第41話 ケンカとライムはバーの花。これギャルの鉄則
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俺「出来らあっ!」
とある酒場。
切り出した一枚板の立派なバーカウンターに腰掛けた男。
彼はフードのついたマントで全身を覆っており、唯一露出した口元にグラスを運びチビチビと酒を飲んでいる。
体格はそれ程大きくなく、もしかしたら女かもしれないとバーテンダーは色鮮やかなカクテルを作りながら思った。
「……テメェ今なんつった!?」
店内に怒号が響く。
時間はまだ夕方になったばかりだったが、薄暗い店内には既に顔を真っ赤にして出来上がってる客が大勢おり、しかもその殆どが気性の荒い者ばかりなので暴力沙汰など日常茶飯事であった。
「聞こえなかったか? ならもう一回言ってやる、さっさとおウチに帰ってママのオッパイでも吸ってな!!」
それを合図にケンカが始まった。
当の二人が殴り合い、何人かの野次馬が彼らを取り囲んで「いいぞ! もっとやれ!」と煽り立てる。
「スイマセンね。ここにはお客さんみたいな静かに飲もうなんて考える上品な輩はいないんです」
フードの男にそう声をかけながら、バーテンダーは苦笑いしてカクテルに切ったフルーツを添える。
だがフードの男は気にする様子もなく、半分も減っていないグラスの中身をじっと見つめている。
「この野郎!! 今度おふくろを侮辱したらブッ殺すぞ!!!!!」
どっちかが殴られて吹っ飛び、豪快な音と共にテーブルごと床に倒れた。
野次馬達はさらに盛り上がり、ビール片手に叫び声を上げる。
「騒がしい店ね」
そこへやけに粧し込んだブロンドの女が現れてフードの男の横に座った。
「ま、この街でそんなこと言うのもお門違いだろうけれど」
スラッとした足をブラブラさせながら女はケンカで盛り上がっている方に冷ややかな視線を送る。
如何にも人間らしい粗暴で粗野な行為だった。
「いらっしゃいませ、マドモアゼル」
新たな客の前にコースターを置きながら、バーテンダーはさり気なく彼女を観察する。
ツバの広い帽子で耳元こそ隠しているが、恐らくエルフだとバーテンダーは見当をつけた。
その〝身勝手〟とも言うべき美貌は人のそれではない。
別にこの町は何者も拒みはしないが、それにしてもエルフとは中々珍しい客人であった。
すると連れらしきフードの男もエルフなのだろうか?
「お飲み物は?」
だがエルフの女はそう尋ねるバーテンダーの事など一瞥もせずにフードの男の手元を見やる。
「何飲んでんの?」
返答がなかったのでエルフの女は勝手にグラスをひったくって一口する。
それから顔を顰めてバーテンダーの方を見た。
「ライムジュースです」
ハッ、とエルフの女は肩を竦めながらグラスを戻した。
バーでわざわざライムジュース!
「お客様に合わせたカクテルもお作りしますよ」
無視されてもめげないバーテンダーが完成したカクテルをバーカウンターに置くと、他の客の所へ運ばれる前にエルフの女がそれを勝手に奪い取って口をつけてしまった。
でもバーテンダーは文句一つ言わずに新しいカクテルを作り始める。
「それはコスタ・フォルトゥナと言うカクテルで〝幸運の海岸線〟を意味します」
そんなバーテンダーの説明にエルフの女はしかし「素敵な名前ね」と感心する事もなく、水でも飲むように一気に飲み干した。
「いい加減その口閉じやがれ!! このブタ野郎!!!!」
と、まるでオークのような巨体が宙を舞ってバーカウンターに打ち付けられた。
その拍子にライムジュースのグラスが倒れてしまい、バーテンダーの表情が僅かに歪む。
それでもフードの男は微動だにしなかった。
「BGMとしてはちょっとうるさいわね」
代わりにエルフの女が立ち上がり、床に転がった巨体を見下ろす。
だがフードの男に「やめろ」と制されるとエルフの女はまた肩を竦めた。
「もっと静かな店に行きましょ」
手にしたカクテルピックに刺さったフルーツを食べてしまうとエルフの女はそれを放り捨てた。
「申し訳ありません。お代は結構ですので」
その申し出にエルフの女はさも当然でしょと言わんばかりに鼻を鳴らし、尊大な態度でドアの方へと歩いて行く。
しかしフードの男は2人分の代金をバーカウンターの上に置くと、エルフの女に続いて店を出て行った。
俺「え!! おなじペースで更新を!?」