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第三話 バンクエットオブレジェンズ⑨

反応を頂けたので今日は2本投稿です。ブックマークを付けて下さった方、有難う御座います。

【紅蓮竜ヴォルガーンがプレイヤー コード・ジークにより討伐されました。以降竜の巣はチームレッドの陣地へと組み込まれます】


【コード・ジーク 10000ex獲得】


【レベルアップ レベル8へと到達しました】


【プレイヤーA 10000ex獲得】


【プレイヤーAがレベル7へと到達しました】


【プレイヤーB 10000ex獲得】


【プレイヤーBがレベル6へと到達しました】


【プレイヤーC 10000ex獲得】


【プレイヤーCがレベル6へと到達しました】



 紅蓮竜ヴォルガーンを討伐した瞬間、ジークの元へと雪崩の如くメッセージ通知が押し寄せてきた。


 明らかこれまで倒してきたモンスター達とは異なる現象である。やはりあの巨大なドラゴンはシステム上でも特別な意味を持つ存在だったらしい。

 何やらまだ良く分からないが、自分達チーム全体にとって良い事が起こったのは少なくとも確かな様である。


『凄いッ、本当に凄いよジーク君!! まさか初見であの紅蓮竜ヴォルガーンまで倒しちゃうなんて!! しかも一人で、初めて使ったブーストを使い熟してだよ。良くナイトのブーストが肉質を無視して攻撃できる事をあの一瞬で思い付いたね。僕は君専用のナビゲートAIに成れてと〜っても鼻が高いよッ」


 ドラゴンの咆哮には驚かず、何故か通知の勢いには驚いているジークの頭上よりニコニコモチモチとした声が降ってくる。


「山を登ってる時に眺めてたブーストの説明を偶々思い出しただけだよ。そんな事よりモッチーナ。何か一杯通知が押し寄せて来てるんだけど、これ今何が起こってるのかって聞けるか?」


『うんッその程度お茶の子さいさいだよ! ジーク君が倒したのは竜の巣に出現するドラゴンの一体。此処には紅蓮竜・豪天竜・絶零竜・太祖竜の4匹がランダムに出現して、そのどれを討伐しても竜の巣の自陣化とチーム全員が10000ex獲得っていう報酬を得られる。マップを開いてみたら変化が分かりやすいんじゃないかな?』


「竜の巣の自陣化…仲間に10000ex…………」


 ジークはモッチーナの説明を念頭にマップを開く。そしてその報酬が持つ真の重みを目で見て理解する事と成ったのだった。


 マップ上ではいつの間にか前線の位置を示す太線が竜の巣の輪郭に沿って敵側に飛び出しており、この山脈全てが自陣に組み込まれた事を示している。

 これで自分達は格段に竜の巣を移動しやすく成り、逆に敵チームはこの場所を通るのが非常に困難となった。攻守両面で強力なアドバンテージを得たという認識で間違いは無いだろう。


 そして同じ画面内にあるチームメンバーの名前が書かれた箇所へと視線を移せば、10000exの持つパワーが一目瞭然であった。

 通知でも見たが、竜の巣に踏み入る前は3,4レベ程度だった味方NPCが皆レベル6の大台を超えているのだ。


 更にその結果発生したステータス上昇の影響か仲間の位置を示すマップ上の点の動きが活発化。

 偶々ジークが目を向けているタイミングで次の前線位置が確定し、かなり敵陣側へと押し込む事に成功している様だった。


『前線が結構前進したねッ。この調子で自分達の陣地を広げていって、敵のユグドラシルへと魔法攻撃が届く距離まで進めれば勝利は目前だよ!』


「ユグドラシルへと、魔法攻撃? ………そうか、態々敵陣の深くまで攻め込まなくてもマジッククラスの遠距離攻撃を撃ち込めばッ」


『そう、それがこのゲームの最もポピュラーな勝ち方ッ。本来ウィザードやネクロマンサーは一対一の戦いが苦手で自陣深くに引き籠もっている事が多いんだけど、同時にマジッククラスのジョブは他と比較にならない射程と威力を誇る魔法攻撃を放つ事が出来る。だから前線を魔法攻撃がユグドラシルに届く位まで上げて、他のチームメンバーが護衛しながらその付近までマジックジョブのプレイヤーを連れて来られれば、後は一方的に敵の本陣へ魔法を叩き込みそのまま勝利っていう展開に持ち込めるんだ』


