第12話 料理特訓はツラいよ
ミリアさんの料理の腕前が壊滅的である事を聞いてから、お互いの休みが同じ日である事を利用し、私はミリアさんの料理特訓に付き合っている。
前回は治療院兼自宅建設の打ち合わせでキャンセルさせて貰ったけど。
初日はミリアさんの料理の腕前がどの程度なのかを知る為に、私は手も口も出さずに作って貰った。
その料理を口にした私は…
一口食べて意識が飛んだのだった。
もしかして、私は4人目の犠牲者になったんだろうか?
しかし不思議だ。
見ていた限りでは作り方に何の問題も無かったと思うし、出来上がった料理も美味しそうな肉野菜炒めだった。
それがどうだろう。
一口食べた瞬間、何とも表現し難い不快感が全身に広がり、そのまま意識を失ったのだった。
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気が付くと私はベッドに横たわり、ミリアさんが心配そうに覗き込んでいた。
「エリカちゃん、大丈夫?」
私は体を起こしてミリアさんに聞く。
「ミリアさんは自分の作った料理を食べても大丈夫なんですか?」
ミリアさんは黙って首を横に振る。
あ、やっぱり…
「3人倒れたって言ったでしょ?」
私は黙って頷く。
「その内の1人が私なの…」
自分も数に入ってたのか…
「じゃあ他の2人は?」
まさかとは思うが…
「私の両親…」
やっぱりかい!
ミリアさんが両親と暮らしていた頃に初めて作った料理を3人で食べて、3人共に倒れたんだそうな。
以来、母親に監修して貰いながら何度か作ってみたものの、試食する度に3人共倒れるってのを繰り返したそうだ。
同じ食材を使って作る母親の料理は何とも無いのに、何故かミリアさんが作ると倒れてしまうのだという。
何が原因なんだろうと2人で考えるが、全く何も思い当たらない。
とにかく初日は何も分からないままに終わったのだった。
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そして2回目。
1つ前の休みは私の治療院兼自宅建設の打ち合わせでキャンセルしたので20日ぶりの特訓だ。
10日前の休日は、ミリアさん1人で試行錯誤していたらしい。
「どうでしたか?」
一応確認してみるが…
「3回倒れちゃった、テヘッ♪」
自分の額を軽く小突き、舌を出して照れるミリアさん。
いや、『テヘッ♪』じゃないから!
聞けば朝・昼・夜と3回食事を作り、全て倒れて外食にしたそうだ。
現在のミリアさんは独り暮らし。
なので、他に犠牲者が出なかった事を喜ぶべきか…
こりゃ、今回も期待薄かなぁ…
前回は手出し口出しせずに作って貰ったが、今回は私の指示通りに作って貰う。
今回も作る料理は肉野菜炒め。
私は細かく指示を出し、美味しそうな肉野菜炒めが出来上がった。
今回は私が全部指示して作ったし、問題は無いだろう。
そして熱々の肉野菜炒めを一口食べて、2人共倒れたのだった。
…何故?
ミリアの料理下手の原因は何でしょうね?
ミリアの実力で作ってもエリカの指示通りに作っても、一口で倒れる料理を作るミリア。
ある意味、才能なのかも?