本編 1
桜が舞い落ちる季節。
道路に歩んでいる制服姿の学生やその隣に親らしき人の存在。
道を確かめ、覚えようとあっちこっちを見ている学生...
感の良い人なら気づいているのだろう。
今日、この日が入学式であることを。
体育館には4つのグループに分かれている椅子がある。
前が生徒用で後ろが保護者の椅子。
左右にあるのは先生や来賓の椅子というのは容易に想像できる。
生徒たちはまだ自分のクラスをわかっていないからなのか、知り合いと隣になるように適当に座っている姿が見える。
2,3年生は一部の生徒を除いてほとんど来ていない。
来ているのは生徒会の人たちだろう。
生徒会長あいさつ、新入生あいさつ、来賓の言葉などがあるのだろう。
だが、聞くのはめんどくさいからぼーっとする。
書くのもめんど...いや、今のはなし。
長い入学式が終わった。
これからは自分のクラスがわかる紙が外にある掲示板に貼られているから、帰る前に確認するようにとのこと。
今行ったとしても混んでいるだろうから、自分は少し待ってから行くとしよう。
自分と同じ考えの人がいるのは想像できるが、さすがに多くはないだろう...
と、そう思っていた時が俺にもあった。
先ほどより混むほど多くはないが、それでも見てる人が多い。
「仕方ない、今日は家に帰っても特にやることはないし、人が減るまでもう少し待ってから行こうか」
...ん?視線を感じているが、気のせい、ではないらしい。
自分と同じ目的なのかは知らないが、まだ残っている人がいるようだ。
まあ、視線の先には振り向かないが。
待つこと約5分、やっとほとんどの人がいなくなった。
掲示板に向けて足を動かすと同時に、ほかに残っていた生徒が動き出した。
俺を見ていた人だろうな。
「さっき俺は誰かに見られていたんだが、もしかしてお前か?」
「気づいていたのね」
俺の問いに答えたのは、現実ではほぼお目にかかれないほどの美貌を持つ少女だった。
銀髪のロングヘアに赤色の目。
スタイルはなかなかに良くて、胸は普通くらい。
これぞまさにファンタジー。
自分が言うのもなんだが、俺の母親は結構美人なほうだ。
だから、自分はそれなりに美人耐性はあると自負している。
だがさすがの俺でも動揺している。
だから頑張って隠す。
知られたくないのでな。
はてさて、俺の日常に非日常が溶け込んでいるようだ。
まあ、クラスは違うだろうし、すぐに平凡な日常に戻るだろう。
「あなた、名前は?」
なぜか自分は名前を聞かれている。
まあ、答えるくらい別にいいだろう。
学校が始まったら調べればすぐわかることだろうし。
「街下晃だ。お前は」
「寒岬冷華よ。よろしく」
「ああ、こちらこそよろしく。ところで、なぜ俺の名前を聞いた?」
「名前を聞くことくらい別にいいじゃない。まあ、理由をあげるとすれば、私みたいに人がいなくなるまで待っていたから、かしら」
「割とつまらない理由だな」
「そうね。でも人はそういう生き物でしょ?なんてことのないものに興味をする。あなたもたまにはそうでしょ?」
「確かにな。俺みたいなやつに興味を持つとはお前は変だが、それを言うと人がいなくなるまで待っていた俺も変だろうな」
「ええ。だから興味が沸いたわ。それより、同じクラスみたいよ」
こうして俺と寒岬は出会った。
さよなら平凡な日常。
いらっしゃい、非日常。