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第2話 春呼春人
春呼春人。
それが僕の名前だ。
春に生まれたから、なんて単純な理由で名づけられた名前。
高校に登校して自分のクラスに入り、自分の机へ向かって歩いてく。
すると着席するより前に「何で春がこないんだろうね」と、誰かが声をかけてきた。
その声のは、窓際に座る女子生徒。
僕の隣の席の少女だった。
鞄を置いた僕は、窓ガラス越しに「さぁね」と彼女と視線をあわせる。
彼女は外の、何を見ているのだろう。
「呼んでもこないのかな。他の町はもうとっくに夏めいてるっていうのに」
「偉い人にでも聞いてみたら?」
「聞けたら聞いてない」
「それもそうか」と納得。
彼女は答えが返ってくるとは思ってなかったけど、呟かずにはいられなかった。
……なんて、きっとそんな心境だったのだろう。
春が来ない町は、この町だけ。
皆きっと疑問に思ってる。
なぜって。
他の町は普通に季節が移り替わっているというのに。