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可変性夢物語  作者: しゅんぎく
第一部
2/4

人魚と魔物(後編)

 次の日。バルドは火をおこしてノラを待っていた。傷はもうすっかり治ったようだったので、海藻を外して服を着た。

――もう傷は治った。今日こそは、ノラに何か知っていることがないか聞いてみなければ。

 バルドが少し待っているとバシャリ、と水の音がしてノラが洞窟に入ってきた。

「バルト。おはよう」

「ああ」

「火をおこしておいたぞ」

「ありがとう!」

 ノラは昨日のバルドを真似して、魚を枝に刺していく。

「聞きたいことがある」

「なに?」

 ノラは焼けている魚から目を離さずに言った。

「呪いや魔法について何か知っていることはないか?詳しいやつでもいい」

 バルドが訪ねると、ノラは彼のほうに顔を向けた。

「人間を魔物に変える呪いのこと?残念だけど知らない。」

「そうか」

 バルドが肩を落とすと、ノラは慌てて言い直した。

「私は知らないけど、魔法使いはいるって聞いたことがあるよ!みんなに聞いてみるね!」

「ああ。頼む」

 そのあとは、昨日と同じく食事をして、二人で寝転がって天井を眺めていた。

「…こんなおとぎ話って知ってる?」

 天井の隙間から空を眺めていたノラがポツリとそんなことを言った。

「どんなおとぎ話だ」

「古城のお姫様の話」

「さあ、聞いたことないな」

「さっき呪いの話をしていて思い出したんだけど、どこかの山奥に茨に囲まれた古城があるんだって。そこには呪いをかけられたお姫様が眠っていて、そのお姫様を起こすことができたら、何でも願いを叶えてくれるんだって。」

「…」

「きっとバルドも人間に戻してもらえるよ」

「おとぎ話だろ」

「そうだけど」

「…まあ、人魚もおとぎ話みたいなもんだからな。覚えておく」

「うん!それがいいよ。私、そろそろ帰るね!みんなに聞いてきてあげる」

 ノラは水の中に消えていった。バルドは目だけで彼女を見送ると、また天井に目線を戻した。

――さっきのおとぎ話…慰められたのか?

――…ノラの成果は期待せずに待とう。手がかりがつかめなくても、いつまでもここで生活をするわけにはいかないからな。

 バルドは一度座りなおして、水をスキレットから一口飲んだ。

――いつでも動けるようにしておこう。

 バルドは体を大きく伸ばした。立ち上がって足の筋を伸ばし、その場で軽く足踏みした。

 バルドはズボンのポケットに手を突っ込む。取り出した手の平にはいくばくかの銅貨が握られている。

「これだけじゃ、心もとないな。」

 バルドは雑然としたノラの収集物に目をやった。

――あの小箱には金と宝石が入っていた。あれがあれば、しばらく金の心配はしなくて済む。

「いや、やめておこう」

 バルドは少し運動をして、体調に問題がないことを確認すると、焚火を消して横になった。

「暇だ」

――けがの痛みがなくなったのはいいのだが、気にすることがないせいか、やけに退屈になった。あの人魚も今日は早めに帰ってしまったからな。

 バルドがあたりを見渡すと昨日ノラが持ってきた光る海藻が目に入った。彼は海藻を手に取る。

「あいつの集めた物でも見てみるか。暇つぶしにはなりそうだ」

 バルドは海藻で照らしながらノラの収集物を見る。その中には価値のあるものも、価値のないものも一緒くたにして置いてある。

「あいつにとっては宝石もガラクタも一緒か」

――それとも俺たち人間とは価値基準が違うだけか。

「それにしても、整理されてないな。」

 バルドは綺麗なカメオがついている小箱を開ける。その中には、鏡の破片が入っていた。

「こんなもの、危ないだけだろうに」

 大きめの樽。壺。木箱。その中に麻袋や、漁で使う網、流木、片方だけの靴、手袋、フォークやスプーンなどが入っていた。

「道具と金品とそれ以外で分けられそうだな。」

 バルドはそういうと黙々と分別をし始めた。一番大きい樽の中には流木や麻袋、網などを入れていく。木箱の中に手袋や鏡、靴、瓶などの使えそうなものを、壺の中には宝飾品やサンゴ、貨幣を入れた。

