〜ユウドウエンボクの奇跡〜①
とある日の昼休み。クラスのみんなは大抵、仲のいい友達とグループを組み、校庭で遊んだり、教室で遊んだりする。
最近僕たちのグループはドッジボールやキックボール、陣取り合戦などで遊んでいたのだが、それに飽きたのかツカサが、「久しぶりにユウドウエンボクで遊ばへん?」と言い出した。
遊動円木とは細長い丸太棒や鉄の棒を前後の支柱から鎖で地面すれすれにぶら下げた遊具で、ブランコの要領で棒を漕ぐ乗り物だ。
僕の小学校にあったのは細長い長方形の鉄の棒が使われた遊動円木だった。
まじか・・・・・・僕は心の中で呟いた。
遊動円木は僕らのあいだでは魔の遊具として知られ、今まで数数の友達が犠牲になってきた凶暴な乗り物でもあった。
考えただけで僕の喉元をゴクリと恐怖が過ぎた。
「どうする? はよ決めていこうや」と言ったツカサのほっぺたには、さっき給食で出てきたきな粉揚げコッペパンのきな粉が付いていた。
ツカサよ、遊動円木よりもまずはほっぺたのきな粉を落とせ。話はそれからや。
僕は遊動円木には行きたくないなと思いながらみんなの顔色を伺うと、みんなは一様に小難しい顔と腕組みをして、ここは悩むフリしとこ、みたいな雰囲気を出していた。行きたくないと悟られないように格好をつけているのがバレバレだった。
やはりそれだけ遊動円木というものが怖いのだ。
みんな、そんな悩むフリなんていらんやろ。代わりにオレが遊動円木はやめとこ、違うのにしよって言うたるわ。
僕がそう口を開こうとしたとき、「ひ、ひさしぶりやしな。い、いこか」とコウキがビビリながら促した。
いやいやコウキ、なに言っとんねん。カッコつけてる場合じゃないで。みんな賛成するわけないやろ。
「じ、じゃあいこか」みんなが恐る恐る口をそろえた。
え、みんななに言っとん。遊動円木行ったらタダじゃ済まへんで。わかってるやろ?
葛藤している僕をよそに、「お前はどーする?」とツカサが聞いてきた。
行きたくないけど、この流れはやっぱり行かなあかんやろな。
「・・・・・・行くわ」僕は諦めてツカサ、コウキ、その他三人と遊動円木に向かった。
②に続く