第15話 ついに完成、その名も『ホプキンス治療院』です!
不動産屋のランディさんから勧められた土地を買い、建設業の人達に治療院の建設を頼んで半年。
ようやく私の治療院が完成した。
この半年間、苦労したなぁ…
何に苦労したのかは聞かないで欲しい。
とにかく、治療院が完成した事と、違う意味での苦労から解放された事に胸が熱くなる。
「良かった…」
涙ぐむ私の横で、ミリアさんも涙を流している。
「ミリアさんも喜んでくれてるんですね…」
涙を拭って聞くと、ミリアさんは軽く頷きながら言う。
「勿論、エリカちゃんの治療院が完成したのは嬉しいわ。でも、涙を流してるのは別の理由なの」
へ?
別の理由?
「魔法で私の料理下手を治してくれたでしょ? エリカちゃんには悪いと思うけど、それが私にとっては一番嬉しいのよ…」
そっちかい!
まぁ、気持ちは理解出来る。
ある意味、私の涙も『これでミリアさんの料理で意識を飛ばさずに済む』って気持ちが少なからずあるから。
「ミリアさん…」
「エリカちゃん…」
私達は手を取り合い
「強く生きましょう!」
「えぇ! 勿論!」
と、互いの手を強く握り合ったのだった。
─────────────────
さて、治療院は完成したが、すぐに新たな治療院として開業するというワケにはいかない。
まだ建物が完成しただけで、中身は何も無いのだ。
現在の治療所で使っているベッドや机に椅子はギルドから借りている物なので、新たに治療院で使う物を買い揃えなければならない。
更に私の個人用のベッドや、その他の生活用品も必要だ。
「次の休みに必要な物を買い揃えなきゃ…」
そう呟くと隣に居たミリアさんが
「私に手伝わせて!」
と、凄い勢いで迫って来た。
「半年間も私の料理特訓に付き合ってくれたんだもの! せめてものお礼に手伝わせて!」
あまりの勢いと迫力に、私は了承するしかなかった。
─────────────────
「エリカちゃ~ん、これは何処に置くんだ?」
「エリカちゃ~ん、ベッドの位置はここかい?」
「エリカちゃ~ん、机はここで良いの~?」
治療院の内装に協力してくれるのはミリアさんだけでは無かった。
普段から世話になっているからと、ハンターの兄ちゃんやオジサン達も手伝いに来てくれたのだ。
お礼を言うと…
「気にすんなって、これからも怪我や病気の治療で世話になるんだからよ!」
「そうそう♪ エリカちゃんのお陰で、俺達ゃ毎日元気にやれてるんだからなぁ!」
と言って貰い、私はこの街の仲間になった事を改めて実感した。
朝から始めた引っ越しは、ミリアさんやハンターの皆さんのお陰で夕方には片付いた。
お礼として、ギルドの食堂で引っ越し祝いパーティーを開催する事にしたのだった。
「皆さんのお陰でこんなにも早く引っ越しが終わりました! 今夜は『ホプキンス治療院』の新規開業祝いです! 私の奢りですので好きなだけ飲んで食べて下さい!」
「「「うぉおおおおおおおっ!!!!」」」
その場に居る20人程のハンター達とギルド職員全員の叫び声が食堂に響く。
…用意したのは金貨5枚だけど、足りるかな?
念の為、もう5枚用意しておくか…
そしてその日は、かなり遅くまでドンチャン騒ぎが続いたのだった。
結局、使った金貨は用意した10枚では足りず、更に追加で8枚…
少しは遠慮しろよ、お前等…
~追記~
新装『ホプキンス治療院』の記念すべき初日の仕事は、約20人のハンター達と約50人のギルド職員達の二日酔い治療に忙殺されました。
新たな治療院の初仕事が約70人の二日酔い治療。
最初から盛況なのは良いが、先が思いやられるスタートなのでした。