「道具の名前や使い方を教えてやれば喜ぶだろうか。…勝手に動かしたことを怒られるか」

――まあ、どっちにしろ。明日明後日にはここから出ていく身だ。特にそれほど気にすることもない。

 バルドはまた寝転がる。天井の小さな裂け目から空を見上げた。青かった空がだんだんと紫色に変わっていく。この洞窟に入る光も小さくなっていった。

「綺麗、かもな」


  〇


 ノラは来た時、バルドはすでに起きていた。バルドは立ち上がって、体を伸ばしている。

「…おはよう」

「ああ。おはよう」

 バルドがノラに向きなおっていうと、彼女は少し眉尻を下げた。

「傷…よくなったんだね」

「おかげさまで、すっかりな」

「良かったね。…うん、よかった」

 ノラは下を向いて、いつものように水や魚、貝を麻袋から出していく。髪で顔が隠れており、バルドの位置からは顔色をうかがうことができなかった。

「どうかしたのか」

「ううん。何でもないよ。それより早く食べようよ」

「…そうだな」

 食事の支度を始めるとノラはそれきり話さなくなった。バルドも話しかけないので、今日の食事は静かなものだった。

 食べ終わり一息ついたとき、ノラはうつむきながらようやく話し始めた。

「あのね、みんなに聞いてみたんだけど…」

「何もわからなかったのか?気にするな。自分で何とかするさ」

 バルドはノラを励ますように言った。

「ううん。違うの。魔物にする呪いのことはわからなかったけど、魔法に詳しそうな人のことは教えてもらえたわ」

「本当か!」

「うん。あのね。あなたが落ちた崖の対岸にある国よりも北の地に、霧深く暗い森があるんですって。そこには魔法使いが住んでいて薬やまじないを売ってくれるらしいの。だから、そこに行けばきっとバルドの呪いのこともわかるはず」

 肩を落としながらノラは言った。彼女の表情は暗い。

「北の地?霧深く暗い森?ずいぶんあいまいだな。地名はわからないのか?」

「人間の使ってる名前なんて知らない」

「じゃあ、他に特徴は?」

「北の地の人間は、大きな獣の毛皮のコートを着ていて、肌は青白いって。」

「他には」

「ええと、確か顔に血で模様を書くって言ってた。他には思い出せない」

「そうか。ありがとう。あとは自分で何とかする」

「そう。」

 ノラの表情は一層暗くなった。バルドはそんな彼女に昨日の整理整頓について話し始めた。

「この木箱の中には道具として使える物を入れておいた。こっちの壺には人間が金として使っているものを。樽にはそれ以外の物が入っている。そうだ。このナイフ。柄の装飾がこっているな。高価なものじゃないか?」

「そう」

「…勝手に動かして悪かった。暇だったんだ」

「そうなの」

「怒っているのか」

「ううん」

「じゃあ。どうしたんだ」

「……バルド。もうすぐいなくなっちゃうんでしょ。…せっかく仲良くなれたのに」

 ノラはバルドに背を向けて水の中に入っていった。

「待ってくれ!」

 バルドは自分でもよくわからないまま、ノラの後を追って水に潜る。海藻が暗い水の中を照らしている。水中で光に当たって美しく揺蕩う青い髪を彼は見た。彼はノラに向かって手を伸ばす。泳ぐ彼の体に服がまとわりついた。

 泳いでいく人魚に人間が追いつくことは難しい。水の中ではバルドの声は彼女に届かない。どうにかして追いつこうと藻掻くように泳ぎながら、バルドの息は限界を迎えようとしていた。

