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第1話 春が来ない町
『私の事、忘れないでね』
脳裏に思い浮かぶのは、春の漢字を名前に秘めた彼女の声。
たった一度しか話した事のない、クラスメイトの名前。
ある日を機会に、この教室からいなくなってしまった彼女の姿。
この町には春が来ない。
いつまでも冬のままで、みんなずっと凍えている。
気温は氷点下を記録し続けていて、雪も振り続けている。
4月はとっくに通り過ぎてしまい、5月も6月も春を知らずに去っていく。
もう時期夏になるって季節でも、まだこの町には温もりの気配すらない。
一体なぜ、こんな事になってしまったのか。
誰もが疑問に思い、皆がその原因を突き止めようとしていた。
けれど、探求心を抱いた物達は、未だ真相にたどりつかない。
ヒントの一つすら、手に出来ていなかった。