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第3話 剣は折っても心は折ってはいけない。これギャルの鉄則

「てやあああああああああああ!」


 そんな気合と共に迫りくるバーナムの迫力に一瞬アキナはたじろぐがレノアの加護が全身を暖かく包み込んでいるのが伝わってきたので勇気を振り絞ってナイフを構える。

 次の瞬間バーナムが勢い良く剣を振り下ろし……

 ギンッ、という鈍い音と共に巨大な剣が弾かれた。


「なっ!」


 バーナムは思わず目を見開いた。

 自分より二回りも小さな目の前の少女は片手で……しかもナイフの切っ先だけで騎士の振るう大剣を軽くあしらったのだ。

 その神業にアキナとバーナムの一騎討ちを見守っていた騎士たちもどよめく。

 隊長であるバーナムの剣の腕は誰もが認めており彼に勝てる者な何処の国にはいない。

 何ならバーナムが伝説の武具を身に着けて魔王退治に行けば良いのではと考える者もいるほどである。

 何せ聖剣と神盾は他でもない彼が手に入れてきたのだから。

 だがそんなものは幻想に過ぎなかったと今ここにいる騎士達全員が思い知ったのであった。


「クッ……!」


 それでも尚バーナムは怯むこと無く重々しい一撃を次々と繰り出して来る。

 だがその全てをアキナは何でも無いようにナイフで防いだ。

 一撃でも食らえば只では済まない強烈な斬撃を軽々と。

 とても鍛えているようには見えない枝のようにか細い右腕だけで。

 果物でも切るような小さなナイフ一本で。


「見事だ……」


 バーナムの剣撃を完璧に防いでいるアキナの技に騎士達は目を奪われていた。

 それはまるで暴れ回るドラゴンを優しくいなす女神か天使の所業に思えたからだ。

 彼女のナイフ捌きには殺意や暴力と言ったものはまったく感じられない。

 こんな慈悲深く優しい〝剣〟があるだなんて百戦錬磨の騎士達でさえ知らなかった。


「……そんでレノア、ウチはどうすれば良いの? このままじゃ埒が明かないけど」


 一方でアキナも困っていた。確かにレノアの言った通り負けそうにはないがバーナムも一向に引く気配を見せない。

 かといって反撃するのも躊躇われた。

  当たり前だがアキナはこれまで人を刃物で切りつけたことなど一度もなかったからだ。


(騎士は己の剣に誇りを持っている。どんなに本人が傷つこうと剣が折れない限り彼らは最後まで戦う。だから剣をへし折ってやればいい)

「なるほど?」


 アキナは下半身に重心を移動させるとその場で踏ん張るようにしてバーナムの次の一撃を待つ。

 先程までのように受け流すのではなく受け止める気であった。


「渾身の一撃を受けてみよ!」


 バーナムは隙が出来る事など気にもかけずに両手で大きく剣を振り被ると全身全霊の力を込めて刃を叩きつけた。

 その瞬間アキナが突き出したナイフが再び輝き出して姿を変える。

 それは刃の部分が櫛のようにギザギザになった短剣だった。


「……ソードブレイカー!」


 バーナムが叫ぶ。

 ソードブレイカーとはその名の通り幾つもの歯の付いた刃で相手の刃を絡め取ってへし折ってしまう武器である。

 だがしょせんは短剣でしかなくレイピアのような細身の剣を折るのがせいぜいだ。

 騎士の剣はこの世で最も頑丈な武器である。

 まともに受ければ向こうの方が破壊されるはず!


「なっ……!」


 しかしバーナムの予想に反してソードブレイカーはバーナムの大剣を難なく受け止めた。

 そのままアキナは両手で柄を握り締めると思いっ切りソードブレイカーをひねる。

 バキンッ、という金属音を立ててバーナムの剣は真っ二つに折れてしまった。

 信じられない力だった。


「……参った」


 勝負あり。

 バーナムは折れた剣に呆然と視線を落としながらガックリと膝をついた。


「……あー、こんな感じでイイっすか?」


 ポリポリと頭を掻きながらアキナは静まり返った神官や騎士達を見やる。

 すると神官長がアキナの前で深々と頭を下げた。


「……いやはやお見事でした、勇者様。バーナムの無礼をどうかお許しください」


 それに追随してバーナムも無言で頭を垂れる。


「いいっていいって! 正直ウチも勇者っつったらヨシヒコしか知らねーからもっとこうなんつーかアレな感じになると思ってたし」


『いざないの剣』より頼りになりそうな短剣がレノアの姿に戻るとアキナはほっとした。

 さすがは女神、あれだけ剣撃を受けたにも関わらず傷どころか服さえもまったく乱れていなかったからだ。


「しかし勇者様が装備出来ないとなるとせっかく集めた伝説の武具はどうしたらいいものか……」

「それな。まあウチが持っててもしゃーないし手に入れてきた人にあげるってことでいいんじゃね?」

「ううむ……勇者様がそうおっしゃるのであれば……」

「待っていただきたい、勇者殿」


 話が纏まりかけた所で何時の間にか立ち直ったバーナムがずいっと身を乗り出すとアキナに聖剣を差し出した。


「せめてこの聖剣だけでも持っていっては頂けないでしょうか? これは私が命を賭して手に入れた物なのです」

「でもウチにはレノアがいるし。それにアンタの剣折っちゃったし……やっぱあげるよ」

「そこをどうか曲げてお願いしたい、勇者殿。『聖剣ドーンブリンガー』は魔王を倒す為に生み出された物。魔王討伐に行くことの出来ない私が持っていても意味を成さないのです。私は貴方との戦いで悟りました。魔王を倒せるのは私ではなく貴方であると。ならせめて私の代わりに聖剣を勇者殿の旅に同伴させては貰えぬか? どうか私という存在に意義を与えてはくれまいか?」


 バーナムはやはり引くことなく懇願する。

 アキナは困った顔でレノアに対応を求める。


「どうする?」

「彼の言う通り。NPCである彼が聖剣を持っても魔王を倒す所か旅の途中で命を落とすことになる。この先の物語には彼は必要ない。それにこの聖剣の鞘には特別な魔力が込められている。大分弱ってはいるが恐らく〝真実〟を司る神の物。これを身に着けていれば私の庇護がなくともそうそうダメージを受けることはない」

「へー、やっぱ伝説の剣って凄いんだ? じゃ、有り難く頂きますか!」


 アキナが聖剣を受け取るとどこかで聞いたことがあるようなファンファーレが流れた。


『アキナはせいけんドーンブリンガーをてにいれた!』

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