第33話 どんな時でも上を向いて歩く。これギャルの鉄則
こうして魔王は倒され、一応平和を取り戻した世界。
何であれ使命を果たしたアキナ達は帰ってきたトントロ村で大変な歓待を受けた。
アキナは夢にまで見たトントロバイソンを心ゆくまで楽しんだ。
そして村で一夜を明かした一行はまた旅立つ事にした。
「成る程……魔王を倒しても真の平和はまだ訪れないのですね。魔王より強い者がいるなど我々には想像もつかぬことですが……それでも貴方達ならきっと立ち向かって行ける事でしょう。ご武運を」
村を出たアキナ達は取り敢えず西に向かう事にした。
何でもかつて物凄い貴族が住んでいたらしい城があるらしく、もしかしたらお宝の1つでもあるかもしれないと言う事で足を伸ばしてみることにしたのだ。
「……しかしアキナさんも然る事ながら、弟さんもあの歳でベイガス・トーナメントを決勝まで駆け上がるとは凄いですね」
「アイツこういうの得意だかんね。よくゲームの動画とかyoutubeに上げたりしてたし」
村で貰った果物に齧り付きながら答えるアキナにシェーラは疑わしげに眉を潜める。
「……ところでアキナさんは一体何者なんですか? それにレノアさんも。先日も転生やら女神やらとおっしゃっていましたが」
「あーうん、そろそろシェーラにも話しておかないとね。ウチも弟も実はこの世界の人間じゃないんだ」
「この世界の人間では無い……?」
「そ。まあちょっと長くなるから次の町に着いたら茶でもシバきながらゆっくり話すよ」
「茶をシバく……?」
やはり首を傾げるシェーラだったがアキナは先陣を切ってさっさと行ってしまう。
その後をレノアが何時ものように音も無く付き添っている。
本当に超然とした2人であった。
「あ、弟に連絡先(LINE)聞くの忘れた!」
と、いきなりアキナがそう叫んだ。
だがすぐにそんな物は無いのだと気付く。
そう言えば元の世界にいるときは何時もスマホばかり見ていた。
その時はスマホ無しの生活なんて考えられなかったが、こうして慣れてしまえば何て事は無い。
「お、絶景かな絶景かな。この眺めは1000万ドルだね」
小高い丘の上で足を止めるとアキナは遠くを見渡しながらそう評した。
シェーラも一息つくと眼前の風景に目を眇める。
そこには空と山と海が何処までも広がっていた。
第一部「ギャルの勇者、異世界に立つ」これにておしまいです。
ここまで読んで下さった方有り難うございました。
次は第二部「魔王軍再興」でお会いしましょう。