――くそっ。このままじゃ死んじまう。

 バルドは空気を求めて上に向かうが、そこは岩で塞がれていた。この洞窟の出入り口は海中洞窟のようになっていた。バルドが息を吸うためには元の場所に戻るか、このまま外に出るほかない。

 バルドは急いで引き返そうとするも、ついに口の中の空気を吐き出してしまった。

「…ぅ、く」

――こんな死に方か。女のケツ、追っかけて。…最悪だ。

 バルドの腕が力なく水の中に浮く。体もゆっくりとした水の流れに合わせて、浮き沈みを始めた。

 その時、バルドの胴に白い腕が回された。バルドの体はぐいぐいと引っ張られ、水をかき分けて進んでいく。

「ゴホッゴホッ」

 バルドはひどくせき込んで、嗚咽を上げながら水を吐き出した。元いた洞窟だ。彼の顔を上から心配そうにのぞき込んでいるのは人魚の女だった。

「ノラ」

 バルドがその名を口にすると、彼女は嬉しそうに破顔した。

「…良かった。もう大丈夫?」

「ああ。よくわかったな」

「うん。バルドの音がしたから」

 バルドが聞くとノラは照れたようにはにかむ。ノラがバルドの体の上からどけようとすると、彼は彼女の手をつかみそれを制した。

「音?」

「人魚って耳が良いの。だからバルドが水の中にいるってわかったのよ」

「そうなのか」

 バルドはノラの顔にそっと触れて言った。彼女の髪から落ちるしずくが彼の顔に当たる。戸惑う彼女を見て、彼は少し笑った。

「必ず戻る。お前に会いに来る」

「本当に?本当に会いに来てくれる?」

「ああ。人間に戻れても戻れなくても、会いに来る」

「約束ね」

「約束だ」

 ノラはバルドにぎゅっと抱き着いた。バルドは彼女の背中にそっと手をまわす。熱いとノラが訴えるまでしばらく二人はそのままでいた。



「いつ出ていくの?」

 二人は並んで横になっていた。暗い洞窟の中、上を見上げる二人には小さな星の光が見えた。

ノラがバルドに小さな声で尋ねる。

「もう傷もよくなった。お前が良ければ明日にでも出発する」

「そうなの。わかった」

 ノラはバルドの腕をからめとって、すり寄った。

「一つ、お前に頼みがあるんだが」

「何?」

「明日、出発するときに俺をここから出してほしい。さっきの醜態を見ただろう」

「うん。わかった。バルド、死にそうだったもんね」

 二人はそれきり口を閉じた。バルドはノラの腕をほどいて、頭の下で腕を組んだ。ノラは口を少し尖らせたが、彼の真似をして腕を組み空を見上げた。

 陸の生物特有の高い体温が彼女にまで伝染したかのように、ノラは顔を赤らめた。彼女は自分の血が沸き立つような感覚を覚えた。とくり、とくり、と胸が鼓動を打つのがわかる。彼女にとってこんな感覚は初めてだった。けれども何故か彼女は不快には感じなかった。