「それが最もポピュラーな勝ち方…具体的に何割くらい?」


「ランクマッチの勝率集計によると大体8割くらいだね。プロリーグとかになると割合は5割くらいまで下がるらしいけど」


 ジークは此処で漸くモッチーナが『前線』という要素にこれ程重点を置いて説明をしていた訳を悟る。本当に前線をどの位置まで進められるのかという事が試合の全て、勝敗にまで直結するらしい。

 そしてそのままマップを睨み続けたジークは、更にこのゲームの入念に作り込まれたポイントに気が付く。


「モッチーナ、魔法攻撃の射程って若しかしてステージの四分の一くらい?」


『よく分かったね! 魔法にもよるけど、ユグドラシルにダメージを与えられるくらい高威力な魔法攻撃に成ったら射程は大体ステージの四分の一くらいだよ』


 モッチーナがジークの推測を即座に肯定してくれた。


 ジークが気付いたのは竜の巣の山裾が敵陣自陣両方の丁度半分あたりまで伸びている事。

 恐らくこのエリア配置は適当では無く、明確な意図を持って決められている。ギリギリ魔法攻撃がユグドラシルへと届く範囲内に竜の巣の端が故意に入れられているのだ。


 この位置関係によりドラゴンを倒す事に対する価値はジークの中で急上昇。山脈の先端へマジックジョブのプレイヤーを連れて行けば即ユグドラシルへの直接攻撃が可能と成るのだから。

 つまり極端な事を言ってしまえば、この竜の巣を自陣化させるという行為自体がそのままチェックメイトの宣言と成り得るのだ。


(いやッ、そう簡単な話って訳でも無さそうだな……)


 しかし一歩間違えばクソゲーと化す絶妙なバランスをこのゲームは外さない。

 その戦術を選択した場合、デメリットも同時に発生する様上手く作られている事にもジーク直ぐ気付いたのである。


 山脈の端も端にウィザードを連れてくる為位置がバレやすく逃げ道も制限される。更に大きいのが後方以外の周囲を敵陣に囲まれている為、下手すれば包囲され護衛のプレイヤーごと一網打尽にされる可能性があるのだ。

 加えて、此方から攻撃が届くという事は逆に向こうからの魔法攻撃も届くという事。


 それらの理由により、竜の巣は取っても有利には成るが勝ち確とまでは呼べない要素であると分かる。


 しかしそれでも、この緻密な作り込みにより興味深く有用な選択肢がプレイヤー側へ与えられる事は間違い無い。例え同じ前線を押し上げ魔法攻撃によりユグドラシル破壊という決着だろうと代わり映えしい展開には成らないのだ。

 その場その場の正解が存在し、その正解を選び取る能力が求められる。



(頭の良い奴からしたら多分このマップを見てるだけでも面白いんだろうな。けど一先ずオレはいいや、こっちが優勢でゲームが進んでいるのは確からしいし取り敢えず元々の予定通り仲間NPCに合流ッ……)



【キルログ プレイヤーD → プレイヤーA✖】


【キルログ プレイヤーD → プレイヤーB✖】


【プレイヤーDが最高レベルへ到達。チームブルーにレベル10プレイヤーが誕生しました、警戒してください】


 

 少なくとも自分達のチームが優勢な状況下に有る事は間違い無い、そう認識したジークの元へと唐突に再び怒濤の勢いで通知が届く。

 そして表示されたその内容にジークは一瞬固まり、それから目を驚愕に見開いた。

 

