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小さな魔法医エリカ ~ほのぼの異世界日記~  作者: タイガー大賀


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第16話 怒っても手を出すのはダメですね…

 う~ん、快適快適♪

 新たに自宅を兼ねた治療院を開業してギルドの喧騒(けんそう)から(のが)れた事で、治療室は待合室で治療の順番を待つ患者同士の会話が少し聞こえる程度の静かさだ。

 お(かげ)で患者さんの話も聞き取り(やす)い。

 ギルドの部屋を借りてた頃は患者さんの話が喧騒(けんそう)で聞こえ(づら)くて何度も聞き直したり、互いの耳に口を近付けて話してたからなぁ。

 そんな中、ギルド職員の中でも怪我の度合(どあ)いが多いナッシュさんの診察・治療を行っているのだが…


「まったくもう、何度も言ってるでしょう? もっと注意して下さいよ」


 ナッシュさんはギルドに就職したばかりの15歳の新人で、3日に1度は私の治療院を(おとず)れる。

 今までに何度も(ねん)()や切り傷、(だっ)(きゅう)なんかで治療院を(おとず)れている。


「仕事に慣れてないからかなぁ…? なんか知らないけど怪我しちゃうんだよ…」


 いや、慣れてなければ逆に注意すると思うんだけどね。


「う~ん… 普通は慣れた頃に注意散漫(さんまん)になって怪我するんですけどねぇ…」


「いや、注意してると思うんだけどさぁ… 気付いたら怪我してるんだよなぁ…」


「それ、ナッシュさんが注意してると思ってるだけで、実際には注意してないって事ですからね…?」


 私は脱力して椅子に(もた)れる。

 今回のナッシュさんの治療は(ひざ)()(ぼく)

 なんでも書類の入った箱をギルドの2階から持って階段から降りている途中、足を踏み外して転落したそうだ。


「せめて横を向いて降りるなりして足下(あしもと)が見える降り方をして下さい! 足下(あしもと)が見えない様な降り方をしたら、踏み外すのは予測出来るでしょう!?」


 真剣に怒る私に()(しゅく)するナッシュさん。

 そりゃ、治療に来てくれれば患者1人につき銀貨1枚の(もう)けになるよ?

 でも、怪我しないで済むならそれに()したことは無いんだから!

 注意してて怪我したんなら仕方無いよ。

 でも、注意散漫で怪我しちゃうのはなぁ…

 私の(もう)云々(うんぬん)の問題じゃないから!

 私の(もう)けなんて二の次、三の次なんだよ。

 誰でも何かしらの病気に()(かん)するんだから、そっちの治療の(かせ)ぎだけでも私1人の生活費程度なら何とかなるしね。

 やっぱり怪我はしないに限るよ。

 ナッシュさんに治療を(ほどこ)しつつも、説教は忘れない。


「とにかく! もう少し怪我しない様に注意して下さい! 怪我しないに越した事は無いんですからね!」


 ナッシュさんに私の説教が()いたのかは不明だが、それまで3日に1度の(ひん)()で治療してたのが5日に1度に減った。

 あんまり変わってない…





 ─────────────────





 今回のナッシュさんの怪我は肩の(だっ)(きゅう)

 ただギルドの階段を降りてただけなのに、足を(すべ)らせて転落したそうだ。


「ナッシュさん… 今は若いから軽い怪我で済んでますけど、(とし)を取って運動神経や反射神経が(にぶ)くなったら大怪我しちゃいますよ!?」


 私は立ち上がって、椅子に座っているナッシュさんを少し()(おろ)ろしながら強い口調で言う。

 うん、身長が低いから少ししか見下ろせないのが悲しい。


「えっと… 死んだりしない… よね?」


 ナッシュさんは少し不安になったのか、私を軽く見上げながら聞く。


「保証は出来ません!」


「……………」


 ナッシュさんは黙って肩を落とす。


「今回だって、落ちた時に反射的に身体を(ひね)ったりしてるから肩の(だっ)(きゅう)だけで済んだ(はず)です! (とし)を取って反射神経が(にぶ)くなったら、頭から落ちてるかも知れないんですよ!? そうなったらどうなるか(わか)りますか!? 最悪の場合、首の骨を折ったりして死んじゃうかも知れないんですからね!?」


「うっ… き、気を付けるよ…」


 死ぬかも知れないという(おど)し(?)が()いたのか、ナッシュさんが階段から落ちる事は無くなったのだが、相変わらず怪我の(ひん)()は変わらなかった。





 ─────────────────





 そんなある日、久々にギルドの食堂で昼食を食べていると、ギルドマスターのマークさんがナッシュさんを引き()りながらやって来た。


「お~い、エリカちゃん! こいつ、エリカちゃんに会いたくてワザと怪我してやがった!」


「は?」


「見たんだよ、こいつが自分の足にナイフを落として怪我を作ってたのをな。ちょいと(にら)み付けて理由を聞いたら(はく)(じょう)しやがった」


 ………………

 自分の顔がひきつるのが分かる。

 私は()(けん)にシワを寄せ、ひきつった笑顔をナッシュさんに向けつつ、ゆっくりと椅子から立ち上がる。


「…ナッシュさぁあ~ん…」


 こめかみに青筋が浮かんでいたかも知れない。


「………!」


 床にへたりこんだナッシュさんは、完全に()(しゅく)している。


「二度とバカな事をするんじゃないっ!!!!」


 私は叫びつつナッシュさんの頭に思い切りゲンコツを叩き込む。

 ガツンッという(にぶ)い音と共にナッシュさんは(しろ)()()き、ゆっくりと(あお)()けに倒れて気絶する。

 様子を見ていたマークさんや他のギルド職員、更にはハンターの皆さんの目が点になっていた。

 それ以来、ギルド内部では『命が()しければ、ワザと怪我を作ってエリカを怒らせるな』と(ささや)かれているらしい。

 私の(せい)()(?)なイメージがぁあああ~(泣)

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