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第10話 エリカの休日とミリアの事情

 治療所の休日は、毎月5日、15日、25日だ。

 一応この世界にも曜日が()る。

 この世界の言語が日本語として聞こえる私の認識も、日・月・火・水・木・金・土曜日だ。

 一般的な商店なんかは日曜日が休日になっている。

 ちなみに街の食堂街では、店によって休む曜日はバラバラ。

 そりゃ、一斉(いっせい)に食堂が休んだら困るからな…

 当然ながら、ギルドに休日は無い。

 なのでギルド職員の休日はシフト制。

 私と同じ様に、10日(ごと)の休みなんだって。

 受付嬢のミリアさんの休日は偶然にも私と同じ『5の付く日』だって事で、休みの日には一緒に食事したり買い物したりして過ごす事が多い。

 今日も1日一緒に過ごす事になり、昼食を食べながら会話している。


「エリカちゃんって不老不死なのよねぇ?」


「そうですね。実年齢は、前にも言った様に24歳ですけど」


「見た目は8~10歳位だから、その頃に不老不死になったの?」


「ハッキリ覚えてないですけど…」


 覚えてないと言うか、何も考えずに魔法で身体(からだ)の見た目を8~10歳程度に変化させただけなんだけどね、あはは。

 まぁ、一応は考えたよ?

 前世では妹が居て、毎月決まった頃に(つら)そうにしてるのを見てたから、そんな(つら)い事が無い身体(からだ)にしたんだよ。

 更に念の為、そんな(つら)い事が永遠に来ない魔法を掛けたけど。


「そう言えば、ミリアさんって(いく)つなんですか?」


 疑問に思ってた事を聞く。

 見た感じでは20代前半なんだよな。

 ミリアさんはキョロキョロと周り(まわ)を見渡すと私に顔を近付け、更に()(まね)きをする。

 身体(からだ)の小さい私は、テーブルに身を乗り出してミリアさんに顔を近付ける。


「22歳…」


 小さな声で(ささや)くミリアさん。

 そして脱力した様に椅子に座る。


()(ひと)が居ないのよねぇ…」


 この世界では、15歳で成人として(あつか)われる。

 一般的な人達は、早ければ17~19歳で結婚するんだそうだ。

 遅くても24~25歳で結婚する人が(ほとん)ど。

 つまりミリアさんは結婚適齢期真っ只中。

 なのに、(いま)だに良い相手が見付からないらしい。

 ミリアさんはスタイルも良いし、顔立ちも(ととの)っている。

 軽くウェーブの掛かったブロンド・ヘアを、肩より少し下の位置で(しば)っている。

 目は少しタレ目でおっとりした雰囲気。

 性格もおっとりしている。

 そんな事をミリアさんに伝え、疑問を口にする。


「何が問題なんでしょうね?」


 そう言うとミリアさんは視線を()らす。

 その(ほお)を汗が一筋流れる。

 ん?

 何か思い当たる事でもあるのか?


「ミリアさん?」


「……………」


 ミリアさんは答えず、更に汗が流れる。

 やっぱり何かあるな?


「ミリアさん?」


 私は再度名前を呼んで回答を(うなが)す。

 ミリアさんは小さな声で


「…料理…」


 と答えた。


「は?」


「…料理が苦手なの…」


 今度は汗ではなく、涙が一筋(ほお)を流れる。

 あぁ、料理下手(メシマズ)ってヤツか。

 見た目とは真逆なんだな。

 ミリアさん、見た目は家事全般何でも完璧にこなしますよって感じなんだけど…

 意外っちゃ~意外だな。


「そんなに苦手なんですか?」


 周りに聞かれたくないだろうから、私はテーブルに身を乗り出して小さな声で聞く。

 ミリアさんはコクリと(うなず)き…


「3人…」


「えっ?」


 何が3人なんだ?

 まさかと思うけど…


「今まで3人が私の料理を食べたの…」


「ハイ…」


 私の思い過ごしであって欲しいけど…


「全員倒れたわ…」


 倒れたんかい!

 想像通りの結果に私も脱力した。

 う~ん、これは何とかしてあげたい。

 ミリアさんは私がロザミアに来て最初に世話してくれた人だからなぁ…

 前世で医科大学に通っていた頃は独り暮らししてたから自炊もしてたし、多少は腕に覚えもある。

 昼食の後、一緒に買い物をしながらミリアさんの料理下手改善について話し合う。

 休日が同じ『5の付く日』だから、次の休日からはミリアさんの自宅で料理の特訓をする事になった。

 今回の買い物は、主に私の服。

 クリーンの魔法で清潔にしてるとは言え、毎日同じ服ってのはねぇ…

 なので、まずは仕事着としての(はく)()を買う。

 ただ、この世界に(はく)()は無いから特別注文で仕立てて貰った。

 やっぱり医者なら(はく)()だろう!

 ミリアさんは王都で魔法医の姿を見た事があるらしく、不思議そうな表情をしていた。

 なんでも魔法医は(ほう)()の様な服を着てるらしい。

 世界観の違いだな。

 でも、医者なら絶対に(はく)()だろう。

 これだけは譲れない!

 (はく)()の下に着る服はミリアさんに見立てて貰った。

 やたらヒラヒラしたドレスみたいなのを(すす)められたが、ヒラヒラの上から(はく)()なんて似合わないから!

 そう言って拒否すると、休日に着る普段着として強引に数着買わされた。

 (はく)()の下に着る服は、シンプルでスマートな服を数着購入する事に。

 ここでもミリアさんは強引にスカートを勧めてくる。

 元が男だからスカートには抵抗があるけど今は女性──女の子──だし、これは慣れるしかないと思って(あきら)める。

 いや、喜んでないよ!

 心の中では泣いてるから!





 ─────────────────





 買い物を終え、ギルドで借りている部屋に荷物を運び終えると、ミリアさんとギルドの食堂で夕食。


「ちょっと遅れたけど、これ開業祝いね♪」


 ニコニコして部屋にミリアさんが持って来たのは、でっかい姿見だった。

 その後、シャワーを浴びる時間まで延々と着せ替え人形にされたのだった。

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