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嵐を呼ぶ男と体育祭⑥

はい、ここから体育祭が始まります!

この『嵐を呼ぶ男と体育祭』は長いです。

でも内容的に分けることが出来ないため、どうかご了承ください。






本日の運勢は……。仕事運『良』、金運『普』、恋愛運……『最良』。

最近、このテレビの占いコーナー、当たるのか当たらないのか、微妙に分からなくなってきたなぁ。

私はそんなことを思いながら、今、朝食を摂っています。


「流香、颯太。お弁当忘れないようにねー? 今日は二人用に重箱だから」

「うん、ありがとーお母さん」


何だかんだで今日はもう体育祭。私の傷もすっかり癒えました。まだ頭には少し絆創膏を貼っているけれど、傷が出来たのがおでこの生え際部分だったので、前髪で隠れるから平気です。


休んだあと、学校に行ったら案の定、私は奇異の目で見られた。でも、沙希たちが庇うように私のそばにいてくれたから大丈夫でした。うん、気にしないようにしよう。時間がたてば薄れるだろうし。秋月も、ずっと一緒にいてくれるし……。安心する……。

本人に言うと、絶体調子にのるから言わないけどね。


哲平くんともあれから接点がない。良いのか悪いのかしばらく何も起きず、哲平くんの件は進んでいないけれど、平和な日常が戻ってきた今日この頃。

折角の学校行事に、いつまでも不安になっていたら楽しめないもんね。


「ねーちゃん、早く行こうぜ!」

「落ち着けって颯太。そんな急がなくても体育祭は逃げないぞ?」


高校に入ってから初めての行事にそわそわとしている颯太。それを、やんわりとたしなめているあっくん。全く。颯太にはもう少し、落ち着きってものを覚えて欲しいです。

私は二人のやり取りを聞いて、少々溜め息をついた。


「だぁーってさ! 体育祭だぜ!? 言うなれば俺の出番だぜ!? 運動部所属としては、はりきるに決まってんじゃんかよ! あっくんだってそーだろー?」

「いんや、そーでもねーよ?」


「ははっ」と笑うあっくんに、颯太は「意味分かんねー!」と納得していないみたい。

改めて状況を説明しますね。今、あっくんはうちに来ている。あの日、私が暴行を受けてその話を聞いたあっくんも凄く心配してくれた。

そして、それからちょくちょく私の様子を伺いに来てくれるようになったんです。正直、とても嬉しい。私は、私の横に座って颯太と話をしているあっくんをチラリと横目で見る。普段は颯太と同様、あっくんも野球部の朝練があるから、朝は滅多に見かけることはないけれど、でも今日は体育祭ということもあって、私と颯太と一緒に学校へ行くつもりらしいあっくん。

つまり、私を案じて、わざわざ迎えに来てくれたというわけですね。

ヤバイ。中学以来だから緊張してきた! あっくんと登校出来るなんて! もう私、体育祭は全力を尽くす所存です。朝からエネルギー満タンです。

あ! でも大事なことを忘れてた。


「せんぱ~い、はよっす! …………何でテメーらまでいるんだよ」


玄関を出て、私に向かって満面な笑顔を見せた秋月はすぐに不機嫌な顔になる。今日も今日とて私を迎えに来た秋月。だけど、あっくんと颯太の姿を認めるとすぐに二人を睨んだ。とりわけ、あっくんの方を重点的に。


「ここは俺んちだっての! いて当たり前だろー!?」


秋月の態度に憤慨する颯太。一方。


「あははは! 流香、本当に毎日迎えに来て貰ってるんだな! 良かったなぁ~、先輩思いの後輩がいて。俺も安心したわ~」


未だに、秋月の私に対する気持ちを全く気付いていないあっくん。大それたことに、笑いながら秋月の頭をポンポンと撫でました。


「…………コイツ、いつかぶっ殺す」


目を据わらせ、あっくんを睨む秋月に私は慌てる。うわ! あっくん、何て大冒険な! 私があっくんのこと……彼女がいてもまだ好きなことを秋月は知っているから、とにかくあっくんが気に入らないのに! 

しかも、今日なんかは自分より先にあっくんが私を迎えに来ているものだから、尚更不快指数上昇中。ブチギレた彼をこの前見たからこそ、このあと訪れるだろう大惨事を予感しました。私は思わず、秋月があっくんを殴るかもって思ったけど……。


「ふん! テメーがいなくてもなぁ~、流香先輩には俺がいるんだよ。せーぜーそこでつっ立って見てろボケ」


意外に、秋月はあっくんに対して暴言こそは吐いたけど、それ以上のことはしなかった。

あれ? 秋月、あっくんにはいつも無視で、例え話しかけられても返さないのに……。睨むのを止め、あっくんに向かって真っ直ぐ見て話す秋月に、少し、私は驚いた。いつも、目線すら合わさないのに。どんな心境の変化だろう?


