〜ユウドウエンボクの奇跡〜②
遊動円木はサッカーグラウンド一つ半くらいある校庭の隅、サッカーゴール裏の芝生の上に備え付けられている。
この遊動円木には青色のペンキが塗られているのだが、色あせ錆びて大半が焦げ茶色になったいた。
そのためか、怪しげで魔的な風貌が僕らを、いらっしゃいと出迎えた。
「さあ、はじめよか。ジャンケンで負けた二人が最初に乗るばんな」ツカサは遊動円木に着くなり、手をグーにしてジャンケンを促した。ツカサにあわせてみんなが手を握った。
「最初はグー」
負けませんように。
「ジャンケン、ポン」
みんなが一斉に手を出した。六人の手はみんな同じカタチ。カッコつけたコウキも、言い出しっぺのツカサも全く同じ。人差し指と中指はチョキ、薬指と小指はグー、親指はパー。これ出したらぜったい負けません。って、おい!みんな乗るの怖いんやないかい。
ツカサよ、コウキやみんなは嫌なのわかっとったからええけど、お前から誘ったんやないか。なんじゃその手は。
照れくさそうにツカサが、「なんやぁ、それしたら卑怯やで。ちゃんとしよ」と言った。
このボケ、お前もやろ。
「じゃあも一回いくで、最初は・・・パー」
なにーーー
ツカサの手はパー、不意を突かれたみんなの手は当然グー・・・ってあれ? 一人だけチョキ出しとる。誰やと思ったらダイ君だった。
「あれ、パーってツカサが言うたのにグー出してもうた」とダイ君。
いや、出てないでダイ君。グー出てない。あんたが出しとるのはチョキや。オレらを救うチョキを出しとる。
ツカサが、チッと舌を鳴らし仕切り直して、「もう、お前らちゃんとせえよ。いくで、ジャンケン・・・」
このクサれツカサだけには負けるわけにはいかへん。ぜったいに勝つ。と意気込んだときに限って結果は・・・
「ポン」
ああ、オレとダイ君の二人負け。
仕方なく僕らは遊動円木の真ん中付近に立ち乗りした。
③に続く