言われていたにも関わらず、バレない様に怪我を作ってる人が居たって事か…


「まったく… ナッシュさんみたいに、下手したら命に(かか)わる様な事をする人が居なかったから良かったですけど…」


「まぁ、ハンターの連中はナッシュと違ってその辺は心得てるだろうからな。ワザと怪我をするにしても下手な事はしやしないさ」


 私の言葉に、ギルドマスターのマークさんが『仕方()えな、あいつら』といった表情で(こた)える。

 朝の治療を終えて街の食堂で昼食を()ろうと店に入ったら、偶然ギルドマスターのマークさんが同じく昼食に来ていたので、同席して一緒に食事する事にしたのだ。

 今は食事を終えての会話中。


「誰がワザと怪我したかは今となっちゃ調べようが無いから()(もん)にするが、俺の(おど)しよりエリカちゃんのナッシュへの(いち)(げき)の方が連中には()いたみたいだな♪」


 ニヤニヤと笑いながら言うマークさん。


「言わないで下さいよ…」


 ナッシュさんがワザと怪我を作っていた事を知った私は(げき)()し、頭を思い切りゲンコツで殴り付けてナッシュさんを気絶させた。

 見ていた全員がドン引きし、ある(うわさ)がギルド内に広まった。


『命が()しければ、ワザと怪我を作ってエリカを怒らせるな』


 殺すかぁああああああ!!!!

 誰が言い出したんだよ、そんな事!


「何とかなりませんかねぇ…?」


「ん? ハンター連中の怪我の事かい?」


「そうじゃなくて、私の(うわさ)ですよ…」


「あぁ、あれか…」


 マークさんは(あご)に手を当てて考える。

 しばらく考えてからマークさんは言う。


「何とかしようと思っても、こればっかりはなぁ… ワザと怪我する連中が減ったのは確かな様だし、俺としてもバカな事をする連中が減るのは助かるんだよ…」


 こっちは助からんわい!

 変な噂のせいで、怪我の治療に来るハンター達が(みょう)にビビってる気がする。

 ワザと怪我してると(うたが)われてるんじゃないかって(ふん)()()で、こっちとしても変に気を(つか)ってしまう。


「だいたい『命が()しければ』って何なんですか… 私、そんなに(きょう)(ぼう)じゃないですよ…?」


 気落ちしてマークさんに愚痴(ぐち)る。


「う~ん… それを考えると、俺もナッシュの奴を一発ブン殴っときゃ良かったかな?」


「えっ? いやいや、殴っちゃダメでしょ! マークさんにも変な(うわさ)が流れちゃいますよ!?」


 そう言うと、マークさんは平然として言う。


「いや、むしろ俺はギルドマスターって立場上、その方が都合が()いんだよ。多少はビビられてる方が、気の荒いハンター連中も言う事を聞くしな。ギルドの最高責任者なんだから、連中に軽く見られちゃ困るんだ」


 確かにハンターの中には荒くれ者も多い。

 そんな連中に言う事を聞かせるには、多少なりともビビられてる方が効果はあるだろう。

 マークさんの言う事は(いち)()ある。

 でも、私は違うから!

 そりゃ、ビビられてる方が私の注意を守って怪我しない様にしてくれるだろうけど!

 治療に来た時点でビビられたくはないから!

 怪我しちゃったのは仕方無いんだから!

 ビビられながら治療したくないから!


「まぁ、しばらくすりゃ、そんな(うわさ)も消えるだろう。()(なが)に待っちゃどうだい?」


 それしか無いのかなぁ…?





 ─────────────────





 食堂を出て、マークさんに(なぐさ)められながら治療院に戻る。

 するとそこには(しろ)()()き、ボロボロになって横たわるナッシュさんと、ミリアさんやモーリィさんを含めた数人のギルド職員が居た。


「何があったんですか!?」


 (あわ)てて事情を聞くと、何でもナッシュさんはマークさんが食事で留守にしている間、()りずにまた怪我を作ろうとしたらしい。

 それを見たミリアさんとモーリィさんが、その場でナッシュさんを(さん)(ざん)にボコったそうだ。

 これ、怪我を作るより(ひど)くない?

 そう言うと、ミリアさんとモーリィさんは何故か顔を赤らめ…


「ちょっとやり過ぎちゃった、テヘッ♪」


「いやぁ~、この間のエリカちゃんの怒りっぷりを見てたから、つい… ねぇ♪」


 周りのギルド職員を見ると、全員がミリアさんとモーリィさんをジト目で見ている。

 その雰囲気に負けたのか、2人は困った顔になり…


「反省します…」


「ごめんなさい…」


 と、(あやま)ったのだった。





 ─────────────────





 その後、ギルド内に新たな(うわさ)が広まった。


『エリカに治療して貰う為にワザと怪我を作ろうとする者は、ミリアとモーリィから半殺しにされる覚悟が必要』


 私の(うわさ)にミリアさんとモーリィさんの(うわさ)が上書きされたお陰で私の変な噂は一気に下火になり、代わりにミリアさんとモーリィさんが()()()で見られる様になったらしい。


 これ、私は喜んで()いのだろうか…?

ナッシュも懲りないですが、ギルドマスターのマークに加え、ミリアとモーリィの眼も気になるから大人しくなるでしょうね。

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