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第13話 報われない努力ってあるよね!

「ねぇねぇ、エリカちゃん。ミリアの料理、食べたんだって?」


 朝の治療を終え、昼食を()りに部屋を出ると、ミリアさんと同じ受付嬢のモーリィさんが話し掛けて来た。


「えぇ、まぁ…」


「どうだった? どうだった?」


 目を輝かせて興味津々(しんしん)に聞いてくるモーリィさん。


「えぇと…」


 視線を受け付けに座るミリアさんに向けると、困った表情で首を左右に振っている。

 あ、誰も知らないのか…

 しかし、今の一連の動きでモーリィさんは(さっ)してしまった。

 モーリィさんは私の両肩をポンポンと軽く叩きながら同情を込めた口調で言う。


「まぁ、最初は誰でもねぇ… 何度も挑戦している内に()()くなるモンよ。(あきら)めないで手伝ってあげてね?」


 いや、そんなレベルじゃありませんから…

 口に出して言いそうになるのをグッと(こら)える。


「まぁ、そうですね。()(なが)にやっていきます」


 やっとの思いで言葉を(しぼ)り出した。





 挑戦はしたんだよ…

 あの後、キッチンで私とミリアさんが並んで立ち、同じ様に肉野菜炒めを作る。

勿論、身長が低い私の足下(あしもと)には、高さ調節の為の台が置かれている。

 そして出来上がった料理を食べるのだが…

 私が作った肉野菜炒めは()()しく食べれるのに、ミリアさんが作った肉野菜炒めは、やはり(ひと)(くち)で意識が飛ぶ。

 並んで一緒に作ってるんだぞ!?

 なのに何故こんなにも差が出るんだ!?

 この世界にも七不思議が在るんなら、間違い無くミリアさんの料理は該当(がいとう)するぞ!





 ちなみにモーリィさんがミリアさんの料理に興味を示したのには理由がある。

 実は2人は(おさな)馴染(なじ)みで、子供の頃はミリアさんの母親が作る料理をミリアさんの家に遊びに行く(たび)に食べさせて貰っていたそうだ。

 ミリアさんの母親は料理上手だから、きっとミリアさんもレシピなんかを教わって料理上手なんだろうと思ったかららしい。

 モーリィさんから聞いた話をミリアさんにすると、確かにミリアさんの母親は料理好きで、とにかく上手だったそうだ。

 ただ、あまりにも料理が好き過ぎて、ミリアさんが手伝おうとしても全部自分で作ってしまい、ミリアさんがさせて貰えたのは盛り付けと食後の皿洗いだけだったそうだ。

 いや、そこは教えてあげようよ…

 その結果が壊滅的(かいめつてき)料理下手(メシマズ)じゃ、目も当てられないじゃないか…





 そんな事を1日の仕事終わりにミリアさんと話していると、同じく仕事を終えたモーリィさんがやって来た。


「ねぇ、エリカちゃん」


 何かに気付いた様にモーリィさんは言う。


「エリカちゃんの魔法でミリアの(りょう)()下手(べた)を治せないかな?」


 それを聞いたミリアさんもハッとした表情になる。

 いや、確かに考えた事はあるけど…


「出来るの!?」


 ミリアさんは身を乗り出して聞いてきた。


「それは…」


 どう答えようか迷っていると、ミリアさんは両手を胸の前で組み、懇願(こんがん)する表情で目をウルウルさせている。

 私は腕を組み、目を閉じて考える。

 出来ない事は無い。

 私のチート能力『どんな魔法でも無制限に使える能力』なら、魔法でミリアさんを料理上手にする事も可能だ。

 なにしろ()()()()()()()使()()()んだから。

 でも、何の努力もせずに魔法に頼るのはちょっとなぁ…

 そんな事をポンポン引き受けていたら、何も努力しなくなってしまうんじゃなかろうか?

『努力しなくてもエリカに(たの)めば何とかしてくれる』とかなんとか…

 それでは人としての成長を()(がい)する事になるんじゃなかろうか?

 しかし、ミリアさんの料理下手(メシマズ)が改善する(きざ)しは今の時点では見えてこない。

 それならどうするか…

 私は意を決して目を開ける。


「エリカちゃん…」


 懇願(こんがん)するミリアさんに()げる。


「最低でも半年は頑張りましょう」


「「えっ?」」


 ミリアさんとモーリィさんの声がハモる。


「やっぱり最初から魔法に頼るのはダメだと思うんですよね。だから、最低でも半年は料理が上手くなる様に努力しましょう。それでも改善する気配が無ければ、魔法を使う事も考えます」


 ミリアさんとモーリィさんは顔を見合せ…


「でも… それは… その…」


「努力… だけど… えっと…」


 2人は目を点にしてオロオロしていた。


「まあまあ… 私も乗り掛かった船ですし、出来る限りの協力はしますから。私みたいな子供でもそれなりの料理が作れるんですし、半年もあれば上達しますよ。やっぱり自身の努力で上達した方が嬉しいでしょう?」


「それは… まぁ… そうかもだけど…」


 まだ迷っているミリアさんに、モーリィさんがミリアさんの背中をポンポンと叩きながら声を掛ける。


「大丈夫、大丈夫。私だってミリアの母さんには(ほど)(とお)いけど、それなりの料理が作れるんだから。ミリアだって出来る様になるわよ!」


 無責任な一言(ひとこと)に聞こえるのは気のせいだろうか?

 とにかく半年間。

 私の治療院が完成する頃を目処(めど)に、ミリアさんの料理特訓を続ける事にしたのだった。



 ~追記~

 その後、私が


「やはり魔法で料理下手(メシマズ)を治しておくべきだった」


「半年間も協力するなんて言わなきゃ良かった」


 と、泣きながら後悔したのは言うまでも無い。

ミリアの料理の腕前は謎です。

魔法でなら治せる筈だけど、魔法でも治らない気がするのは思い過ごしでしょうか?

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