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エピローグ 寂しがりやの冬と春



 彼女は、寂しげな表情でいった。


「忘れないでなんて思ってごめんね」

「どうして」

「私の事、ずっとそんな風に、気に留めてくれるなんて思っていなかった」

「なんで」

「一人で寂しそうにしてたから」

「なんでなんだよ」

「冬の神様に聞かせてもらっちゃった」


 僕の中にあったあらゆる疑問を解消していった彼女は、背中を向けて言葉を続けた。


「冬の神様は一人の少年がさびしそうにしてるのが気になっていました。だからたすけてあげようとおもって、悲しい季節がこないように時をとめてあげました。でも悲しみはとまりませんでした。だからそれ以上かなしくさせないために、いなくなった一人の女の子をよんだのです」


 たくさんの言いたい事、聞きたい事があった。

 でもそれは重要な事じゃない。

 だから、聞きたい事を選んで口にした。


「聞いていいか? なんでいなくなったんだ。ボクに何かできる事はなかったのか?」

「それは終わってしまった話だよ。聞いても意味がない話。色々な悲しいことがあって、私はいなくなる事しかできなかった。それだけの話。冬の季節が私を隠してくれると思っていたのに、誰かの心に残りたかった」


 終わりの季節が過ぎれば、別れを経て新しい出会いがある。


 皆きっと、一人の人間の事なんか忘れていってしまうのだろう。


 だから、彼女はその季節にいなくなることを選んだ。


 目の前の彼女は、小さく笑った。


「ごめんね。ありがとう」


 そして、彼女は消えていく。


 何もできなかった。

 ただ勝手に傷ついて、気遣われて、癒してもらっただけだった。


 だから、せめてこれ以上心配をかけないように「これからは一人にならないようにする。絶対の約束はできないけど」そんな風に言ってあげる事しかできない。


 最期に、彼女の笑い声が聞こえた気がした。





 季節が巡って春がきた。


 皆が待ち望んでいた春が。


 私はこれまで彼を見守っていたけど、もうやめた。


 きっと大丈夫。

 一人じゃない。


 彼はもう、終わってしまった物語を乗り越えて、少しだけ成長したのだから。



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