 前線で戦い、しかも順調に押し込んで居た筈の仲間NPCが同時に二人もキルされたのだ。更にレベル10プレイヤーが誕生したとは……


「おいモッチーナ!! これ一体どういう事だ、何でこっちのチームメンバーが同時に二人もッ」


『まッ不味い、不味いよッ!! 敵チームのエースプレイヤーの方が一足早かったんだッ」


「一歩早かったって何がッ…」


『ジーク君がドラゴンと戦っている間に向こうもレベリングを終えて前線での戦いに参戦してきたんだ。しかもプレイヤーを二人もキルして最高レベルまで到達された。ほぼ間違い無く敵はウォーリアクラス、他クラスのプレイヤーだけじゃ太刀打ち出来ないんだよ!!』


 モッチーナの動揺に震えまくった口調で、今この試合に起った現象が自分達にとって不味い物であるという事を辛うじて理解する。

 ついさっきまで順調極まりない所か勝利目前とまで思っていただけに、ジークはその余りな急展開に目眩を覚えた。


 元々ウォーリアクラスのプレイヤーが他クラスに比べ強力な力を持っているとは聞いていたが、まさか此処まで易々と倒されてしまうとは。クラス間のパワーバランスを読み違えていた。


『うわあああああ~ッ!! ジーク君ッ、ジーク君来てるよ!! 敵プレイヤーがこっちへ向かって一直線に迫って来てるぅッ』


「ッ!?」


 今起っている事がどれ程の出来事であるのかを無い頭で必死に理解しようとしていたジークの鼓膜を、モッチーナのもう半分涙声に成った声が揺らす。

 そしてその声に弾かれた様にしてマップを開いたジークが目にしたのは、前線を割って此方へと最短距離で向かってきている敵を示す点。


 もう目と鼻の先、敵陣侵入で発生するデバフの効果が影も形も見られない速度で迫ってきているのだ。

 マップが示すその位置はジークから見た右方、骨で出来た斜面の先である。



ザッ ザッ ザッ ザッ………



 地表を覆うモンスター達の死骸を踏み砕く音と共にジークが最初目にしたのは毒々しい緑色のオーラ。それが少しずつ上昇しているのが分かり、敵の姿が斜面を登って徐々に明らかと成っていく。


 現われたのは真っ黒のローブを同じく黒一色な鎧の上へ纏い、顔にはドクロを思わせる不気味な仮面を付けたプレイヤー。その手には間違い無くチームメンバー達の鮮血を吸った後であろう両手持ちの長剣が握られていた。

 表情は仮面に隠され確認する事は出来ない。しかしその自らの首を一心に見詰め最短距離を進んでくる無駄が一切排除された動きは、標的に言い用のない恐怖を覚えさせる。


 そして次の瞬間、ジークはこの世界におけるレベル10プレイヤーの持つ力の絶大さを身をもって知る事となるのだった。


〜用語解説〜

『ギルドクラス』


アーチャー・マーチャント・ドクター・バンディットが属するクラス。同じクラスに纏められているが其々全く異なる個性を持ち、ウォーリアクラスと違い各チーム何名でも選択する事が出来る。しかしステータスは全体的に低く設定されている。

クラススキルは『ゴーストポケッツ』『ファーストエイド』『タリスマン』の3つ。



【ゴーストポケッツ】→所有可能アイテム数を一つ増やす。


【ソウルイーター】→体力の20%を回復する手当を3回使用可能に成る。自分自身にも仲間にも使用可能。


【タリスマン】→モンスターから見付かり辛くなる。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 敵と味方の情報の開示タイミングが謎? ドラゴン倒す、仲間にも経験値入る。 次は何しようかな? 実は敵が仲間に経験値が入る前に2人倒していました? ドラゴン1匹よりNPC2体の方が…
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