 夜が少しずつ更けていく。二人は瞬きを繰り返していたが、やがて眠りについた。二人の穏やかな寝息がこの洞窟に響く唯一の音だった。


  〇


 洞窟の天井は切れ目が入ったかのような隙間がある。そこから入り込む日の光が二人を起こした。

「もう朝か」

「そうみたい。今、食べ物を持ってくるね。ちょっと待ってて」

 人魚は水に潜っていった。

バルドは立ち上がって、火を起こす。枝を組んで、その上に麻を置き火打石を金属でたたいて火花を散らせる。適当な薄い板で風を送り火を大きくする。

 バルドは残っていた水を飲み、空を見上げる。

――今日からまた一人か。

水の音がして、ノラが帰ってきた。その手にはたくさんの海産物。

「この短時間でそんなにとれたのか」

「貝はその辺に落ちてるし、魚は罠にかかってたから」

「罠?人魚でも罠を張るのか」

「人間みたいに大がかりじゃないけど、人魚だって頭くらい使います」

「そんなもんか」

 二人はいつも通り、魚を焼いて食べた。海水のおかげで薄く塩味がついている。ノラは相変わらず猫舌で、バルドの倍以上の時間をかけて食べ終わった。

「もう行くの?」

「ああ、明るいうちに寝床を見つけたいからな」

「そう。じゃあ、これ持って行ってよ。」

 ノラは壺の中身を取り出して、バルドに渡す。

「この中のもの全部あげる。人間の世界でお金になるんでしょ」

「でも、これはお前のものだ」

「いいの。どうせ私は使わないんだから。物々交換が主流だし、街だって真珠やサンゴとか海のものでなんとかなるし。遠慮しないで。ね」

「これでは、これをもらうために優しくしたみたいじゃないか」

「そんなに難しく考えないでよ。じゃあこれは貸してあげる!後で返しに来てね。これでいいでしょ」

 ノラはバルドに金品を押し付けた。

「……この恩は必ず返す。」

「待ってる」

 麻袋の中にノラがくれたものを入れて、顔を隠す大きな布をまとい、バルドは準備を終えた。

バルドがゆっくり、水の中に入る。

「私が合図したら大きく息を吸い込んで、息を止めて。すぐに外まで連れて行ってあげる」

「頼む」

 肩まで海水に浸かっているバルドは昨日のことを思い出し、体をこわばらせた。

 ノラは後ろから彼の腹に手を伸ばし抱きしめる。

「安心して。ここに入る時も、バルドは無事に済んだんだし」

「あ、ああ。それもそうだな」

 まだ緊張しているバルドを見て、ノラはクスクスと笑った。

「あなた、昨日は平気だったじゃない。今日も平気だよ」

「あの時は……さっさとしろ」

「うん!じゃ、行きます!」

 バルドは大きく息を吸い込む。彼が口と鼻を手で塞いだのとほぼ同時に、ノラは彼を水の中に引き入れた。

バルドが恐る恐る目を開けると、素晴らしい速さで洞窟を通り抜けていた。例の海藻がところどころに落ちており、周囲を照らしている。その光を次々と通り過ぎていくのだ。

バルドが首を上に向けるとノラがそれに気づいて微笑んだ。彼女は彼のわきの下あたりから腕を入れて彼を抱えており、彼がきょろきょろと周りを見ているのがよく見える。

彼女は進路を上に変える。焦るバルドを笑いながら、ぐんぐんと速度を上げていく。

「―っはぁ」

海から頭が出て、バルドが思いっきり息を吸う。

「こんなに、は、早いのか」

「人魚だもの。さ、こっちに来て。港近くの浅瀬はこっちよ」

「ああ」

 ノラはゆっくり泳いでバルドを案内する。バルドは息継ぎをしながら、不格好な平泳ぎをして追いかけた。

 バルドはもっと近くに陸に上がれる場所がないかと周囲を見渡したが、近くの陸に面する場所は崖や岩場になっていて上陸できそうになかった。

「お、おい。少し待ってくれ。少し休憩したい」

 ノラはバルドを振り返り近づいてきた。ノラはバルドに肩を貸し、腕を担いだ。

「海の上で休憩って、陸の人たちには厳しいでしょ。私が陸まで引っ張ってあげる」

「あ、おい。待て」

 バルドの言葉を無視して、ノラはバルドを引っ張って泳いでいく。バルドは激しい水しぶきに目をつむる。

――こうも強く引っ張られているのに不思議と痛くないな。

「ほら、ついた」

「え?」

 バルドが目を開けると、そこはもう浅瀬だった。きれいな砂浜に波が寄せている。

「ここまで来ればもう足を使えるでしょ」

「ああ。助かった」

 バルドはゆっくりと立ち上がり、後ろを振り向きノラを見た。

「行っちゃうんだね」

「ああ。行ってくる」

「あ、あのね!」

「なんだ」

「あのね。私、魔物の国を知ってるの。何度か行ったことがあるけど、みんな人間じゃないってだけで、暮らしはそんなに珍しくもないと思う。水の生き物も暮らせるように水路が張り巡らされていて…それで、…もし、もし人間に戻れなくてもちゃんと生きていけるから…そうなったら――。」

