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あなたと私の境界線①

寒波のせいなのか子どもが久しぶりに高熱出してしまいました。

旦那も喉をやられたっぽいです。

そして私だけ平気です。気合いです。

年末年始の嫁に休みなんてないのさぁ!←

皆さまもどうか体を冷やされませぬようにご自愛くださいませ。


今回の更新も一気に一章分です☆

次回はできればもう一回したいなぁ~。

叶わなかった場合を込めて、良いお年を! 


無事にミーティングも終わり。私は家に帰るため、今、昇降口に向かっている。そこへ、必死に後をついてくる後輩の姿もありました。


「せんぱ~い! ……まだ怒ってる?」


無視。

今日は色々とあったけど、部の演目も決まったことだし、帰ってゆっくりしようっと。これから忙しくなるしね。


「先輩? 悪かったって。だからこっち向いてくれよ」


無視。

お腹減ったなぁ~。今日の夕飯は何だろ? お肉が食べたい、お肉。今日はどっかの誰かさんのおかげで、えらく体力を消耗しましたんで。スタミナ付けないとね。


「……ごめん、先輩。ちゃんと謝るからさ、無視すんなよ」


無視。

まったく。何処まで着いくる気なんだろうコイツは。あ、帰るんだったら同じ昇降口になりますね。

私は当たり前の事にボケを投じ、自分で突っ込みを入れた。そんな私へ、後ろから澄んだ声が何度も呼びかけてくる。


「先輩……」


――クンッ


微かに自分の制服が引かれた気がして、とりあえず私は立ち止まった。いつもだったら遠慮無しに抱き着いてくるコイツ――秋月が、随分と謙虚な態度で私を引き留めたからです。でも、振り向いてやんない。だってまだ私、怒ってるんだから。


「ごめん、先輩。ちょっと調子に乗りすぎた」


夕焼けの日差しで校舎内に長い影が出来る。そんな影たちに呑み込まれそうな程、か細い声が後ろから聞こえてきた。


「ごめん……」


はぁ~~~~~~。そんな普段の秋月らしくない声出されたら、何か怒る気失せましたよ。

くるっと振り返り、私は長身の秋月の顔を下から覗き込む形で彼を見た。そこで始めて、あることに気付く。あれ? 物凄く淋しそうな……顔?

そこには、今まで見たこともないような表情をした秋月がいた。例えるなら、捨てられて、置き去りにされた子犬みたいな、そんな顔。さっき部室でしていた潤んだ瞳じゃない。本当に淋しそうな顔。


「何て顔してんのあんたは?」


廊下に視線を落としていたからなのか。秋月は、私がいきなり目の前に現れて驚ろきだす。


「え? ……あれ、先輩?」

「『え?』っじゃあないでしょ! 全くあんたは~。そんな表情されたらもう怒れないよ。……ちゃんと反省してんの?」


私からの問いに、こくりと頷く秋月。なんか。大きい小学生を相手しているみたいな、そんな変な感覚が私に流れ込んできた。と同時に、いつもの秋月らしからぬ態度に少々困惑を覚えてたりもします。


「ごめん……先輩。俺、本当に流香先輩と仲良くなりたいんだ……」


今にも泣き出しそうな顔。どうしたの秋月? な、なんか調子狂っちゃったな。仕方がない。ここは私が一つ大人になって許してやりますか。でも、説教はさせて貰います。


「秋月、私と仲良くなりたいのは分かった。けどね? こんなに人の嫌がる事をされれば、仲良くなろうと普通思わないんだからね?」

「うん」


やけに素直な秋月に違和感を感じるけど、ちゃんとこちらの話を聞いているみたいだから私はそのまま続けることにした。


「一方的な感情を相手にぶつけても気付かないし、理解もされないんだよ。ちゃんと相手へ思いやった行動と素直な気持ちを伝えないと……分かった?」


また、こくりと頷く秋月。何だろう。さっきまではあんなに怒っていたのに、黙って私の話を聞いている秋月を、何だか無性に可愛いと思ってしまいました。年下だし、私は弟が一人いるからもう一人弟が増えた気がして……しょうがない。今日はここまでにしておいてあげよう。まだ表情の暗い秋月の顔を、私は精一杯背伸びして両手で包んだ。


「いい子だね、秋月。もう許してあげるから、そんな顔しないの!」


大きな瞳を更に見開いて、しばらく硬直していた秋月は次第に柔らかく目を細め、やっと笑った。あ、いつもの秋月に戻った。


「先輩……ありがとう」


自分の頬に添えられた私の手を、今度は秋月の手が包み返す。そしてそのまま、ギュッと握られた。


「俺、先輩のこと好き」


は? そんな穏やかな笑顔で言われたら、な、なんか照れるんですけど。結局は私、秋月に懐かれているのかな? そう思えば今までの秋月がしてきた私に対する数々の無礼も、ただ戯れていただけ。それだけのことだったのかもしれない。


「秋月。いい加減手を離してくれないと、爪先が痺れてきたよ」

「え~~。俺、もうちょい先輩とこうしていたいんだけど?」


すっかり元に戻った秋月は、満面な笑顔で私に言う。


「調子に乗らないで! てゆーか、もう本当に限界なんだけど」

「ぶはっ!」


プルプルしている私の爪先を見た秋月は、思いっきり吹き出した後、ようやく私の手を開放してくれた。でも、余計なことまで言ってくれる。


「先輩、バレエは出来ないね……ププッ……」

「別にやりたいとも思わないからいいの。それよりも秋月! あんた笑いすぎだから!」


お腹を抱えて笑う秋月に、私は一喝した。だけどまたしても効いていない様子。


「だってさ、先輩……可愛いすぎだっつーの」


まだ笑ってるし。根本的な態度は変わらないってことですか。可愛いすぎって、また私をからかって。小さい子が一生懸命説教してる~、といった感じにでも見れるというの? まぁ、当たらずとも遠からずな部分があるのを、自分でも認めざるを得ませんけどね。全く。


「秋月! 人の話をちゃんと聞いていたの!? からかわないで!」

「え? だって可愛いいじゃん先輩。俺のツボに入りまくりなんだけど」


こんの男は……。もういいや、ほっとこう。さっさと帰ろう。再び秋月に背を向けて歩き始めた私に慌てた秋月は、「本当だって!」と言いながら追いかけてきた。やれやれ。何か秋月、犬みたいなんですけど。


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