「そうかそうか。じゃあ俺、お前に任すわ! 流香のこと宜しくな?」

「言われるまでもねーよ。テメーはもう用済みだかんな。これからは俺が先輩のそばにいる」

「あはははっ、頼もしいなぁ~! 流香、本当にいい後輩を持ったなお前!」


か、会話してる! どことなく挑戦的だけれども、あっくんをちゃんと見て話す秋月。そして、それを爽やかに笑うあっくん。こ、こんなことが起きるなんて……。

今までの経緯を思い返すと信じられない光景を見た私は思わず、あっくんと颯太が前を歩いて会話している隙に、秋月に聞いてしまった。


「あ、秋月、ど、どういうつもり?」

「へ? 何が? 先輩」


汗を垂らしている私に秋月はきょとんとしたけれど、「あぁ」と私が何を言いたいのか察し、それ以上詳しいことを聞く前に自分から答えてくれた。


「……う~ん、ちょっと。俺、今まで余裕無かったし。でもよく考えてみたら俺の方がリードしてるかんな! それを思い出しただけ~」

「???」


最初は曖昧な返事だったけれど、後半は何やら得意気にしている秋月。


「え、何を思い出したの?」


その思い出したことについて、余りにも秋月が上機嫌になってきたから私は再び秋月に聞いてみる。


「せんぱ~い。それ、俺に言わすの?」


ぐぐっと秋月が私に顔を近づけてきた。ちょっ! ちょっと近い! 近すぎる! ニヤリとする秋月に、私は顔を赤くしながら身を捩る。何を言うつもり秋月! 物凄く嫌な予感がするんですけど。こういう笑い方をする秋月は、決まっていつも私をからかうとき。


「だって俺、流香先輩とはもう三回もキスしたし。リードしてる、だろ?」


な……っ! な、なな、な……っっ!

私は秋月に告白されたときのことを、即座に思い出してしまいました。ソフトなのを一回。深く重なったのを一回。そしてまた、ソフトなのを……。立て続けにキスされたことが、頭の中でぐるぐると巡ってくる。

いや――――――っ! な、何を言ってるの秋月――――――――っっっ! 

赤い顔を更に真っ赤にさせた私に、秋月はケラケラと笑って私の肩に腕をまわしてきた。私の動揺に、満足したらしいです。


「ちょ、調子にのらないで!」


密着し始めた秋月に、慌てて私は逃れようとジタバタする。でも、そんなことはお構い無しの秋月。


「先輩の可愛い口は、もう俺の物」


密着に飽きたらず。ツイッと秋月は、私の唇に空いている方の手でなぞってきた。

ギャ――――――ッッ! この野郎! セクハラ! 朝っぱらからセクハラですっ! だからですか!? あんたがあっくんに、あんな態度をとることが出来たのも!? 自分の方がリードしてると思って!? 恥ずかしい! やめてよ! 

すっごく恥ずかしい気持ちになった私は、不覚にも気が動転して秋月の思うツボになってしまった。


あ、でも。ハタッと私は更に思い出す。そういえば……?


「私、幼稚園のとき、あっくんとキスしたことあるっけ…………おままごとで」

「はぁっ!?」


今度は秋月が動揺したらしい。目を大きく見開き、少し顔が青くなったように見えなくもないです。それに気付かない私は、更に続ける。


「あ、でも確かファーストキスは颯太だったかな? 颯太が赤ちゃんの頃『かわい~かわい~』って、キスしてたってお母さんが……」


ハッ! しまった! 思わず、思い出してしまったことを口にした私は、言うんじゃなかったと後悔しました。でももう、後の祭りです。私の話を聞いて顔面を蒼白にさせた秋月は、今度はぶるぶると体を震わせている。


「ア~~イ~~ツ~~らぁ~~~~っっ!」


全身からどす黒いオーラを放ち、頭に怒りマークを散りばめている秋月。うわわわ! 地の底を這うような低い声で、あっくんと颯太を睨む秋月に私は慌てて止めようとしたけれど……。


「あ――! てんめ~~秋月! またねーちゃんにっっ!」

「って、うお! どーしたお前!?」

「るせ――――――っっ! テメーらマジでぶっっっ殺す! おらぁ! 逃げんじゃね――――っっっ!」


後ろを振り返ってきたあっくんと颯太に、秋月は凄い勢いで向かって行く。それにギョッとした颯太は、反射的に逃げ出す。そして、あっくんも何のことか分からない顔をしていたけれど、秋月が物凄い剣幕なので颯太につられ、逃げ出してます。

お、遅かった。はっ……ははは……。ごめん、二人とも。


ドドド……ッ、と。走って行くみんなの後ろ姿を見ながら、私は反省する。まだ体育祭は始まっていないのに、一波乱を起こしてしまいました。あ、秋月が颯太を捕まえた。あぁ~~。ギリギリと、プロレス技を秋月にかけられちゃってるよ颯太。た、助けなくちゃっ! 


私もみんなのあとを追おうと走り出す。私のキスについて、あっくんと颯太に焼きもちを妬いた秋月。そんな後輩を思うと、自然と謝罪の言葉が浮かんでくる。ごめんね秋月。まだ私あっくんが好きだから、あんたの気持ちに答えてあげられない。


でも。フッと、私は不謹慎にも笑ってしまった。ギャーギャーと、あっくんと颯太に文句を言っている秋月を見て、私は心の中で本当に思っていることを胸に湧き上がらせる。


でも、一緒にいて。そばにいて貰って。一番。今一番、私が安心出来るのは……秋月、あんたなんだよ?


子どもの頃のキスはカウントにならないぜ楓!

……と、大人になってからはそう思うけど、楓は無理ですねー。

そしてなんだか颯太がいつもとばっちり食ってる構図が出来つつあるとゆー。

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