「一緒に暮らそう。俺が人間に戻れなかったらな」

「う、うん!私、待ってるから。人間に戻れても会いに来てね。…ま、満月の夜!この場所で。」

「わかった。満月の夜にまた会おう」

 砂浜に身を乗り出したノラを抱き上げて、バルドは彼女の額にキスをした。

ノラは驚いて身をはねさせて彼の腕から逃げ出すと、海に潜ってしまった。彼女は少し離れたところから顔を出す。顔は赤く両手で額を抑えている。

「すまん。謝る」

 バルドは彼女の様子を見て、口の端を少し持ち上げた。

「信じられない!?いきなり何であんなことするの!」

 慌てふためくノラを見ながら、バルドは体を伸ばした。

「じゃあ、行ってくる」

「え!?あ、あの。いってらっしゃい」

 バルドはノラに背を向けて歩き出す。後ろで「満月の夜、忘れないでね」という声がした後、水の音がしてそれきり静かになった。

 バルドは遠目に人の姿を見て、布を顔に巻き付けるようにして隠した。彼は対岸に渡るため、船着き場まで歩いて行った。


   〇


 数年前。魔物の国の存在が露見して大きな戦争になった。終戦後、魔物側と人間側は条約を交わした。簡単に言えば、人間も魔物も同等の権利を認めるというものだった。それ以来、両者の間では大きな諍いはおこっていない。

――大分、この姿でも過ごしやすくなった。

 バルドは船着き場を目指して歩いていた。彼女との約束を果たしに来たのだ。

 彼の姿はノラと出会ったときと同じく、鱗が生えた魔物のものだった。

――俺は、呪われていない……、か。

 大きな戦争の前、彼はノラが話していた魔法使いのもとにようやくたどり着いた。その老婆はバルドの話を聞いて首を傾げた。そして、「見た限りではお前は呪われていない」と言った。また、人間の姿になる魔法は知らないと続けた。その後は、老婆の知り合いの魔女や呪い屋を転々としながら戦争が終わるのを待っていた。そして、尋ねたその誰もが老婆と同じことを繰り返したのだった。

――しかしそれで諦めがついた。今はただノラとの暮らしが楽しみだ。

「…ノラは待ってくれているだろうか。」

 彼が彼女に別れを告げてからもう十年以上たっていた。明日は満月の夜。バルドはあの場所の対岸まで戻ってきていた。

 桟橋近くまで来たバルドは自分が乗る客船を探す。ボーっと汽笛が聞こえて大きな船が港に入ってきた。




 今、一人の男が桟橋を歩いていた。その男の姿は異形。青白い肌に鱗が転々と生えている。多少の注目を集めたが、異形の者たちの姿は度々見かけているので、港にいる人々はそこまで気に留めていない。

 港は大賑わいだ。漁船の豊漁を喜ぶもの。港にある市に用がある者。大きな客船を見に来た親子連れ。船乗りやその家族。その賑やかさの中で、先の男は一人静かに膝をついた。その青白い顔をさらに青くして、手を口で押えてえずいている。

 汽笛を鳴らしながら大きな客船が入港してきた。皆がその見事さに歓声を上げた。

 その船の船首には青い髪の美しい人魚の剥製が飾られていた。




「おとぎ話って知ってる?」


アンデルセン童話「人魚姫」から思いつきました。

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